表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界落胤セラ ~ポセイドンに捨てられた俺は、救うたびに誰かを溺れさせる~  作者: マーたん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/58

第一話:

神に生まれた者は、祝福されるとは限らない。


力を持つことは、時に呪いになる。

血が高貴であるほど、その代償は重くなる。


これは――

海の神に否定され、世界から切り捨てられた一人の少年の物語。


救えば、誰かが死ぬ。

選べば、何かを失う。


それでもなお、進むしかなかった。


彼は神の子でありながら、

神に最も愛されなかった存在だからだ。



◆登場人物


セラ


本作の主人公。

ポセイドンの子とされるが、海に拒絶された存在。

他者の痛みに鈍く、感情の起伏が薄い。

しかし内側には“失われた何か”がある。

アルテミスを「妻」と認識しているが、その記憶は曖昧。



ポセイドン


海を支配する神。セラの父とされる存在。

セラを完全に否定し、「海ではない」と断じる。

次男トリートーンを溺愛している。



トリートーン


セラの弟。正統なる海の後継者。

海に愛され、神々からも認められている。

兄であるセラを「失敗作」と見ているが、その感情は単純ではない。



ゼウス


神々の頂点に立つ存在。

セラに強い興味を持ち、どこか歪んだ愛情を向ける。

アルテミスとセラの関係について“真実”を知っている節がある。



アルテミス


孤高の女神。純潔を誓い、誰にも属さない存在。

セラに対して特別な関係を完全に否定する。

だが、その言葉とは裏腹に、どこか説明できない違和感を抱えている。

第一章:神に捨てられた日


 


海は、静かだった。


それは本来あり得ないことだ。

海とは、常に揺らぎ、唸り、命を孕むもの。

だがその日――


海は、一人の存在を拒んでいた。


 


神殿の中央に、少年が立っている。


名はセラ。


ポセイドンの子とされながら、

誰よりも海に愛されない存在。


 


足元に広がる水面は、彼の周囲だけが不自然に割れている。


まるで――

触れることすら拒否するかのように。


 


「……やはり、か」


低く響いた声。


玉座に座すのは、海の支配者――

ポセイドン。


 


その視線は、冷たい。


父が子を見る目ではない。

ただの“異物”を見る目だった。


 


「それは、海ではない」


 


静かな断罪。


その一言で、すべてが決まる。


 


周囲の神々がざわめく。


「やはり落胤か」

「神の理から外れている」

「存在そのものが歪んでいる」


 


セラは何も言わない。


言葉の意味は理解している。

だが――


そこに感情が伴わない。


 


 


「兄上」


 


声がした。


振り返らずともわかる。


 


トリートーン。


 


波が自然に彼の足元へ寄り添う。

海獣たちが頭を垂れる。

潮の流れさえ、彼の呼吸に従っている。


 


完璧な“海の子”。


 


「……哀れだな」


 


その言葉に、憐れみはなかった。


ただの事実確認のように、淡々としている。


 


 


その時――


空が裂けた。


 


雷鳴とともに、黄金の光が降り注ぐ。


 


現れたのは、神々の頂点。


ゼウス。


 


「やめよ、その程度にしておけ」


 


軽い口調。だがその一言で場は凍りつく。


 


ゼウスはゆっくりと歩き、セラの前に立つ。


そして――


 


「……相変わらず、面白いな」


 


笑った。


 


「この子は“海”ではない。だが神だ。

 それも――極めて興味深い形のな」


 


ポセイドンが眉をひそめる。


 


「兄よ、戯言を」


 


「戯言ではない」


ゼウスは軽く肩をすくめる。


 


「それに――」


 


ちらりと視線を横に流す。


 


そこに立っていたのは――


アルテミス。


 


銀の髪、静かな瞳。

誰にも属さぬ孤高の神。


 


ゼウスは、笑みを深めた。


 


「お前の“妻”でもあるのだろう?」


 


――空気が止まる。


 


セラは、ゆっくりと視線を向けた。


 


アルテミス。


 


その名を、知っている気がした。


 


だが――


思い出せない。


 


胸の奥に、何かが引っかかる。

けれど形にならない。


 


 


アルテミスは、ただ一言だけ言った。


 


「……知らないわ」


 


冷たく。


完全に。


 


否定した。


 


 


沈黙。


 


だがゼウスは笑っている。


 


「忘れたのか、それとも――」


 


そこで言葉を止める。


 


「いや、いい。今はまだな」


 


 


セラは何も言わない。


 


ただ一つ、確かに感じていた。


 


――何かを、失っている。


 


 


ポセイドンが立ち上がる。


 


「もうよい」


 


その声には、決定が宿っていた。


 


「その存在は不要だ」


 


 


海がうねる。


 


だがその波は、セラには触れない。


 


拒絶しながら、押し流そうとする。


 


 


「異界へ落とす」


 


 


宣告。


 


それは追放であり、試練であり――


神からの完全な否定。


 


 


ゼウスが静かに呟く。


 


「生き延びてみせろ、セラ」


 


「それができたなら――」


 


その続きを、誰も聞くことはなかった。


 


 


光が弾ける。


 


重力が消える。


 


 


落ちる。


 


落ちていく。


 


 


神の座から。

家族から。

存在の意味から。


 


 


その瞬間、セラの脳裏に――


一瞬だけ、映像がよぎる。


 


月明かりの森。


 


誰かの背中。


 


そして――


 


「……あなたは」


 


 


届かない声。


 


消える記憶。


 


 


落ちる。


 


どこまでも。


 


 


――異世界へ。


 


 


その日、神の子は捨てられた。

第一話、ここまで読んでいただきありがとうございます。


この物語は「神の子の成長」ではありません。

むしろ――


“何かを失い続けることでしか前に進めない存在”の物語です。


セラはまだ、自分が何を失ったのかすら理解していません。

アルテミスとの関係、ゼウスの真意、そしてポセイドンの拒絶。


すべてが少しずつ繋がり、

やがて取り返しのつかない選択へと向かっていきます。


次回は――

異世界での目覚めと、最初の“救い”の代償。


救ったはずなのに、何かが死ぬ。

その現実を、セラは初めて知ることになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ