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異世界落胤セラ ~ポセイドンに捨てられた俺は、救うたびに誰かを溺れさせる~  作者: マーたん


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第二話:

誰かを救えば、誰かが死ぬ。


それが理不尽だと、人は言うだろう。

だが世界は、最初からそういう形で成り立っているのかもしれない。


命を守るために、別の何かを失う。

前へ進むために、何かを置いていく。


選ぶとは、そういうことだ。


神の子でありながら、何も知らぬ少年セラ。

この章で彼は初めて、“救い”の重さを知る。


そして現れるのは、時そのものを見つめてきた古き神――

クロノス。


これは、力の物語ではない。

選択の物語だ。


第二章:クロノスの教え


 


落ちた先は、静寂だった。


 


空は灰色。

風はなく、音もない。


 


ただ、荒れた大地だけが広がっている。


 


セラは立っていた。


 


――生きている。


 


それだけは理解できた。


 


体に傷はない。

呼吸も問題ない。

だが――


 


「……海が、ない」


 


その言葉は、無意識に漏れた。


 


自分でも意味が分からない。


 


海に拒絶されていたはずなのに、

今はその“気配すら存在しない”。


 


完全な断絶。


 


 


足元に、小さな影があった。


 


倒れている少女。


 


息は浅く、今にも消えそうだ。


 


「……」


 


セラはしゃがみ込む。


 


どうすればいいのかは分かる。


 


――触れればいい。


 


手を伸ばす。


 


水のような光が、指先に宿る。


 


海の力。


 


拒絶されていたはずのそれが、

なぜか今は応えている。


 


 


「……生きろ」


 


触れた。


 


その瞬間――


 


少女の呼吸が戻る。


 


瞳が開く。


 


命が、戻った。


 


 


「……あ、れ……?」


 


少女は戸惑いながらセラを見る。


 


「あなた……」


 


 


その時だった。


 


――遠くで、水音がした。


 


 


あり得ない。


 


ここには海などない。


 


 


だが確かに、“溺れる音”が聞こえた。


 


 


一瞬の静寂の後。


 


 


理解した。


 


 


「……死んだ」


 


 


なぜか分かる。


 


理由も、距離も、誰かも知らないのに。


 


 


誰かが、溺れて死んだ。


 


 


少女が言う。


 


「……ありがとう……」


 


 


その言葉が、妙に重く感じた。


 


 


 


夜が来る。


 


空は暗く、星も見えない。


 


 


セラは一人で座っていた。


 


少女は近くで眠っている。


 


 


助けた。


 


 


それは事実だ。


 


だが――


 


 


「……なぜ、死んだ」


 


 


答えはない。


 


 


その時、空間が歪んだ。


 


 


音もなく、現れる影。


 


 


それは“存在している”というより――


 


そこに最初からあったものが、形を持っただけのようだった。


 


 


「問うか」


 


 


低く、古い声。


 


 


セラは顔を上げる。


 


 


そこにいたのは――


 


クロノス。


 


 


「……誰だ」


 


 


「名など意味はない」


 


 


わずかに笑う。


 


 


「だが、お前たちの言葉で呼ぶなら――クロノスだ」


 


 


沈黙。


 


 


セラはただ見ている。


 


 


クロノスは続ける。


 


 


「救ったな」


 


 


「……ああ」


 


 


「そして、死なせた」


 


 


セラの目がわずかに揺れる。


 


 


「なぜだ」


 


 


 


クロノスは即答した。


 


 


「お前が生かしたからだ」


 


 


 


静寂。


 


 


意味が、理解できない。


 


 


「……因果が、逆だ」


 


 


「違う」


 


クロノスは首を振る。


 


 


「それが正しい」


 


 


 


「救いとは、選択だ」


 


 


「選択とは、切り捨てることだ」


 


 


 


その言葉は、重く沈む。


 


 


「すべてを救うことはできない」


 


 


「だから、お前は“選ばされている”」


 


 


 


セラは少女を見る。


 


 


眠っている。


 


 


生きている。


 


 


だが――


 


 


その代わりに、誰かが死んだ。


 


 


 


「……なら、救わなければいい」


 


 


 


クロノスは笑った。


 


 


「それもまた、選択だ」


 


 


「そして同時に――」


 


 


 


「見殺しだ」


 


 


 


言葉が刺さる。


 


 


 


「お前はすでに選んでいる」


 


 


 


セラの視線が戻る。


 


 


 


「……いつだ」


 


 


 


クロノスは答えない。


 


 


ただ一言だけ、静かに落とした。


 


 


 


「覚えていないだけだ」


 


 


 


その瞬間――


 


 


頭の奥に、何かがよぎる。


 


 


月明かり。


 


森。


 


誰かの声。


 


 


「……あなたは――」


 


 


 


ノイズのように、消える。


 


 


 


セラは額を押さえる。


 


 


 


「……誰だ」


 


 


 


クロノスは静かに言う。


 


 


 


「重要なのは、過去ではない」


 


 


「次に、お前が何を選ぶかだ」


 


 


 


 


その時、少女が目を覚ます。


 


 


「……っ、助けて……!」


 


 


遠くから、叫び声。


 


 


炎が見える。


 


 


村だ。


 


 


 


複数の気配。


 


 


助けられる。


 


 


だが――


 


 


セラは理解している。


 


 


救えば、誰かが死ぬ。


 


 


 


「選べ」


 


 


クロノスの声。


 


 


 


セラは立ち上がる。


 


 


 


足が、動く。


 


 


 


止まらない。


 


 


 


理由は分からない。


 


 


だが――


 


 


 


「……俺は」


 


 


 


初めて、考えた。


 


 


 


そして――


 


 


 


選んだ。


 


 


 


その瞬間、どこかで再び、水音がした。


 


 


 


 


クロノスはそれを見て、わずかに笑う。


 


 


 


「そうだ」


 


 


 


「それがお前だ、セラ」


 


 


 


 


闇の中で、運命だけが進んでいく。


 


 


 


――止まることなく。

第二章まで読んでいただき、ありがとうございます。


この章では、セラが異世界で初めて自らの力と向き合いました。

人を救える力。けれど、その裏で誰かが死ぬ呪い。


その現実を突きつけたのが、クロノスです。


クロノスは味方でも敵でもありません。

彼はただ、セラに「世界の仕組み」を見せる存在です。


救わなければ見殺し。

救えば別の犠牲。


その中でセラは、初めて“自分で選ぶ”という行為をしました。

まだ感情は薄く、迷いも形になっていません。

けれど確実に、少年の中で何かが動き始めています。


次章では、セラが人々と関わり、

選択の先にある現実と向き合うことになります。


そして少しずつ――

失われた記憶も動き出します。


次回、第三章。

神の子は、人の世界で何を知るのか。

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