第四話:
毒蜂族の巣で生まれた、勢いだけの新宗教――正規教バチス。
教祖は口先だけの男マサユキ。
実権は若き女王ミレナ。
信者はノリのいい蜂たち少々。
しかし、その名には思わぬ因縁があった。
“バチス”とは、古王女ベスパの時代に封じられた言葉でもあったのだ。
外伝編:正規教バチス
第四話:蜜壇の奇跡
毒蜂族の巣、中央広間。
「バチス! バチス!」
蜂たちの唱和が響く中、マサユキ は黄金椅子にふんぞり返っていた。
「いやぁ、やっぱ俺ってカリスマあるな」
横から、ミレナ が蜂蜜壺を頭に落とした。
ごん。
「痛っ!」
「調子に乗ると顔が腹立つのよ」
そこへ兵蜂が飛び込んでくる。
「ご報告です!」
「古王女ベスパ派が地下区画で武装!」
「さらに“バチス”の名に激怒しております!」
マサユキが眉をひそめる。
「え、なんで?」
老兵蜂が震えながら答えた。
「かつて古王女ベスパ様は、絶対支配体制を築いた際――」
「蜂族統一規律至上制度」
「略して……バ・チ・ス」
沈黙。
ミレナがゆっくりマサユキを見る。
「……また何も知らず地雷を踏んだのね」
「知らねぇって!」
⸻
巣の地下深く。
古王女ベスパ は怒りに震えていた。
「私の制度名を!」
「軽薄な新興宗教に使うとはぁぁ!」
側近蜂たちが平伏する。
「い、いかがなさいますか」
ベスパは尾針を壁へ突き立てた。
「決まっておる」
「追放せよ」
⸻
その夜。
マサユキ、ミレナ、そして巻き込まれ体質の重戦士 ダーマネッギ は巣の外へ荷物を積んでいた。
「なんで俺まで」
「顔が幹部っぽい」
とマサユキ。
「盾になるから」
とミレナ。
「理由雑すぎる」
⸻
森の出口。
マサユキは巣を振り返る。
「勇者追放に続いて、宗教追放か……」
ミレナが肩をすくめる。
「あなた、追い出される才能あるわね」
「嬉しくねぇよ」
⸻
数日後、小さな村。
病人、飢えた旅人、迷子の商人が集まっていた。
マサユキは荷車の上へ立つ。
「皆さん!」
「不安でしょう!」
「苦しいでしょう!」
「ですが安心してください!」
「我らには――バチスがあります!」
村人たちがざわめく。
「バチス……?」
「効くのか?」
ミレナが前へ出る。
羽を震わせ、甘い香りを漂わせる。
疲れた人々の顔色が和らいでいく。
「信じる者には、蜜の恵みを」
働き蜂たちが蜂蜜や薬草蜜を配る。
病人が立ち上がる。
子どもが笑う。
老人が涙を流す。
「ありがたい……」
「女神様だ……」
マサユキが即座に便乗する。
「その感謝、寄進でも表せます!」
ミレナが肘打ちした。
「台無し」
⸻
こうして三人の旅が始まった。
* 教祖:マサユキ
* 女王兼実務責任者:ミレナ
* 荷物持ち兼盾役:ダーマネッギ
そして各地で広がっていく。
マサユキの正規教バチス が。
⸻
その頃、巣の地下。
古王女ベスパは巨大な繭の前に立っていた。
「好きに広めるがよい」
「やがて本物のバチスを知る」
繭の中で、何かが脈打った。
改めて、名称は正規教バチスです。
今回の本質は、
* 偶然できた宗教が本格的に外へ広がったこと
* マサユキが教祖として形だけ完成したこと
* ミレナが実際の奇跡担当であること
* ベスパが裏で動き始めたこと
です。
つまり、
看板はマサユキ、実務はミレナ、苦労人はダーマネッギ。
非常にバランスの悪い組織です。
登場人物
マサユキ
本外伝の主人公。
勇者として召喚された……はずが、人違いで追放された高校生。
剣術も魔法も平凡だが、
* 話術
* 空気支配
* その場の勢い
* 人を集める妙な魅力
を持つ。
現在は 正規教バチス の教祖。
本人もなぜこうなったか完全には分かっていない。
口癖:
「まあ何とかなる」
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ミレナ
毒バチ族の若き女王。
美貌、知性、戦闘力、統率力を兼ね備えた本物の支配者。
回復術、毒術、女王威圧など強力な能力を持つ。
マサユキの軽薄さに呆れながらも、
* 発想力
* 民衆人気
* 常識外れの突破力
を高く評価している。
実質、バチスの運営責任者。
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ダーマネッギ
巨体の毒蜂族戦士。
寡黙で真面目、非常に常識人。
巻き込まれて同行した結果、
* 護衛
* 荷物持ち
* 現場責任者
* 幹部候補
という扱いになっている。
本人は納得していない。
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古王女ベスパ
毒蜂族の先代支配者。
巨大な体躯と絶対的威圧感を持つ旧時代の王。
彼女が築いた宗教組織こそ、
正規教ザバス
である。
理念は、
* 服従
* 統制
* 忠誠
* 秩序
民の幸福より群れの維持を優先する支配思想。
現在は地下勢力を率い、復権を狙う。
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正規教ザバス
ベスパ時代の国家宗教。
厳格な戒律と上下関係で群れを統制する。
特徴:
* 規律第一
* 逆らえば罰
* 感情より命令
* 戦士養成型組織
旧世代の象徴。
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正規教バチス
ザバスに対抗して生まれた新勢力。
特徴:
* 困った人を助ける
* 飯を配る
* 雰囲気で団結
* 教義は毎回変わる
かなり適当だが人気は高い。
現代型・大衆型宗教集団。
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ワダ
マサユキの代わりに召喚予定だった人物。
* 真の勇者説
* 名前の誤記説
* 既に死亡説
* 存在しない説
など様々な噂がある。
マサユキにとって人生の分岐点。




