第二十五話:
ギルド登録を終え、ようやく真面目な冒険者生活が始まる――。
そう思っていたマサユキだったが、
現実はそう甘くなかった。
神性魔獣討伐という重大任務。
本編主人公セラとの初共闘。
そして新たな厄介者の登場。
しかもその厄介者は、
あの苦労人ダーマネッギの血を引く者だった。
第二十五章:神性魔獣と元教祖
王都北方・古代遺跡地帯。
巨大な石柱が並び、空気は異様に重い。
地面には無数の爪痕。
兵士たちは近づくこともできず、遠巻きに包囲していた。
その中心で、静かに剣を構える男。
セラ。
彼の視線の先には、巨大な獣がいた。
全身を白銀の毛に覆われ、額には青い角。
背には翼のような骨が突き出し、口から神々しい霧を吐く。
神性魔獣グランヴェイル。
ギルドでも最上級危険指定の怪物だった。
⸻
「……でかいな」
マサユキが言った。
その隣でミレナは冷静に観察する。
「身体能力は高い。再生力もあるわね」
「勝てる?」
「私はね」
「俺は?」
「無理」
⸻
セラは振り返らず言った。
「新人は下がってろ」
マサユキは胸を張る。
「元教祖だぞ」
「なおさら下がれ」
⸻
その時だった。
後方から土煙が上がる。
「待てぇぇぇぇぇ!!」
若い声と共に、一人の青年が馬車を飛び降りて駆けてきた。
金と黒の羽。
長身。
目つきだけ妙に真面目。
「やっと追いついた!」
青年はミレナの前で膝をつく。
「あなたに会うため、帝国から来ました!」
マサユキが感動する。
「ついに来たか……俺に憧れる若者が」
ミレナとセラが同時に顔をしかめた。
⸻
青年は名乗った。
ダーラキッギ。
ダーマネッギの息子である。
マサユキは胸を叩く。
「そうか! 父から俺の武勇伝を聞いたんだな!」
「いえ」
「教団時代の伝説を――」
「違います」
「なら何で」
ダーラキッギは真っ直ぐミレナを見る。
「あなたの知略、戦闘、統率、すべてに憧れています!」
沈黙。
マサユキだけ笑顔のまま固まった。
⸻
ミレナは額を押さえた。
「……面倒なのが増えた」
セラは呆れたように言う。
「親父に似て苦労しそうだな」
マサユキはまだ諦めていない。
「いや待て、これは照れ隠しだ」
「違う」
三人同時だった。
⸻
その瞬間、神性魔獣グランヴェイルが咆哮した。
轟音と共に遺跡が揺れる。
兵士たちが吹き飛び、石柱が砕ける。
セラが即座に前へ出る。
「話は後だ!」
ミレナが羽を広げる。
「ダーラキッギ、下がりなさい!」
「嫌です! あなたの戦いを近くで!」
「死ぬわよ!」
「本望です!」
マサユキが肩を抱く。
「若いなぁ。やっぱ俺に似てる」
「全然違う!」
⸻
グランヴェイルが突進する。
セラが斬撃で受け止め、地面が割れた。
ミレナは毒針を放ち、魔獣の動きを鈍らせる。
ダーラキッギは槍を構え、叫んだ。
「ミレナ様のために!」
マサユキも遅れて叫ぶ。
「俺のためにも頼む!」
誰も返事をしなかった。
⸻
激戦の中、セラは横目でマサユキを見る。
「お前、本当に戦えるのか」
マサユキは笑った。
「戦うのは苦手だ」
「だが、人を動かすのは得意だ」
彼が叫ぶ。
「セラ右! ミレナ上! 若者、気合だ!」
不思議と全員が動いた。
その連携の隙を突き、セラの剣が魔獣の角を断ち切る。
グランヴェイルは絶叫し、崩れ落ちた。
⸻
静寂。
ダーラキッギは目を輝かせていた。
「すごい……ミレナ様……!」
マサユキも胸を張る。
「見たか今の指揮」
「ええ」
ミレナが冷たく言う。
「たまたまね」
⸻
セラは剣を収めながら呟いた。
「……面倒な連中が増えた」
だがその口元は、わずかに笑っていた。
登場人物
セラ
本編主人公。神々との戦いを生き抜いてきた男。圧倒的な戦闘力と冷静さを持つ。多くを失いながらも前へ進み続ける存在。今回、神性魔獣討伐の中心戦力となる。
マサユキ
元・正規教バチス教祖。現在は冒険者。戦闘能力は高くないが、話術・発想力・人を動かす才能に優れる。今回も自信満々だが、ダーラキッギに憧れられていると勘違いする。
ミレナ
毒蜂族の元女王で、マサユキの相棒。毒術・回復術・統率力に優れた実力者。冷静で現実的な性格。ダーラキッギから強く尊敬されている。
ダーラキッギ
ダーマネッギの息子。若き槍騎士。真面目で熱血漢。父の話や噂からミレナに憧れ、彼女を追って王都まで来た。礼儀正しいが一直線すぎる一面もある。
ダーマネッギ
帝国騎士団長。ダーラキッギの父。寡黙で誠実な武人。今回は直接登場しないが、その名と血筋が大きな影響を与えている。
神性魔獣グランヴェイル
古代遺跡に現れた危険な怪物。白銀の巨体と高い再生力を持つ。討伐対象としてセラたちの前に立ちはだかる。
残り香の双針
マサユキとミレナが組む冒険者パーティー。現在ギルド所属。実質はミレナが戦力、マサユキが交渉担当。
人物関係
セラ × マサユキ
実力者とトラブルメーカー。呆れながらも能力は認め始めている。
セラ × ミレナ
互いに力量を理解する実力者同士。信頼はまだこれから。
マサユキ × ミレナ
相棒関係。ミレナが常にマサユキの暴走を止める。
ミレナ × ダーラキッギ
憧れの対象と追いかけてくる若者。ミレナは少し迷惑している。
マサユキ × ダーラキッギ
一方的に師弟関係だと思い込む男と、全くそう思っていない若者。
今回は、
* セラとマサユキの初共闘
* 神性魔獣グランヴェイル討伐
* ダーマネッギの息子ダーラキッギ登場
* ミレナへの憧れとマサユキの勘違い
を描きました。
ダーラキッギは父に似て真面目ですが、
少し熱すぎる性格です。
そしてマサユキは相変わらず自意識が強い。
次回、さらに賑やかになります。




