第六話:
旅を続ける 正規教バチス。
地下で牙を研ぐ 正規教ザバス。
旧き支配と、新しき混沌。
二つの正規教の争いは、ついに終幕へ向かう。
そしてこの戦いの果てに、
マサユキとミレナは後に“セラの前へ現れる者”となる。
外伝編:正規教二派
第六話:王族の針
夜明け前。
荒野の中央に、二つの軍勢が向かい合っていた。
右には、古き旗印。
黒金の針と鎖を象った軍旗。
正規教ザバス の最後の軍勢。
左には、色も形も統一されていない雑多な旗。
蜂の絵。壺の絵。笑顔のマサユキ。
意味不明の標語。
正規教バチス の信徒たちだった。
中央に立つのは、古王女ベスパ 。
巨大な羽を広げ、王槍を掲げる。
「最後に問う!」
「秩序を捨て、愚かな自由を選ぶか!」
対する荷車の上では、マサユキ が叫ぶ。
「自由っていうか!」
「だいたい勢い!」
信徒たちが歓声を上げる。
「教祖様ー!」
「軽い!」
とミレナ。
⸻
ミレナ は前へ出た。
「ベスパ」
「もう終わりにしましょう」
ベスパは鼻で笑う。
「終わるのは貴様らだ」
「群れには鉄の規律が必要だ」
その時、一人の巨躯が二人の間へ歩み出る。
ダーマネッギ 。
「母上」
「もうやめろ」
ベスパの瞳が揺れた。
「……息子よ」
「今さら戻るか」
「戻らぬ」
「だが終わらせる」
⸻
ダーマネッギは剣を抜く。
黒金の王族羽が広がる。
兵たちがざわめいた。
「王家の羽……!」
「後継者……!」
ベスパが槍を構える。
母と子。
旧王と捨てられた王子。
二つの針が激突した。
⸻
轟音。
砂塵。
何十合もの応酬の末、ダーマネッギの剣先がベスパの喉元へ止まる。
ベスパの槍は、息子の胸前で止まっていた。
互いに殺せる距離。
だが、どちらも動かなかった。
「……なぜ刺さぬ」
とベスパ。
「母だからだ」
「甘い」
「知ってる」
⸻
その瞬間、ミレナが羽を震わせる。
王の威圧が戦場全体へ走った。
ザバス兵たちは武器を落とし、膝をつく。
ベスパは周囲を見回し、ゆっくり笑った。
「そうか」
「時代は終わったか」
彼女は槍を地へ刺した。
「ならばザバスも終わりだ」
黒金の羽が崩れ、砂となって消えていく。
古王女ベスパの姿もまた、朝日に溶けるように薄れていった。
最後に彼女はダーマネッギを見る。
「弱さを知る王になれ」
そして消えた。
⸻
戦いは終わった。
正規教ザバス はここに消滅。
だが同時に、正規教バチス も終わりを迎えた。
マサユキは寄進箱を閉じ、笑う。
「よし、解散!」
信徒たちが泣き崩れる。
「急すぎる!」
「せめて手続き!」
ミレナは肩をすくめた。
「元々そんなものよ」
⸻
その後。
旧ザバス残党とバチス信徒をまとめ、
新たな国家が生まれた。
その名は――ダーマネッギ帝国。
初代皇帝の即位を何度も断ったダーマネッギは、代わりにこう告げた。
「俺は王ではない」
「剣で国を守る」
こうして彼は、
帝国騎士団長
となった。
⸻
旅立ちの日。
マサユキとミレナは荷物を背負い、街道へ出る。
「次どこ行く?」
とマサユキ。
「面白そうな男がいるらしいわ」
とミレナ。
「名前は?」
ミレナは笑った。
「……セラ」
⸻
二人は歩き出す。
ここで外伝は終わり、
物語は本編へ戻る。
これにて 正規教二派 外伝編 は完結です。
* ザバス消滅
* バチス解散
* ベスパ退場
* ダーマネッギ帝国成立
* マサユキ&ミレナ、本編へ合流
宗教戦争のようでいて、
実際は「時代交代の物語」でした。
ベスパの時代は終わり、
ダーマネッギが秩序を受け継ぎ、
マサユキとミレナは混沌を抱えて次の舞台へ進む。
そしてその先に、セラがいます。




