第五話:
旧体制宗教 正規教ザバス を離れ、
新勢力 正規教バチス を立ち上げたマサユキたち。
旅をしながら人を助け、
時に祈られ、
時に金を受け取り、
時に逃げる。
それでもバチスは、確かに広がり始めていた。
だが、仲間の中にはまだ語られぬ過去があった。
外伝編:正規教二派
第五話:巡礼と集金
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朝焼けの街道。
荷車には蜂蜜壺、薬草、寄進箱、そして意味ありげな旗。
旗には大きく書かれていた。
正規教バチス
その下に小さく、
「困った時は相談ください」
さらにもっと小さく、
「寄進歓迎」
マサユキ は満足げに頷いた。
「完璧な看板だ」
ミレナ は冷たく言った。
「下の文字だけ本音ね」
後方では ダーマネッギ が一人で荷車を引いていた。
「……なぜ俺が」
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昼頃、小村へ到着する。
村人たちは干ばつで苦しみ、畑は枯れ、子どもたちは空腹だった。
マサユキはすぐ荷車へ飛び乗る。
「皆さん!」
「絶望してませんか!」
「未来を諦めてませんか!」
「そんな時こそ――バチスです!」
村人たちは困惑した。
「バチスって何だ?」
「薬か?」
「宗教です」
とミレナ。
「なんで言い切った?」
とマサユキ。
ミレナは羽を広げ、空へ舞い上がる。
淡い鱗粉が風に乗り、雲を呼ぶ。
やがて小雨が降り、乾いた畑へ水が落ちる。
村人たちが歓声を上げた。
「奇跡だ!」
「女神様だ!」
「ありがてぇ!」
マサユキは即座に寄進箱を前へ出す。
「お気持ちで結構です!」
ミレナが肘打ちした。
「三流」
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その夜。
村の宴で酒と食事が並ぶ中、マサユキは帳簿を見て笑っていた。
「いやー、信仰って安定収入だな」
ダーマネッギが無表情で答える。
「最低だ」
「誤解だ。活動資金だ」
「同じだ」
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宴の後、焚き火の前。
ミレナはじっとダーマネッギを見ていた。
「……いつまで黙ってるの?」
「何の話だ」
「あなたの羽」
ダーマネッギの背には普段、厚い外套が掛けられている。
ミレナがそれを引いた。
現れたのは、兵蜂のものとは違う――
黒金色の重厚な羽。
王族の証。
マサユキが固まる。
「え、何それ。高そう」
「そこ?」
とミレナ。
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沈黙の後、ダーマネッギは低く語った。
「……俺の母は、古王女ベスパ だ」
焚き火が爆ぜた。
マサユキが立ち上がる。
「はぁ!?」
「じゃあお前、王子!?」
「庶子だ」
「認められていない」
ミレナは静かに頷いた。
「だからあなたを殺さず追放だけで済ませたのね」
ダーマネッギは拳を握る。
「母は力しか信じぬ」
「弱い者も、迷う者も、笑う者も嫌った」
「俺はあの巣で、息が詰まりそうだった」
マサユキは少し黙り、やがて笑った。
「じゃあ今はどうだ?」
「……騒がしすぎる」
「だろうな!」
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その頃、地下深く。
巨大な繭の前に立つベスパは目を閉じていた。
「愚かな息子よ」
「お前もあの男に染まったか」
繭が裂ける。
中から現れたのは、鋼のような羽を持つ新たな戦士。
ベスパは不敵に笑う。
「ならば次は、真の後継者を送ろう」
今回は、
* 正規教バチスの本格巡礼開始
* 奇跡と集金の両立
* ダーマネッギの正体判明
* ベスパとの血縁
を描きました。
ダーマネッギは単なる苦労人ではなく、
旧王家の血を引く者でした。
つまり、
* ベスパの支配
* ミレナの改革
* マサユキの混沌
その三つの狭間に立つ人物です。
彼こそ今後の鍵になります。




