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異世界落胤セラ ~ポセイドンに捨てられた俺は、救うたびに誰かを溺れさせる~  作者: マーたん


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第五十八話:

―前世のセラ―


静かな部屋。


月明かり。


窓際に座る ララガミ 。


珍しく笑っていない。



その後ろ。


ゆっくり入ってくる クロガミ 。


「……起きとったんか」


ララガミは振り返らない。


「眠れないだけ」


静かだった。



クロガミが壁にもたれる。


「未来のセラってのは」


「どういう気分なんや」


ララガミは少し考える。


「ずっと壊れてく感じ」


空気が止まる。



「大事な人が消えて」


「世界が終わって」


「最後は誰も笑わなくなる」


月光が揺れる。


クロガミは黙って聞いていた。



ララガミがぽつり。


「前世の私は」


「最後までセラだったよ」


クロガミが目を細める。


「……そうか」



ララガミは小さく笑う。


「だからね」


「今のセラを助けてあげて」


「“ああなる前”に」


その声だけは。


未来の絶望を知っていた。

第五十八章:ゲームスタート


―未来から来た少女―


世界が反転していた。


空は盤面。


大地はマス目。


人々は“駒”。


六居館すべてが、一つの巨大なゲーム盤へ変わっている。



響く声。


「第一ゲーム開始〜!!」


高らかに笑うのは、 ララガミ 。


その後ろで。


頭を抱える クロガミ 。


「ほんまに始めるんか……」



巨大スクリーン点灯。


第一競技

『管理者から逃げ切れ!!』


瞬間。


空が裂ける。


巨大な“目”。


管理者


「――対象確認」


「――排除開始」


全世界が震えた。



焔牙が剣を抜く。


焔牙


「来るぞ!!」


次の瞬間。


黒い光線。


地面消滅。


山が蒸発する。


鳥羽姫が叫ぶ。


鳥羽姫


「こんなの逃げろってレベルじゃありません!!」



アポローンが炎を放つ。


アポローン


「派手でいいじゃねぇか!!」


爆炎。


だが。


管理者は無傷。



ライコウカが雷速で駆ける。


ライコウカ


「観測速度が速すぎる……!」


ゲッセンカが未来を見る。


ゲッセンカ


「未来が閉じています……!」



夜叉姫が影を広げる。


夜叉姫


「観測妨害開始」


影が世界を覆う。


だが。


巨大な“目”は止まらない。



その時だった。


ララガミが静かに呟く。


「……懐かしいなぁ」


クロガミが振り返る。


「何や」


ララガミは空を見る。


どこか悲しそうに。


「前もこうだった」


空気が止まる。



お館様が目を細める。


お館様


「……やはりか」


クロガミ。


「何知っとる」


お館様は答えない。



ララガミがゆっくり振り返る。


そして。


初めて笑わなかった。


「パパ」


「セラに会わせて」


沈黙。


焔牙が眉をひそめる。


「何でセラを」



ララガミは小さく息を吐く。


「だって」


「未来のセラだから」


世界が止まる。



鳥羽姫。


「……え?」


焔牙。


「は?」


クロガミ。


「……はぁ?」


全員固まる。



ララガミは静かに言った。


「私は未来のセラ」


「そして」


「前世で、クロガミの妻だった人間」


沈黙。


完全停止。



ポセイドン、口開いたまま。


ポセイドン


「情報量!!」


アポローン。


「重っ!!」


ライコウカ。


「待て待て待て」



クロガミだけが動かない。


目を見開いたまま。


笑わない。


冗談も言わない。



ララガミは続ける。


「全部終わった未来から来たの」


「管理者に負けた未来」


空気が凍る。



ゲッセンカが震える。


「そんな未来……」


「観測できなかった……」


ララガミ。


「観測されたら消されるから」


夜叉姫の表情が変わる。


「外側の未来……」



クロガミが低く呟く。


「……嘘やろ」


ララガミが笑う。


少しだけ寂しそうに。


「酷いなぁ」


「結婚したのに」


全員。


「結婚!?」



その瞬間。


管理者の巨大な目が、ララガミを見た。


「――観測不能対象確認」


「――修正優先度最大」


空が割れる。


世界が崩れる。



ララガミは静かにクロガミを見る。


「ねぇパパ」


「今度こそ」


その瞳が揺れる。


「助けてくれる?」


クロガミは答えられない。


かつて失ったもの。


忘れたはずの未来。


全部が戻ってきていた。



そして。


ゲーム盤そのものが崩壊を始めた。

―ララガミの助言―


翌朝。


六居館会議室。


なぜかホワイトボード。


なぜか講習会。


司会。


ララガミ。



「はい注目〜」


パチン。


ホワイトボードに文字。


『クロガミ取り扱い説明書』


クロガミ。


「やめぇ」



焔牙爆笑。


焔牙


「見たい」


鳥羽姫も頷く。


鳥羽姫


「必要です」



ララガミが指差す。


「まず一つ」


「パパは意味深発言した後どっか行きます」


クロガミ。


「悪意ある説明やめろ」



「二つ目」


「急にカッコつけます」


アポローン吹く。


アポローン


「分かるわぁ」



「三つ目」


「本当に大事なことは最後まで言いません」


全員。


「それな」


クロガミ。


「団結するな」



ララガミが最後に真顔になる。


「でも」


空気が変わる。


「この人」


「最後は絶対助けに来るから」


静寂。


クロガミが目を逸らす。



夜叉姫が静かに見る。


夜叉姫


「……知っている顔ですね」


ララガミは少し笑った。


「未来で何回も見たから」


その言葉に。


誰も笑えなかった。

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