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異世界落胤セラ ~ポセイドンに捨てられた俺は、救うたびに誰かを溺れさせる~  作者: マーたん


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第十五話:

登場人物


セラ


本作の主人公。

神々の思惑によって生まれた特異な存在であり、前世は三神凌牙。

孤独を抱えながら旅を続ける中、少しずつ誰かを守る覚悟を固めている。

第十五章では次なる戦いの地・鴉天狗の国へ向かう決意をする。



カイオス


リナの血を元に造られた少年。

神の後継者として育てられたが、セラとの旅で初めて子どもらしい感情を取り戻しつつある。

セラを父として慕い、共に新たな国へ向かう。

不安を抱えながらも、少しずつ強さを学んでいる。



ネリス


海神殿に仕えていた女性。

かつてトリートーンに想われていたが、ポセイドンの策略によって兄弟対立の道具にされた。

第十五章でセラの前に現れ、真実を告げる重要人物。

穏やかで理知的だが、長年罪悪感を抱えて生きてきた。



トリートーン


ポセイドンの実子であり、セラの弟。

兄への嫉妬心を糧に生きてきたが、その原因が父の陰謀だったと知り精神的に崩れ始める。

第十五章では初めて涙を流し、自らの存在意義に苦しむ。



ポセイドン


海の王。

秩序と支配を重んじる冷酷な神。

息子たちの感情すら操り、争わせてきた黒幕。

鴉天狗の国の神器「黒羽の鏡」を狙い、新たな侵攻を進めている。



リナ


ルナ村の少女。

セラにとって大切な存在であり、カイオスにとっては血の繋がる母。

この章では直接登場しないが、セラとカイオスの旅の理由の一つとして強く影響している。



アルテミス


月と狩猟を司る女神。

転生者・花下翼の魂を持つ。

この章では姿を見せないが、セラの選択を遠くから見守っている存在。



鴉天狗の姫(未登場)


次章から登場予定の空の国の王族。

誇り高く、翼ある民を率いる存在とされる。

海の侵略にどう立ち向かうか注目される人物。

第十五章:海王子の涙


―黒翼の国へ―


 


朝霧の山道。


 


セラとカイオスは、小さな荷車を引きながら峠を越えていた。


 


「疲れた……父さん」


 


「まだ父さんは保留だ」


 


「じゃあ仮父さん」


 


「それも微妙だ」


 


 


カイオスは笑った。


 


少し前まで怯えていた少年が、こうして笑うだけでセラの胸は妙に落ち着いた。


 


 


「次の町までどれくらい?」


 


「半日だ」


 


「遠い……」


 


「文句を言う元気はあるな」


 


 


その時。


 


風が止まった。


 


 


山道の先、霧の中に一人の女が立っていた。


 


青い髪。

白い衣。

海を思わせる静かな瞳。


 


 


セラの足が止まる。


 


 


「……誰だ」


 


 


女は寂しげに微笑んだ。


 


 


「久しぶりですね、セラ様」


 


 


カイオスがセラの後ろに隠れる。


 


 


「この匂い……海のやつだ」


 


 


女は深く頭を下げた。


 


 


「私はネリス」


 


ネリス


 


「かつて、海の神殿であなたに仕えていました」


 


 


セラの記憶が揺れる。


 


遠い昔。

神殿の回廊。

泣いていた少女。

肩にかけた上着。


 


 


「……お前か」


 


 


ネリスは頷いた。


 


 


「はい」


 


「そして……トリートーン に想われていた女でもあります」


 


 


カイオスが小声で言う。


 


「修羅場?」


 


「黙ってろ」


 


 


ネリスの瞳に涙が浮かぶ。


 


 


「私はあなたを選んだことなど、一度もありません」


 


「ですが、あなたを憎んでいると彼に言わされました」


 


「すべては ポセイドン の命令でした」


 


 


セラは目を閉じる。


 


まただ。


 


誰かの感情すら、神は盤上の駒にする。


 


 


「なぜ今さら来た」


 


 


「トリートーン様が……壊れかけています」


 


 


 


海の神殿。


 


玉座の間で、トリートーンは一人膝をついていた。


 


槍は折れ、髪は乱れ、目の下には深い影。


 


 


「兄上を憎めば……よかった」


 


 


それだけで世界は単純だった。


 


奪われた。

負けた。

だから奪い返す。


 


その怒りで立てた。


 


だが真実を知った今、足元が崩れていく。


 


 


「私は……何者だ」


 


 


頬を涙が伝う。


 


海王子と呼ばれた男の、初めての涙だった。


 


 


その頃、山道。


 


ネリスは続ける。


 


 


「彼は軍を集めています」


 


「次に狙うのは、東方の空の国――鴉天狗の国」


 


 


セラが眉をひそめる。


 


 


「なぜそこだ」


 


 


「あなたが向かうと読んでいるからです」


 


「そして、その国の神器“黒羽の鏡”を奪えば、空すら海の支配下に置ける」


 


 


カイオスが震える。


 


「また戦争……?」


 


 


セラは少年の肩に手を置く。


 


 


「起こさせない」


 


 


ネリスが顔を上げる。


 


 


「行くのですね」


 


 


「借りは返す」


 


 


「誰への?」


 


 


セラは短く答えた。


 


 


「泣いてる弟と、迷惑な世界の両方だ」


 


 


ネリスは思わず笑った。


 


 


「昔より優しくなりましたね」


 


 


「昔を知らん」


 


 


「そうでした」


 


 


三人は山道を進む。


 


その先に見えるのは、黒い峰々。


 


空を裂くような断崖の上に築かれた城塞国家。


 


翼ある者たちの国。


 


 


鴉天狗の国。


 


そこではすでに、海の影が空へ伸び始めていた。

―小鴉、節を語る―


さてさて皆々様、お耳を拝借。


海の王子は涙をこぼし、

山道歩くは流れ者。

その背に続くは小さき子、

父と呼びたき願い胸。


いやはや、人の縁とは妙なもの。


血の繋がりより情けが勝り、

神の威光より飯の湯気。

泣く子一人に差し出す手こそ、

真の強さでございましょう。


されど一方、海の御殿じゃ大騒ぎ。


兄を憎めば生きられた。

されどその憎しみさえ、父の仕掛けた芝居と知れば、

王子の胸も砕けよう。


これぞ因果。

これぞ親子の哀れ。


さて、ここで名乗りを上げるは――


小鴉こがらす


鴉天狗の国にて羽ばたく、

口は達者で足は速い、

噂話を飯の種にする小さき案内人。


黒羽ひらりと空を舞い、

「来た来た来たぞ、厄介事!」と笑う娘か童子か、

そこは次のお楽しみ。


次なる舞台は断崖絶壁、

空にそびえる黒翼の都。


海は空を呑めるのか。

空は海を裂けるのか。

そしてセラは弟を救えるのか。


続く一席、

第十六章:黒翼の都


どうぞご贔屓に。

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