特別枠:
これは、本編の激しい戦乱より少し前――
束の間の平和が訪れた日の物語。
鳥羽姫 と 美兎姫 が、何故か巨大な箱――“コンテナ”の前で立ち尽くしていた。
その中には、未来を告げるという奇妙な魚がいるらしい。
そして案内役は、あの小さな黒鴉であった。
特別枠
―鳥羽姫と美兎姫 お茶会で未来予言者―
春の午後。
鴉天狗の国と白翼の国の境にある、静かな離宮庭園。
花びらが舞い、澄んだ池には鯉が泳ぎ、風はやわらかい。
その東屋にて、二人の姫君が向かい合っていた。
鳥羽姫
美兎姫
机には香り高い茶と、色鮮やかな菓子。
本来なら優雅な時間――のはずだった。
⸻
「……美兎姫」
鳥羽姫が静かに湯呑みを置く。
「その水晶玉は何ですか」
美兎姫はにこやかに答えた。
「未来を見る道具です」
「どこで手に入れたのです」
「怪しい行商人から」
「捨てなさい」
即答だった。
⸻
しかし美兎姫は嬉しそうに玉を撫でる。
「ですが見えるのです」
「未来が」
鳥羽姫は頭を押さえた。
「また始まりましたか」
「今回は本物です」
「前回も“明日、空から巨大な桃が降る”と言って外れました」
「惜しかったです」
「何も惜しくありません」
⸻
美兎姫は玉へ手をかざす。
すると白い煙が立ちのぼる。
「見えます……見えます……」
鳥羽姫が嫌な顔をする。
「ろくでもない予感しかしません」
美兎姫、ぱっと目を開く。
「セラ殿が将来――」
鳥羽姫の姿勢が少しだけ正される。
「……続けなさい」
「巨大な魚と戦っています」
沈黙。
「それは今でもやりそうですね」
⸻
再び煙が渦巻く。
「さらに見えます!」
「セラ殿、甘味処で団子を三本食べています!」
鳥羽姫の目が細くなる。
「……誰とです」
「左右に美女が二人」
東屋の空気が凍る。
「水晶玉を割ります」
「待ってください!」
⸻
その時、庭の隅から小さな笑い声。
黒い羽根が舞い、木陰に誰かいる。
クロガミ が座布団に座っていた。
なぜか茶菓子まで食べている。
「ええなぁ、この流れ」
鳥羽姫が立ち上がる。
「何故ここに」
「特別枠やからや」
「帰れ」
⸻
クロガミは手を振る。
「まあまあ、わしも予言したる」
美兎姫が目を輝かせる。
「本当ですか!」
「もちろんや」
咳払い一つ。
「近い未来――」
「この茶会、めっちゃ荒れる」
次の瞬間、鳥羽姫の投げた湯呑みが飛んだ。
クロガミは避ける。
「当たっとるやろ!」
⸻
美兎姫はさらに玉を見る。
「また見えました!」
「鳥羽姫様が将来、セラ殿へ――」
鳥羽姫が即座に口を塞ぐ。
「それ以上言えば白翼との同盟は終わります」
「むぐぐ」
クロガミ、大笑い。
「アッハッハッハ!」
「分かりやすい姫さんや!」
「黙りなさい!」
⸻
そこへ庭の外から声。
セラ(三神凌牙) が通りかかった。
「何の騒ぎだ」
鳥羽姫と美兎姫が同時に固まる。
クロガミだけが元気に手を振る。
「おーい主役!」
「今な、お前の恋愛未来予想図やっとったで!」
セラは真顔で踵を返した。
「帰る」
「待ちなさい!」
鳥羽姫が珍しく慌てて追いかける。
美兎姫も続く。
「団子の件だけ確認を!」
⸻
東屋に一人残されたクロガミ。
茶をすすりながら頷く。
「平和回も必要やな」
ふと水晶玉を見る。
そこに映った文字。
CONTINUE…
クロガミはにやりと笑った。
「そら、続くやろ」
⸻
特別枠:
―鳥羽姫と美兎姫 小鴉の予言魚―
港町の外れ。
潮風の吹く倉庫街に、ひときわ大きな鉄の箱が置かれていた。
小鴉 が、その上にちょこんと乗っている。
「カァ!」
鳥羽姫が腕を組む。
「……で、この“こんてなあ”とは何です」
美兎姫が嬉しそうに答えた。
「異国の運搬箱です」
「中に未来が見える魚がおります」
「情報量が多すぎます」
⸻
小鴉がくちばしで扉をつつく。
ガコン、と重い音を立てて扉が開いた。
中には、水槽が一つ。
その中を、一匹の金色の魚が泳いでいた。
額に妙な文字が浮かんでいる。
予言魚
鳥羽姫は無言で空を見た。
「帰ってもよろしいですか」
美兎姫は身を乗り出す。
「すごいです!」
「本当に額に説明が書いてあります!」
⸻
魚が口をぱくぱくさせる。
すると水面に文字が浮かんだ。
近き未来、鳥羽姫は赤面する
鳥羽姫が眉をひそめる。
「何ですそれは」
直後、背後から声がした。
セラ(三神凌牙) が通りかかった。
「何してるんだ、お前たち」
鳥羽姫の顔が一瞬で赤くなる。
美兎姫が拍手する。
「当たりました!」
鳥羽姫が剣へ手をかける。
「魚を焼きます」
⸻
魚は慌てて次の予言を出す。
美兎姫、三分後に転ぶ
「失礼ですね」
美兎姫が笑いながら振り返った瞬間、裾を踏んで盛大に転んだ。
「きゃっ」
鳥羽姫がため息をつく。
「本物でしたか……」
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小鴉は得意げに羽を広げる。
「カァ!」
セラが魚を見る。
「俺の未来も分かるのか?」
魚はしばらく沈黙し、水面に文字を浮かべた。
苦労する
セラ、真顔。
「雑すぎるだろ」
鳥羽姫と美兎姫は思わず笑った。
⸻
さらに魚は震えながら、最後の予言を示した。
この場に黒い厄介者来たる
全員が固まる。
倉庫の屋根の上から拍手。
パチ、パチ、パチ。
クロガミ が座っていた。
「いやぁ、呼ばれてしもたわ」
鳥羽姫が即座に叫ぶ。
「誰も呼んでいません!」
クロガミ、にやりと笑う。
「予言魚、ええ仕事するやん」
⸻
魚は慌てて次の文字を出す。
今すぐ逃げろ
クロガミが水槽を覗き込む。
「おっ、君賢いなぁ」
魚は気絶した。
⸻
その後、鳥羽姫と美兎姫は予言魚を保護し、港近くの池へ逃がしたという。
セラはぽつりと呟いた。
「結局、何だったんだ……」
小鴉だけが、どこか意味深に鳴いた。
「カァ」
後書き
今回は平和回として、
* 鳥羽姫 の赤面予言
* 美兎姫 の転倒予言
* セラ(三神凌牙) の雑な未来
* 小鴉 の謎行動
* クロガミ の乱入
を描きました。
予言魚はたぶん、もう二度と人前には現れません。




