第二十六話:
神性魔獣討伐を終え、ギルドには束の間の平穏が戻っていた。
だが、セラの胸中には静かな違和感があった。
遠くから呼ばれているような気配。
忘れたはずの過去。
置いてきたはずの絆。
そしてその予感は、突然現実となる。
第二十六章:若き槍騎士と毒蜂の女王
王都ギルド・訓練場。
ダーラキッギは汗だくで槍を振っていた。
「もう一度お願いします!」
その前でミレナは腕を組む。
「突きが甘い。腰が浮いてる」
「はい!」
「あと声が大きい」
「はい!!」
「もっと小さく」
「……はい」
少し小さくなった。
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横ではマサユキが椅子に座り、腕を組んで頷いていた。
「うむ。弟子が育っておる」
ダーラキッギが振り向く。
「弟子ではありません」
「即否定!?」
ミレナが冷たく言う。
「現実を見なさい」
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その少し離れた場所で、セラは黙って剣の手入れをしていた。
誰とも話さず、ただ静かに刃を見つめる。
マサユキが近づく。
「なあ、最近ずっと黙ってないか?」
「元からこうだ」
「いや、もっと嫌そうな顔してる」
「お前のせいだ」
「心外だな」
ミレナとダーラキッギが同時に頷いた。
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その時だった。
空が陰る。
訓練場の上空に巨大な影が差した。
人々が見上げる。
黒き翼。
鋭い嘴。
風を裂く咆哮。
鴉天狗族の飛行船団だった。
先頭から舞い降りたのは、気高き姿の女。
鳥羽姫
その隣には、猛々しい巨躯の戦士。
空牙
ギルド中が騒然となる。
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鳥羽姫は一直線にセラの前へ歩いた。
「……久しいな」
セラはため息をつく。
「帰れ」
「貴様が帰るのだ」
空牙が腕を組んで笑う。
「国が荒れてる。お前が必要だ」
「俺は断ったはずだ」
「却下された」
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マサユキが割って入る。
「まあまあ、本人の意思を尊重して――」
空牙が片手で持ち上げた。
「軽いなこいつ」
「やめろ! 元教祖だぞ!」
「だから軽いのか」
「関係ない!」
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鳥羽姫は真っ直ぐセラを見る。
「逃げるな」
その一言に、場の空気が変わる。
セラの表情がわずかに揺れた。
「……何が起きた」
鳥羽姫は答える。
「王家の内乱。旧臣の反乱。境界の崩壊」
「そして――お前の名を騙る者が現れた」
セラの目が鋭くなる。
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ミレナが静かに言う。
「行くべきね」
マサユキも珍しく真面目な顔になる。
「お前の物語なんだろ」
ダーラキッギは槍を掲げた。
「私も同行を!」
「駄目だ」
全員一致だった。
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セラは剣を腰に差す。
「……面倒事ばかりだ」
空牙が笑う。
「お前がいる所は昔からそうだ」
鳥羽姫は少しだけ微笑んだ。
「戻れ、セラ」
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飛行船へ向かうセラの背中に、マサユキが叫ぶ。
「また会おう!」
「次は俺が主役の章で!」
セラは振り返らず手を上げた。
「永遠に来ないな」
ミレナが吹き出す。
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飛行船団は空へ舞い上がる。
王都の人々が見送る中、セラは再び鴉天狗の国へ向かった。
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静寂の後。
マサユキが腕を組む。
「さて、俺たちは?」
ミレナが言う。
「しばらく地方依頼で稼ぐ」
「地味!」
「現実よ」
ダーラキッギが目を輝かせる。
「ご一緒します!」
「来るのね……」
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こうして、マサユキとミレナの幕間は一旦終わる。
物語は再び、セラへ戻る。
登場人物
セラ
本編主人公。神々との戦いを生き抜いてきた男。寡黙で冷静、圧倒的な実力を持つ。最近は何かを感じ取っているように口数が少なくなっていた。今回、再び鴉天狗の国へ戻ることになる。
マサユキ
元・正規教バチス教祖。現在は冒険者。口が達者で場をかき回す天才。今回も自分が中心だと思い込んでいるが、周囲からの扱いは雑。セラを見送り、一旦物語の表舞台から離れる。
ミレナ
毒蜂族の元女王。マサユキの相棒であり実質的な参謀。冷静沈着で戦闘力も高い。ダーラキッギの指導役となっていた。セラの状況を理解し、背中を押す。
ダーラキッギ
ダーマネッギの息子。若き槍騎士。真面目で熱血、ミレナに強く憧れている。修行中で素直な性格だが勢いが強い。今回も同行を希望するが却下される。
鳥羽姫
鴉天狗族の姫君。セラと深い因縁を持つ女性。気高く聡明で、国の未来を背負う存在。国の危機を伝えるため、自らセラを迎えに来た。
空牙
鴉天狗族の豪勇なる将。豪快で力強く、鳥羽姫に忠誠を誓う武人。セラとは旧知の仲で、遠慮なく接する。今回、半ば強引にセラを連れ戻す役目を担う。
ダーマネッギ
帝国騎士団長。今回は直接登場しないが、ダーラキッギの父として存在感を残している。
人物関係
セラ × 鳥羽姫
過去に深い絆を持つ関係。互いに特別な存在。
セラ × 空牙
信頼と対抗心のある戦友関係。
セラ × マサユキ
性格は正反対だが、妙に縁ができた仲。
マサユキ × ミレナ
相棒同士。騒ぐ男と支える女。
ミレナ × ダーラキッギ
師弟未満、憧れと指導の関係。
この章の位置づけ
外伝寄りだった流れが終わり、
本編主人公セラの物語へ完全に戻る転換章。
今回は、
* ダーラキッギの修行継続
* セラの沈黙の理由
* 鳥羽姫と空牙の再登場
* 鴉天狗の国への強制帰還
* マサユキ&ミレナ編の一時終了
を描きました。
ここから再び本編の中心はセラになります。
外伝組であるマサユキたちは、また必要な時に現れるでしょう。
たぶん騒がしく。




