第六十五話:
―三神凌牙の違和感―
朝。
いつもの通勤路。
いつもの信号。
いつもの人混み。
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三神凌牙 は歩いていた。
疲れた顔。
眠そうな目。
変わらない日常。
そのはずだった。
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だが。
最近ずっと違和感がある。
知らない景色を知っている。
見たこともない戦いを覚えている。
夢の中で。
誰かが何度も死んでいた。
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セラ。
鳥羽姫。
六居館。
クロガミ。
知らないはずの名前。
なのに。
忘れられない。
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三神が頭を押さえる。
「……何なんだよ」
その瞬間。
信号機がノイズ混じりに揺れた。
ザザ……
空間が一瞬歪む。
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通行人は誰も気づかない。
三神だけが立ち止まる。
遠く。
どこかで。
ゲームの起動音が聞こえた気がした。
第六十五章:ゲームオーバー
―セラの死―
雨だった。
冷たい。
嫌になるほど静かな雨。
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崩れた六居館。
割れた空。
焼け落ちた地面。
その中心で。
一人の少年が倒れていた。
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セラ
胸を貫かれている。
血が広がる。
瞳はもう動かない。
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鳥羽姫が泣き叫ぶ。
鳥羽姫
「セラ!!」
抱き起こす。
だが。
返事はない。
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焔牙が震える。
焔牙
「嘘だろ……」
炎が消えていく。
戦意も。
希望も。
全部。
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空に浮かぶ巨大な“目”。
管理者
静かに世界を見下ろしている。
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そして。
黒翼を広げた クロガミ が立っていた。
無言。
何も言わない。
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ララガミが崩れ落ちる。
ララガミ
「……また」
涙。
震える声。
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「また救えなかった」
静寂。
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その時だった。
世界がノイズ混じりに歪む。
ザザ……
空がバグる。
景色が崩れる。
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鳥羽姫が顔を上げる。
「……え?」
六居館が消えていく。
空間がポリゴン化する。
炎も。
雨も。
セラの身体も。
全部。
データみたいに崩れていく。
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三神凌牙が叫ぶ。
三神凌牙
「何だこれ……!?」
その瞬間。
世界が暗転した。
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目を開ける。
そこは。
薄暗い店だった。
古いゲーム機。
積み上げられたソフト。
ブラウン管テレビ。
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看板。
クロガミゲームズ
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三神が息を呑む。
「……は?」
奥から声。
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「起きたか」
出てきたのは。
黒コート姿の男。
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クロガミ
いつもの笑み。
だが。
どこか疲れている。
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三神。
「今の……何だ」
クロガミは古いゲーム機を叩く。
カチ。
画面起動。
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そこに映る。
さっきの世界。
セラの死。
鳥羽姫の涙。
全部。
映像になっていた。
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三神が後ずさる。
「……ふざけんな」
「ゲームなのか?」
クロガミは静かに言う。
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「半分ゲーム」
「半分現実や」
意味が分からない。
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クロガミは棚から一本のカセットを取る。
真っ黒。
タイトルなし。
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「世界線はな」
「無数の可能性で出来とる」
「失敗したルート」
「成功したルート」
「全部データみたいに存在しとるんや」
テレビ画面。
無数のセラ。
無数の死。
何百回もの敗北。
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三神。
「……これ全部」
クロガミ。
「ゲームオーバーや」
その声だけが重い。
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店の奥。
無数のゲーム機。
その全部に。
違う未来が映っていた。
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勝利する世界。
崩壊する世界。
クロガミが死ぬ世界。
セラだけが生き残る世界。
全部ある。
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三神が震える。
「じゃあ」
「救える未来もあるのか」
クロガミは少し笑った。
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棚の奥。
一本だけ隔離されたソフト。
黒いケース。
白い文字。
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『セラ生存ルート』
静寂。
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その瞬間。
店内に警告音。
ビーッ!!
ビーッ!!
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テレビに巨大な“目”が映る。
管理者
世界修正開始。
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クロガミが舌打ちする。
「チッ」
「もう気づかれたか」
三神。
「どうする!?」
クロガミはコントローラーを投げる。
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「コンティニューや」
その瞬間。
店の奥。
LOOPの扉が開く。
白い光。
吸い込まれる世界。
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三神が叫ぶ。
「待て!!」
だが。
全部光に呑まれる。
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最後に。
クロガミだけが笑った。
ゲーム屋の奥で。
少しだけ寂しそうに。
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「にいちゃん」
「またゲームオーバーやな」
―クロガミゲームセンター―
場所。
巨大ゲームセンター。
なぜかクロガミ経営。
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入口看板。
クロガミ GAME WORLD
嫌な予感しかしない。
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店長席に座る クロガミ 。
サングラス着用。
ノリが軽い。
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「いらっしゃいませや!」
横で ララガミ がため息。
「また変なの始めた……」
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ゲーム一覧。
セラ survival
六居館ファイトDX
管理者から逃げろ!!
焔牙 炎上アクション
焔牙。
焔牙
「タイトル雑すぎるだろ!!」
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クロガミ。
「人気作やで?」
その瞬間。
ゲーム機から爆発。
\ドゴォォン!!/
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鳥羽姫悲鳴。
鳥羽姫
「危なぁ!?」
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ララガミ。
「安全管理どうなってるの」
クロガミ。
「勢いや」
「最悪」
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その奥。
ひっそり置かれた一台。
黒い筐体。
タイトル。
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『セラ生存ルート』
空気が変わる。
誰も近づかない。
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クロガミだけが静かに見る。
その目だけ。
笑っていなかった。
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そして。
小さく呟く。
「……次こそ」
その瞬間。
ゲーム画面に。
CONTINUE?
の文字が浮かんだ。




