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異世界落胤セラ ~ポセイドンに捨てられた俺は、救うたびに誰かを溺れさせる~  作者: マーたん


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第三話:

登場人物


―三神凌牙の事件簿 第三話:放送室の告白―


三神凌牙


本作の主人公。冷静で皮肉屋な高校生。騒ぎを嫌いながらも、周囲の違和感を見逃せない性格。今回も放送告白事件の真相を見抜いた。


神谷拓也


凌牙の友人。事件が起こるたびにテンションが上がる騒がしい男子生徒。パンにも弱く、今回もメロンパンに釣られた。


水野梨沙


全校放送で突然告白された被害者。誠実で真面目な性格ゆえ、勝手に名前を使われ激怒した。クラスでも信頼される存在。


クロガミ


本編では恐るべき黒幕。しかし今回は陰謀ではなく、売上向上のためだけに騒動を起こした迷惑人物。行動力だけは高い。


黒神田昴


クロガミの変装姿。白帽子・口ひげ・エプロン完備。妙に完成度が高く、生徒たちから普通に人気だった。特製クリームパンは意外と好評。


坂本圭一


前話登場の数学教師。今回は騒ぎを聞きつけて駆けつけただけだが、事件現場に現れると空気が引き締まる。


二年B組の生徒たち


全校放送告白に大盛り上がりした野次馬集団。青春イベントには異常に反応が早い。



人物関係


三神凌牙 × クロガミ


探偵役とトラブルメーカー。凌牙にとって最大級に面倒な相手。


クロガミ × 黒神田昴


同一人物。本人だけは完璧な変装だと思っている。


水野梨沙 × クロガミ


完全なる被害者と迷惑加害者。今後しばらく信用されない関係。


神谷拓也 × 黒神田昴


パン目当てで一瞬心を許した客と販売者。



この回の位置づけ


第三話は、シリアスな推理回というより学園コメディ事件回。


クロガミ が本編の恐ろしさを捨て、ただの迷惑なおっちゃんとして暴れた珍しいエピソード。


同時に、三神凌牙 がどんな馬鹿騒ぎでも冷静に真相へ辿り着くことを示した回でもある。

三神凌牙の事件簿


第三話:放送室の告白


昼休み。


購買前には人だかり。

校庭ではサッカー部がボールを蹴り、教室では弁当の匂いが広がっていた。


三神凌牙 は窓際で、静かにパンを食べていた。


焼きそばパン。


今日も安定の味だった。


そこへ、いつものように騒がしく現れる。


神谷拓也


「凌牙! その焼きそばパン一口くれ!」


「断る」


「友情より炭水化物か!」


「そうだ」



その瞬間。


校内放送のチャイムが鳴る。


♪キーンコーン……


だが次に流れたのは、教師の連絡ではなかった。


若い男の声。


『えー……二年B組の、水野梨沙さん』


教室中がざわつく。


水野梨沙 が顔を上げる。


『ずっと前から好きでした!

放課後、中庭で待ってます!』


放送終了。


教室、静止。


次の瞬間、大爆笑。


「うおおおお!」


「全校放送で告白!?」


「誰だよ勇者!」


水野は真っ赤になって立ち上がる。


「な、な、何ですかこれ!」


神谷が机を叩いて笑う。


「青春すぎるだろ!」


凌牙はパンを置いた。


「……違和感がある」



水野は震えながら言う。


「私、誰の声か分かりません」


「モテる自覚ゼロか」


「神谷君は黙ってください!」


凌牙は窓の外を見る。


「いや、そこじゃない」


「告白された本人が、ずっとここにいた」


「え?」


「放送が始まる前から、水野は教室にいた」


「つまり、誰かが放送室へ行き、彼女の所在確認もせず告白したことになる」


神谷が首をかしげる。


「好きなら教室にいるって知ってるだろ普通」


「そうだ」


「つまり――」


凌牙は立ち上がる。


「告白が目的じゃない」



放送室へ向かう途中、廊下でパンのいい匂いがした。


そこに屋台のような移動販売台車。


校外から来た臨時販売らしい。


白い帽子、口ひげ、エプロン姿の中年男が笑っている。


黒神田昴


「へい毎度!」


「メロンパン百円やでぇ!」


神谷が飛びつく。


「誰この人!?」


男は胸を叩く。


「わてか?」


「黒神田昴 言います」


「パンと笑顔を届けに来ましたんや!」


凌牙は一瞬だけ目を細めた。


「……初めて見る顔だな」


男はウインクする。


「世の中、初対面だらけやで兄ちゃん」



放送室の扉は半開きだった。


中には誰もいない。


マイクだけが机の上に置かれている。


神谷が叫ぶ。


「逃げた!?」


凌牙は機材を見る。


録音テープ。


再生ボタンが押されたままだった。


「生放送じゃない」


「録音かよ!」


「つまり犯人は昼休み前に仕込んだ」



さらに机の上にはパンくず。


そして、甘いクリームの匂い。


凌牙は静かに廊下へ戻った。


「なるほど」



教室へ戻ると、パン屋のおっちゃんは生徒に囲まれていた。


「クリームパン最高!」


「おっちゃんまた来て!」


男は陽気に笑う。


「商売繁盛や!」


凌牙が前に出る。


「犯人はあなたですね」


場が凍る。


神谷がメロンパンを落とす。


「えええ!?」


男は帽子を押さえた。


「なんのことや?」


凌牙は机の上にあったパンくずを見せる。


「放送室に落ちていたのは、あなたの店の特製クリームパンの生地だ」


「この校内で同じ匂いがするのは、今ここだけ」


男は黙る。


「録音した告白を流して、その間にパンを売った」


「注目を集めるために」


神谷が叫ぶ。


「宣伝目的か!」



男は数秒黙った後、突然笑い出した。


「アッハッハ!」


帽子を取る。


ひげを外す。


エプロンを脱ぐ。


そこにいたのは――


クロガミ


教室騒然。


「やっぱりお前か!」


凌牙が頭を抱える。


クロガミは指を振る。


「ちゃうちゃう!」


「今回は陰謀やない!」


「純粋な商売や!」


「余計悪いわ!」



クロガミ――いや 黒神田昴 は胸を張る。


「最近売上厳しゅうてな!」


「インパクトいる思たんや!」


水野が怒鳴る。


「私の名前を勝手に使わないでください!」


「一番真面目そうで話題性あるかなと」


「最低です!」



神谷が小声で凌牙に聞く。


「で、告白の声誰?」


クロガミが手を挙げる。


「わしや」


「声若かったぞ」


「努力や」



教師が廊下から走ってきた。


「何の騒ぎだ!」


クロガミは台車を押して逃げる。


「ほな閉店ガラガラや!」


神谷が追う。


「焼きそばパン置いてけ!」


凌牙は座り直した。


「……もうどうでもいい」



その日の放課後。


水野の机に、紙袋が置かれていた。


中にはクリームパンが一つ。


メモが添えられている。


迷惑料や。勉強頑張りや。

―黒神田昴


水野は複雑な顔をした。


「……食べていいのでしょうか」


凌牙は窓の外を見た。


「やめとけ」

放課後の教室。


誰もいないはずの静かな空間に、机の上をぴょこぴょこと跳ねる影があった。


チャック


「こんちわー!」


「後書きだけでも元気いっぱい!」


「進行役のチャックでーす!」


黒板に向かって一礼する。


「今回も事件、無事解決しましたー!」


しーん。


「……返事ないなぁ」



すると窓の外から声。


「誰に向かって喋ってんだ」


三神凌牙 が呆れ顔で立っていた。


チャックは満面の笑み。


「視聴者さんと読者さんと未来のファンでーす!」


「便利な相手だな」



チャックは教壇へ登り、胸を張る。


「さて今日は!」


「進行役として、皆さんにお願いがありまーす!」


凌牙が嫌な顔をする。


「ろくでもないな」


「そんなことないでーす!」


チャックは小さな紙を広げた。


進行役チャックの願い


1. 事件の時は慌てず騒がず、まず現場保存!

2. パン屋のおっちゃんが来ても正体を疑う!

3. 主人公にはたまに優しくする!

4. チャックが出た回は拍手する!


凌牙が即座に言う。


「四番だけ私欲だろ」


「バレたー!」



チャックは急にしょんぼりする。


「でも最近、思うんです」


「事件は解決しても、進行役の立場って不安定やなって……」


凌牙は腕を組む。


「急に現実的だな」


「次回、出番なかったらどうしよう……」


「知らん」


「冷たい!」



そこへ黒板に文字が浮かぶ。


使えるうちは使うで


クロガミ の筆跡だった。


チャックが震える。


「産みの親ぃぃぃ!」


凌牙はため息。


「ブラック企業か」



チャックは気を取り直し、観客へ向き直る。


「というわけで皆さん!」


「次回も事件簿、よろしくお願いしまーす!」


「進行役チャックの願いはただ一つ!」


両手を広げる。


「末永くレギュラーでいさせてくださーい!」


凌牙が小さく拍手した。


「……一回だけな」


チャック、感涙。


「主人公がデレたー!」


教室に、にぎやかな声だけがしばらく響いていた。

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