第六十三話:
―黒い招待状―
深夜。
喫茶店。
雨音だけが響いている。
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カウンターで皿を拭く ワダ 。
窓際で煙草を弄ぶ 三神凌牙 。
そして。
天井を見ながらジュースを飲む 駄口 。
平和。
一応。
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駄口がぽつり。
「ねぇワダ」
「今日、来るよ」
ワダ。
「でしょうね」
三神。
「何の話だ」
二人とも答えない。
嫌な予感しかしない。
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その瞬間。
店のベルが鳴る。
カラン。
空気が凍る。
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入ってきたのは。
黒い男。
静かな笑み。
異常な存在感。
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好慊
彼はゆっくり笑った。
「迎えに来ました」
その一言で。
喫茶店の温度が下がった。
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登場人物
―第六十三章:好慊―
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三神凌牙
LOOP後の世界で違和感を抱え続ける男。
徐々に“世界の裏側”へ近づいていく。
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ワダ
喫茶店で働く謎の存在。
LOOPや観測世界について知識を持つ。
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駄口
未来のララガミ系統存在。
“記録係”として数々の敗北世界を観測している。
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クロガミ
LOOPを支える楔のような存在。
崩壊率が六割を超えていることが判明する。
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好慊
クロガミ直属の執行者。
三神凌牙を迎えに現れる。
静かな口調とは裏腹に、異常な威圧感を持つ。
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セラ
次のLOOPで死ぬ可能性が示唆される存在。
第六十三章:好慊
―黒い来訪者―
夜だった。
雨が降っている。
LOOPの扉が消えた後の喫茶店。
静寂。
壊れた時計だけが止まっていた。
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三神凌牙 は椅子に座ったまま動けなかった。
目の前。
未来のララガミ。
観測者。
記録係。
情報量が多すぎた。
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駄口 は静かにコーヒーを飲む。
「落ち着いた?」
三神。
「無理だ」
「正常です」
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カウンターでは ワダ が皿を拭いていた。
いつも通り。
何事もないように。
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三神が睨む。
「お前も説明しろ」
ワダ。
「面倒です」
「逃げるな」
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駄口が笑う。
「まあまあ」
その時だった。
店の照明が揺れる。
ピシ。
空気が軋む。
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ワダの手が止まる。
駄口の表情が消える。
三神だけが気づいていない。
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「……来た」
駄口が低く呟く。
次の瞬間。
店の入口が開いた。
ベルも鳴らない。
音もない。
ただ。
黒い男が立っていた。
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長いコート。
黒手袋。
片目を隠す前髪。
そして。
異常なまでに静かな笑み。
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好慊
男はゆっくり店へ入る。
その瞬間。
世界の温度が下がった。
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三神が眉をひそめる。
「……誰だ」
ワダが珍しく真顔になる。
駄口も黙った。
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好慊は三神を見る。
そして。
にこりと笑った。
「初めまして」
「三神凌牙さん」
その声だけで。
背筋が凍る。
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三神。
「俺を知ってるのか」
好慊。
「当然です」
「あなたは観測対象ですから」
空気が止まる。
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駄口が立ち上がる。
「どうしてここにいるの」
好慊は視線だけ向けた。
「クロガミ様の命令です」
その名前で。
空気がさらに重くなる。
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三神。
「クロガミ……」
好慊は静かに頷いた。
「ええ」
「あなたを迎えに来ました」
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ワダが低く言う。
「まだ早い」
好慊。
「時間がありません」
「LOOPが崩れ始めています」
店内の時計が逆回転を始める。
ギギギギ……
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駄口が睨む。
「……どこまで進んでるの」
好慊は少しだけ笑みを消した。
「クロガミ様の崩壊率」
「すでに六割を超えました」
沈黙。
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三神。
「崩壊率?」
好慊は窓の外を見る。
雨の向こう。
歪む世界。
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「クロガミ様は」
「LOOPを維持する“楔”です」
「ですが」
「繰り返しすぎた」
その声は静かだった。
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「もう限界が近い」
駄口が拳を握る。
ワダは目を閉じる。
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三神だけが置いていかれていた。
「待てよ……」
「何なんだよ全部」
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好慊が近づく。
静かに。
逃げ場を塞ぐように。
そして。
三神へ一枚の黒い紙を差し出した。
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そこに書かれていた。
次のLOOPで
セラが死ぬ
三神の呼吸が止まる。
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好慊は微笑む。
「だから」
「あなたが必要なんです」
その瞬間。
喫茶店の奥で。
再びLOOPの扉が軋み始めた。
―好慊の面接会場―
場所。
なぜか会議室。
ホワイトボード完備。
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前に立つ 好慊 。
後ろで見守る クロガミ 。
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好慊。
「本日は」
「クロガミ陣営採用面接へようこそ」
三神。
「帰っていいか?」
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好慊。
「質問です」
「特技は?」
三神。
「特にない」
「趣味は?」
「疲れるから無い」
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好慊メモ。
陰キャ適性:高
三神。
「何の評価だ」
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後ろでクロガミ爆笑。
「ええやん!」
「向いとるで!」
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駄口がジュース飲みながら言う。
駄口
「この職場ブラックだよ」
クロガミ。
「言うな」
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ワダも頷く。
ワダ
「残業、世界崩壊、LOOP対応あります」
三神。
「最悪だろ」
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好慊。
「ですが安心してください」
「有給はあります」
全員。
「あるんだ……」
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クロガミが胸を張る。
「ホワイト企業や!」
その瞬間。
後ろで世界が爆発。
\ドゴォォォン!!/
駄口。
「説得力ゼロ」




