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異世界落胤セラ ~ポセイドンに捨てられた俺は、救うたびに誰かを溺れさせる~  作者: マーたん


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第三話:

毒蜂族の巣で生き延びた異世界人マサユキ。

若き女王ミレナの庇護を受け、なぜか蜂たちの間で顔が利くようになっていた。


だが、調子に乗る男には必ず失敗が訪れる。


そして失敗こそが、新たな歴史を生むこともある。

外伝編:正規教ザバス


第三話:蜂王と教祖


毒蜂族の巣、中央広間。


 


マサユキは高台の上に立っていた。


 


背中にはどこから調達したのか分からない赤いマント。

腰には飾りだけ豪華な剣。

表情だけは英雄そのもの。


 


マサユキ は声高らかに宣言した。


 


「決めた!」


 


「俺、冒険者やる!」


 


 


働き蜂たちがざわつく。


 


ミレナが眉をひそめる。


 


ミレナ


 


「昨日まで森で泣いてた男が?」


 


 


「泣いてない。汗だ」


 


 


「冬だったけど」


 


 


マサユキは咳払いした。


 


「細かいことはいい」


 


「世界を救うには、まず形から入る!」


 


 


その場にいた者たちは嫌な予感しかしなかった。



数時間後。


 


即席のパーティーが結成された。


 


勇者:マサユキ


本人申告。勇者らしい。証拠はない。


剣士:ダーマネッギ


寡黙な大男。毒蜂族の門番。剣は強いが巻き込まれただけ。


回復・魔法:ミレナ


女王。回復も毒も使える万能型。本人は不本意。


 


そしてマサユキは誇らしげに叫んだ。


 


「我らの名は――」


 


「己の毒針おのれのどくばり だ!」


 


 


沈黙。


 


働き蜂A「ださい」


働き蜂B「長い」


兵蜂C「意味が分からん」


 


ミレナが額を押さえた。


 


「今すぐ解散しましょう」


 


 


結成から三分で、パーティー己の毒針は消滅した。



だが、その直後だった。


 


巣の奥から轟音が響く。


 


蜜倉庫が破壊され、兵蜂たちが吹き飛ぶ。


 


現れたのは、怒り狂う巨躯。


 


古王女ベスパ


 


「ミレナァァァ!!」


 


「貴様の遊びは終わりだ!」


 


 


彼女の背後には、古参兵蜂たちが集っていた。


 


「真の王はベスパ様!」


 


「若造女王を退けろ!」


 


 


反乱だった。


 


ミレナが静かに前へ出る。


 


「ついに来たのね」


 


 


ベスパはマサユキを睨む。


 


「全てはその人間のせいだ!」


 


「群れが浮つき、秩序が乱れた!」


 


 


マサユキは指をさした。


 


「それ半分くらい事実だな」


 


 


ダーマネッギが初めて口を開いた。


 


「全部だ」


 


 


その時、兵蜂たちの間でざわめきが起こる。


 


「どうする……」


 


「どっちに付く……」


 


 


空気が揺れていた。


 


マサユキの目が光る。


 


再び発動する固有技能――


《空気支配》


 


彼は一歩前へ出て、やたら堂々と腕を広げた。


 


「皆、聞け!」


 


「争いは良くない!」


 


「だから俺に従え!」


 


 


「雑!」


と全員が思った。


 


だが、なぜか一部の蜂たちが頷き始める。


 


「た、確かに……」


 


「争わぬ第三の道……?」


 


「なんかそれっぽい!」


 


 


ミレナが呆れる。


 


「適当すぎる……」


 


 


マサユキはさらに勢いで続けた。


 


「我らは正しき道を行く!」


 


「古き因習にも、新しき暴走にも染まらぬ!」


 


「その名も――」


 


彼は周囲を見回した。


 


壁に貼られた蜜樽の商標が目に入る。


 


そこには古代文字でこう書かれていた。


 


ZABAS


 


「……その名も、ザバス!」


 


 


全員が静止した。


 


ベスパですら固まる。


 


 


「ザバス……?」


 


 


マサユキは乗ってきた。


 


「そう!」


 


「正しき規律!」


 


「清き心!」


 


「強き身体!」


 


「略して――正規教ザバス!」


 


 


働き蜂たちがざわめく。


 


「なんかすごそう!」


 


「語感がいい!」


 


「強そう!」


 


 


ダーマネッギが小声で言う。


 


「中身は無い」


 


 


ミレナは深いため息をついた。


 


だが次の瞬間、彼女は羽を広げ宣言する。


 


「……面白いわ」


 


「なら私も乗る」


 


 


兵蜂たちが歓声を上げる。


 


「女王陛下が認めた!」


 


「ザバス! ザバス!」


 


 


一気に流れが変わった。


 


ベスパ派の兵たちまで動揺する。


 


「ベスパ様……」


 


「ザバスの方が人気です……」


 


 


古王女ベスパは震えた。


 


「私は武で負けず……」


 


「言葉遊びで負けたのか……!」


 


 


怒りの咆哮を残し、彼女は奥へ退いた。


 


反乱は終わった。


 


そしてその日、毒蜂族の巣に奇妙な新勢力が生まれる。


 


正規教ザバス


 


教祖はマサユキ。

実権はミレナ。


 


誰も幸せな予感はしなかった。

今回は、


* 一瞬で消えた伝説のパーティー 己の毒針

* 古王女ベスパの反乱

* そして“ザバス”誕生


という、かなり混沌とした回でした。


ザバスという言葉には深い意味はありません。

本当にその場のノリです。


ですが歴史とは案外そんなものです。

後から人は意味をつけ、神聖化し、教義にしていく。


つまりマサユキは、

中身ゼロの言葉に熱狂を乗せる才能 を持っています。


恐ろしい男です。

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