第六十四話:
―ワダの珈琲―
深夜二時。
喫茶店。
客ゼロ。
静かな雨。
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カウンターに立つ ワダ は、無言でコーヒーを淹れていた。
豆を挽く音。
湯気。
静かな時間。
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そこへ入ってくる 三神凌牙 。
眠そうな顔。
疲れ切った目。
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ワダ。
「いつものですか」
三神。
「……あぁ」
短い会話。
だが。
妙に落ち着く。
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コーヒーが置かれる。
黒い液体。
湯気の向こう。
ワダがぽつりと言った。
「人は」
「何回失敗したら壊れると思います?」
三神。
「は?」
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ワダは窓を見る。
歪み始めた夜空。
LOOPのヒビ。
誰にも見えない世界の裂け目。
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「普通は一回で十分です」
「でも」
「諦めない人もいる」
三神。
「……誰の話だ」
ワダは答えない。
ただ静かに笑った。
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「さて」
「今日は忙しくなりますよ」
その瞬間。
店の奥で。
LOOPの扉が小さく軋んだ。
第六十四章:観測者の狙い
―ワダと駄口―
夜の喫茶店。
雨は止んでいた。
だが。
空は歪んでいる。
LOOPの影響。
世界そのものが軋み始めていた。
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三神凌牙 は黙って座っていた。
目の前。
コーヒー。
そして。
向かい合う二人。
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ワダ
駄口
どちらも。
“世界の裏側”を知る存在。
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三神が低く言う。
「……お前らの目的は何だ」
静寂。
ワダは目を閉じる。
駄口はジュースを回す。
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最初に口を開いたのはワダだった。
「監視です」
三神。
「何を」
「世界を」
簡単に言う。
あまりにも。
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三神が眉をひそめる。
「意味が分からん」
ワダは窓を見る。
歪んだ夜空。
ひび割れる月。
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「LOOPは不完全なんです」
「繰り返すたび」
「世界は壊れていく」
駄口が続ける。
「記憶がズレる」
「存在が混ざる」
「未来が崩れる」
彼女の声は静かだった。
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三神。
「……だから監視してる?」
ワダ。
「崩壊速度の観測です」
駄口。
「あと、可能性探し」
三神。
「可能性?」
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駄口が真っ直ぐ見る。
「セラが勝つ未来」
その言葉で。
空気が変わる。
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三神。
「そんな未来があるのか」
駄口は少し黙る。
そして。
「一回だけあった」
静寂。
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ワダの表情がわずかに変わる。
三神が息を呑む。
「……どうなった」
駄口。
「クロガミが死んだ」
沈黙。
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空気が凍る。
ワダが目を伏せる。
駄口も笑わない。
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「管理者は倒せた」
「でも」
「LOOPが止まった」
その声は。
どこか悲しかった。
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三神。
「それで終わりじゃないのか」
駄口は首を振る。
「違う」
「LOOPが止まった瞬間」
「世界そのものが崩壊した」
喫茶店の壁が軋む。
まるで世界が聞いているようだった。
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ワダが呟く。
「クロガミは楔です」
「彼がいるから」
「世界は繋がっている」
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三神。
「つまり」
「アイツが死んでも終わり」
「生き続けても壊れる」
駄口が頷く。
「詰んでるの」
あまりにも静かに。
絶望を言った。
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三神が立ち上がる。
「ふざけるな」
机を叩く。
「じゃあ何のために戦ってる!」
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駄口が目を細める。
「それでも」
「セラが諦めないから」
静寂。
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ワダも静かに言う。
「クロガミも」
「諦めていません」
その瞬間。
店の奥。
暗闇。
誰もいなかった場所。
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「勝手に人を希望扱いすなや」
全員振り向く。
そこにいた。
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クロガミ
いつもの笑み。
いつもの空気。
だが。
その身体は透け始めていた。
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三神。
「……お前」
クロガミは笑う。
「盗み聞きや」
駄口が立ち上がる。
「無茶しすぎ」
クロガミ。
「知っとる」
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ワダが低く言う。
「崩壊率、さらに進行しています」
クロガミは肩をすくめる。
「まぁ何とかなるやろ」
誰も笑わない。
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その時。
店の奥。
再びLOOPの扉が軋む。
ギギギギ……
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駄口の顔色が変わる。
「……早い」
ワダ。
「次が来ます」
三神。
「次?」
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クロガミだけが静かに笑った。
「今回のLOOP」
「ちょいとヤバいで」
扉の向こう。
無数の“セラの死”が見えていた。
―駄口の世界線相談室―
場所。
謎のラジオブース。
なぜか深夜番組。
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パーソナリティ。
駄口
「こんばんは」
「世界線相談室のお時間です」
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お便り。
『人生やり直したいです』
駄口。
「分かる」
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『黒歴史消したい』
駄口。
「LOOP案件ですね」
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そこへ乱入。
クロガミ
「軽々しく巻き戻すな!!」
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駄口。
「でも便利だよ?」
クロガミ。
「存在削れるぞ!?」
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さらにお便り。
『好きな人に告白できません』
駄口。
「行きなさい」
「LOOPしても案外何とかなる」
クロガミ。
「責任感ゼロや!!」
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後ろでワダがコーヒー飲みながら呟く。
ワダ
「まぁ失敗しても世界は滅びません」
沈黙。
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駄口とクロガミが同時に見る。
「滅びる時あるよね?」
ワダ。
「あります」
クロガミ。
「あるんかい!!」
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最後。
駄口がラジオへ向かって笑う。
「それでは皆さん」
「良いLOOPを」
クロガミ。
「嫌すぎる締めやめぇ!!」




