第9話
登場人物
―第九話:祈りの鐘―
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三神凌牙
異世界へ送り込まれた一般男性。
セラとしての記憶がさらに流れ込み始める。
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セラ
何度もLOOPを繰り返してきた存在。
祈りの鐘を鳴らし続けていた過去を持つ。
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フィリア
鐘楼に住む神秘的な少女。
“祈りの鐘”を守り続けている。
セラの過去LOOPを知る数少ない人物。
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クロガミ
LOOPを維持し続けてきた観測者。
祈りの鐘が“世界の終わりまで鳴る”ことを知っている。
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管理者
世界修正を行う超越存在。
“FINAL OBSERVATION”を開始する。
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用語
祈りの鐘
世界崩壊時に鳴る神秘の鐘。
音が止まった時、LOOPも終焉を迎える。
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FINAL OBSERVATION
管理者による最終観測段階。
LOOP世界の完全終了が近づいている状態。
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鐘楼
海上帝国内に存在する古い塔。
祈りの鐘が保管されている重要区域。
第九話
―祈りの鐘―
夜だった。
珍しく静かな夜。
海上帝国に、波音だけが響いている。
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半壊した城。
その修復途中の塔。
頂上で。
三神凌牙 は空を見ていた。
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疲れていた。
心も。
身体も。
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神。
LOOP。
管理者。
世界崩壊。
女達の戦い。
情報量が多すぎる。
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「……帰りてぇ」
いつものだった。
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その時。
鐘の音。
カァァァン……
静かで。
どこか懐かしい音。
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三神が顔を上げる。
城の奥。
古い鐘楼。
今まで壊れていたはずの場所。
そこに灯りがついていた。
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「誰だ?」
ゆっくり向かう。
暗い廊下。
崩れた壁。
月明かり。
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鐘楼へ辿り着く。
そこにいた。
白いローブ。
銀髪。
祈るように鐘へ触れる少女。
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フィリア
彼女は振り返る。
驚いた顔。
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「……セラ様?」
またその名前。
三神は苦笑する。
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「悪い」
「俺、まだ自分が誰か分かってない」
フィリアは静かに目を伏せる。
悲しそうに。
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「そう……なんですね」
鐘の音が鳴る。
優しく。
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三神。
「この鐘は?」
フィリアが答える。
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「祈りの鐘」
「世界が壊れる時」
「最後に鳴る鐘です」
静寂。
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三神。
「最後……」
フィリア。
「この音が止まった時」
「LOOPは終わります」
空気が冷える。
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その時。
空にノイズ。
ザザ……
巨大な“目”。
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管理者
フィリアの顔色が変わる。
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「もう時間がない……!」
鐘が震える。
空間が軋む。
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三神。
「何が起きてる!?」
フィリアが三神の胸を掴む。
震えながら。
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「セラ様は」
「何度もここへ来ました」
「何度も鐘を鳴らしました」
「でも全部――」
涙。
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「間に合わなかった」
三神の中で。
また記憶が流れる。
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炎。
崩壊。
泣く少女。
鐘の音。
死。
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そして。
何度も。
何度も。
鐘を鳴らし続けるセラ。
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三神が頭を押さえる。
「ぐっ……!」
その時。
背後で声。
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「思い出してきたか」
黒コート。
黒翼。
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クロガミ
彼は鐘を見る。
少しだけ寂しそうに。
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「その鐘な」
「毎回最後まで鳴るんや」
三神。
「毎回……?」
クロガミ。
「世界終わるまでな」
静寂。
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鐘が鳴る。
カァァァン……
どこまでも響く。
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フィリアが涙を流す。
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「お願いです」
「今度こそ」
「終わらせてください」
その瞬間。
空が裂けた。
管理者の“目”が完全展開。
世界が赤く染まる。
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空に文字。
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FINAL OBSERVATION START
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クロガミが笑う。
だが。
その笑みは弱かった。
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「……ほんま」
「時間切れやな」
―フィリアの願い―
静かな鐘楼。
夜風。
月明かり。
珍しく平和。
……少しだけ。
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フィリア は鐘の前に座っていた。
小さく。
静かに。
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そこへ。
缶ジュース片手。
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三神凌牙
「まだ起きてたのか」
フィリアは小さく頷く。
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カァァァン……
鐘が鳴る。
優しい音。
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三神。
「……その鐘」
「好きなんだな」
フィリアは少し笑う。
寂しそうに。
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「昔は」
「もっと賑やかだったんです」
静寂。
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「セラ様も」
「クロガミ様も」
「みんなここに来て」
「うるさかったです」
三神。
「クロガミが?」
フィリア。
「はい」
「勝手に鐘鳴らして怒られてました」
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その瞬間。
背後。
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クロガミ
「若気の至りや」
三神。
「今も変わってないだろ」
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クロガミが鐘を見上げる。
少しだけ懐かしそうに。
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フィリアが小さな声で言う。
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「私」
「お願いがあるんです」
空気が静まる。
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三神。
「願い?」
フィリアは頷く。
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「もし」
「全部終わったら」
「LOOPが終わったら」
「世界が助かったら」
鐘へ触れる。
優しく。
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「みんなで」
「普通に笑いたいです」
静寂。
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「戦わなくて」
「誰も死ななくて」
「ただ一緒に」
「ご飯食べて」
「笑って」
「生きてるだけの世界」
涙が零れる。
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「それが見たい」
三神は言葉を失う。
簡単な願い。
なのに。
この世界では。
一番遠い願いだった。
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クロガミは黙っていた。
笑わない。
ふざけない。
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やがて。
小さく言う。
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「……叶えたる」
フィリアが顔を上げる。
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クロガミはいつもの笑みを浮かべる。
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「せやから」
「最後まで付き合えや」
その瞬間。
鐘が鳴った。
カァァァン……
どこまでも優しく。
世界を包むように。




