第四話:
登場人物
―三神凌牙の事件簿 第四話:消えた給食プリン―
三神凌牙
本作の主人公。冷静で観察力に優れた高校生。些細な違和感から真相へ辿り着く力を持つ。今回は給食プリン消失事件を解決した。
神谷拓也
凌牙の友人。騒がしく事件好きで、何かあるたびに凌牙を呼びに来るムードメーカー。今回も野次馬兼助手として同行した。
田所美春
一年A組の担任。責任感が強く、生徒の問題には厳しく向き合う教師。プリン事件では冷静に事態を収めた。
小坂結衣
明るい性格の女子生徒。プリンを楽しみにしていた被害者の一人。秋山へのからかいを反省し、最後は歩み寄った。
森田健太
元気で食欲旺盛な男子生徒。被害者の一人で、真っ先に疑われるも無実だった。悪気なく人をからかってしまう面がある。
秋山凛
口数が少なく目立たない女子生徒。からかわれ続けた不満からプリンを隠してしまった。根は優しく、罪悪感も強い。
一年A組の生徒たち
事件に騒ぎ立てたクラスメイトたち。最後は互いの問題と向き合うことになった。
プリン丸
プリン型の後書き限定キャラクター。突然進行役を名乗って現れた新顔。甘い物に誇りを持っている。
チャック
これまで後書き進行役だった小型魔物。今回はプリン丸に出番を奪われ、動揺していた。
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人物関係
三神凌牙 × 神谷拓也
冷静な探偵役と騒がしい助手役。毎回事件に巻き込まれる名コンビ。
小坂結衣 × 森田健太 × 秋山凛
被害者と加害者だったが、互いの言動を反省し和解へ向かった一年生たち。
プリン丸 × チャック
後書き進行役の座を巡るライバル(本人たちだけが本気)。
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この回の位置づけ
第四話は、単なる食べ物盗難ではなく、子ども同士の小さないじめと和解がテーマの回。
三神凌牙 が証拠だけでなく、人間関係まで見抜く人物であることが描かれたエピソード。
三神凌牙の事件簿
第四話:消えた給食プリン
冬の気配が近づく昼休み。
教室には給食の匂いが漂っていた。
今日の献立は人気メニュー。
唐揚げ。
コーンスープ。
そして――プリン。
一人一個限定。
それは戦争の火種でもあった。
三神凌牙 は窓際の席で静かにスプーンを持っていた。
その前に、騒がしい影が飛び込む。
神谷拓也
「凌牙ァァァ!」
「何だ」
「事件だ!」
「飯の前に叫ぶな」
「一年生のプリンが三個消えた!」
凌牙はスプーンを置いた。
「……平和だな」
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一年生の教室前には、人だかりができていた。
泣いている女子生徒。
怒っている担任。
ざわつく周囲。
担任教師、田所美春 が腕を組む。
「確かに人数分配ったはずです!」
「でも三人分のプリンがない!」
一年生たちは騒然。
「誰か食べたんだ!」
「最低!」
「プリン泥棒!」
神谷が小声で凌牙に言う。
「名前だけで凶悪犯っぽいな」
「お前は黙れ」
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泣いていた女子生徒が前へ出る。
小坂結衣
「楽しみにしてたのに……」
その隣で男子生徒も肩を落とす。
森田健太
「朝からプリンのために頑張ったのに……」
さらにもう一人。
秋山凛 は無言で泣いていた。
凌牙はため息をついた。
「三件同時被害か」
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田所が言う。
「配膳後、少し目を離した隙です」
「その間、教室にいたのは全員」
「でもなくなったのは三個だけ」
神谷が首をかしげる。
「全員怪しいじゃん」
「いや」
凌牙は机を見る。
空のプリン容器はない。
スプーンも余っている。
「食べたなら証拠が出る」
「つまり持ち去った」
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教室を見回す。
床は綺麗。
窓は閉まっている。
だが後ろのロッカーの前に、小さな黄色い跡。
凌牙はしゃがみ込んだ。
「……カラメル?」
神谷も覗き込む。
「プリンのタレだ!」
「雑な表現だな」
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ロッカーを開けると、中に体操服袋。
その中から箱が出てきた。
プリン三個。
未開封。
教室がざわつく。
「犯人いた!」
「誰の袋だ!?」
袋には名前札。
森田健太
森田が青ざめる。
「ち、違う!」
「俺じゃない!」
「俺、そんなベタなことしない!」
神谷が吹き出す。
「そこ否定ポイントなんだ」
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田所が厳しい声を出す。
「森田くん、説明しなさい」
森田は涙目になる。
「知らないよ!」
「俺、給食当番してたし!」
凌牙が口を開く。
「たぶん本当に違う」
全員が振り向く。
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「森田は犯人ならすぐ食べる」
「こんな隠し方はしない」
森田が感動する。
「先輩、信じてくれるんですね!」
「日頃の行動からの判断だ」
「複雑!」
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凌牙は袋の持ち手を見る。
結び方が妙に綺麗だった。
蝶結びが左右対称。
「一年男子が普段やる結び方じゃない」
視線を移す。
教室の隅で、静かな女子生徒が俯いていた。
秋山凛
彼女の給食ナプキンも、同じ結び方。
「君だな」
教室が静まる。
秋山の肩が震える。
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「……ごめんなさい」
小さな声だった。
「でも、食べるつもりじゃなかった」
田所が驚く。
「どういうこと?」
秋山は涙ぐむ。
「結衣ちゃんと健太くんと、もう一人の子が……」
「いつも私のこと、地味だって笑うから」
小坂と森田が固まる。
「少し困ればいいって……」
教室が気まずい空気になる。
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小坂が俯く。
「……ごめん」
森田も頭を下げる。
「悪ふざけだった」
秋山は泣きながら言う。
「私もごめんなさい」
田所は深く息を吐いた。
「全員、あとで話し合いです」
神谷が小声で言う。
「先生こええ」
「当然だ」
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プリンは三人へ返された。
だが秋山にも、一つ差し出された。
小坂だった。
「……一緒に食べよう」
秋山は驚き、少しだけ笑った。
森田が言う。
「俺のスプーン貸す!」
「それは汚いから嫌」
「ひどっ!」
教室に笑いが戻る。
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帰り道。
神谷が聞いた。
「凌牙、お前プリン食わなかったの?」
「俺のは食べた」
「いつの間に!?」
「事件前に」
「仕事早ぇな!」
凌牙は空を見る。
「食える時に食うのが正解だ」
夕暮れの教室。
窓辺に、見慣れぬ小さな生き物が立っていた。
丸い体。
プリンのような黄色。
頭にカラメル色の冠。
プリン丸
「ぷりんちはー!」
「今回の進行役、プリン丸です!」
教壇の下から チャック の声。
「ちょっと待てぇぇ!」
「なんで交代やねん!」
プリン丸は胸を張る。
「甘い時代の到来です!」
チャックが泣き叫ぶ。
「レギュラー奪われたぁぁ!」
凌牙はドアから覗き、ため息をついた。
「後書きの世界も大変だな」
プリン丸は一礼する。
「次回も、あるかどうかは未定です!」
チャックの悲鳴が、校舎に響き続けた。




