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異世界落胤セラ ~ポセイドンに捨てられた俺は、救うたびに誰かを溺れさせる~  作者: マーたん


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第六十話:

―夢の中へいってみよう―


真っ白だった。


空も。


地面も。


何もない。


音すらない世界。



そこを一人歩く セラ 。


「……ここは」


返事はない。


ただ。


遠くに誰かが座っていた。



縁側。


湯のみ。


のんびりお茶を飲む男。


クロガミ


「お、来たか」


セラ。


「何してんだよ」


「夢の中や」


「雑!!」



クロガミは笑う。


いつもの調子。


だけど。


どこか少しだけ疲れていた。



セラが座る。


静かな時間。


風だけが吹く。



クロガミが空を見る。


「夢ってな」


「大体、後悔が混ざるんや」


セラが黙る。


クロガミは続けた。


「助けられんかった奴」


「失った場所」


「戻らん時間」


「全部出てくる」



セラが俯く。


「……俺は」


「怖ぇよ」


初めてだった。


弱音。



クロガミは笑わない。


ただ頷いた。


「知っとる」


「お前、優しいからな」



セラが拳を握る。


「守りたいのに」


「全部壊れてく」


「何も届かねぇ」


クロガミは静かに湯のみを置いた。



「セラ」


「夢の中くらい」


「泣いてもええ」


その言葉で。


セラの顔が歪む。



クロガミは続けた。


「強い奴ほど」


「一人で耐えようとする」


「でもな」


「本当に終わる奴は」


「誰にも頼れん奴や」


夢の世界に風が吹く。


優しい風だった。



クロガミが笑う。


「だから頼れ」


「仲間でも」


「鳥羽姫でも」


「焔牙でも」


「未来のお前でもええ」


セラが小さく笑う。


「未来の俺、娘になってたけどな」


クロガミ。


「情報量バグっとる」


二人同時に吹き出した。



その時。


夢の空にヒビが入る。


現実へ戻る時間。


クロガミが立ち上がる。


「ほな」


「起きる時間や」



セラが呼び止める。


「クロガミ」


「お前は」


「何者なんだよ」


沈黙。


クロガミは振り返らない。



そして。


小さく笑った。


「夢の案内人や」


その瞬間。


世界が光に包まれた。

第六十章:最後の助言


―黒翼は静かに差し伸べられる―


世界は崩壊していた。


空が割れる。


海が反転する。


六居館そのものが軋みを上げていた。


巨大な“目”――


管理者


その視線だけで世界法則が壊れていく。



黒翼を広げた クロガミ が空へ立つ。


無数の観測の目。


管理者と同じ力。


いや。


それ以上の異常。



焔牙が息を呑む。


焔牙


「……誰だよ」


「アイツ」


誰も答えられない。



クロガミが右手を上げる。


世界が止まる。


時間すら軋む。


「観測停止」


その一言で。


管理者の視線が一瞬止まった。



鳥羽姫が震える。


鳥羽姫


「止めた……?」


ゲッセンカが呆然とする。


ゲッセンカ


「未来が見えない……」


「観測そのものを書き換えている……」



だが。


クロガミの身体が崩れ始めていた。


黒い粒子。


存在が削れている。



ララガミが叫ぶ。


ララガミ


「やめて!!」


「それ使ったら!!」


クロガミは笑う。


「知っとる」


その声は優しかった。



その時。


黒い影が広がる。


静かに。


世界の裏側から。



夜叉姫


彼女が前へ出る。


誰よりも静かに。



夜叉姫が空を見上げる。


「……仕方ありませんね」


次の瞬間。


黒翼の黒居館全域が開放される。


世界中の“影”が集まる。


人々の影。


記憶の影。


失われた未来。


忘れられた物語。


全部。


夜叉姫へ集束していく。



焔牙が驚愕する。


「何だこの量……!」


お館様が目を細める。


お館様


「黒翼の本来の力か……」



夜叉姫がクロガミの隣へ立つ。


「一人で壊れる気ですか」


クロガミ。


「止めても無駄やで」


「知っています」


夜叉姫は静かに答える。



そして。


初めて少し笑った。


「だから手伝うのです」


その瞬間。


黒い影がクロガミを包む。


崩壊していた身体が一時的に安定する。



ララガミが目を見開く。


「夜叉姫……!」


夜叉姫は振り返らない。


「未来を変えるのでしょう?」


「なら」


「最後まで足掻きなさい」



管理者の巨大な目が開く。


「――抵抗確認」


「――危険度上昇」


空間崩壊。


世界断裂。



クロガミが笑う。


「嫌われとるなぁ」


夜叉姫。


「当然です」


「あなたは世界の外側ですから」



その時だった。


クロガミが後ろを見る。


そこには。


消えかけた セラ 。


意識が薄い。


今にも消えそうだった。



クロガミはゆっくり歩く。


セラの前へ。


しゃがみ込む。


そして。


頭を軽く小突いた。


コン。



「アホ」


セラが薄く目を開ける。


「……クロガミ」


「お前な」


クロガミは笑う。


いつもの顔で。


「一人で背負いすぎや」



セラの瞳が揺れる。


クロガミは続けた。


「守れんでもええ」


「負けてもええ」


「泣いてもええ」


「逃げてもええ」


静かだった。


世界が壊れているのに。


その声だけは穏やかだった。



「せやけどな」


クロガミが額を軽く当てる。


「生きることだけは諦めんな」


その瞬間。


セラの瞳に光が戻る。



ララガミが涙を流す。


未来で聞けなかった言葉。


救われなかった未来。


それが今。


変わろうとしていた。



クロガミが立ち上がる。


黒翼が広がる。


巨大な観測の目を見上げる。


そして。


最後に笑った。


「ほな」


「世界、取り戻しに行こか」

―クロガミの助言―


場所。


六居館の廊下。


深夜。


なぜか正座させられてる焔牙。



焔牙


「何でだよ!!」


前に座る クロガミ 。


真顔。



「今日は人生相談会や」


「嫌な予感しかしねぇ」



クロガミが指を立てる。


「ええか焔牙」


「人生で大事なこと教えたる」


焔牙。


「ろくでもねぇな」



クロガミ。


「まず」


「夜更かしするな」


「お前いつ寝てんだよ」



「二つ目」


「意味深発言は程々にしろ」


焔牙。


「お前が言う!?」



「三つ目」


「好きな奴にはちゃんと言え」


空気止まる。


焔牙。


「…………」


後ろで聞いてた 鳥羽姫 真っ赤。



焔牙。


「お前ぇぇぇぇ!!」


クロガミ爆笑。


「青春やなぁ!!」



そこへ。


ララガミ 登場。


「パパ」


「また余計なことしてる」


クロガミ。


「助言や!」


ララガミ。


「騒音の間違いでしょ」



後ろで夜叉姫が頷く。


夜叉姫


「正論です」


クロガミ。


「味方おらんやん」

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