第87話 犬・猿・鳥②
お久しぶりです
凄く投稿の間隔があいてしまいましたが、少しずつ投稿していきますので、どうかこれからもよろしくお願いできればと思います!
「きび・・・だんご?」
「『そ。 きびだんご」』
猿は意味深な笑みを浮かべながら、正樹に手を差し伸べる。
まるでさっさと例の物を出せて言わんばかりの威圧感を発揮させながら。
きびだんごってあれ?
桃太郎が三匹の御供に与えたっていう?
え? まって?
つまり僕の目の前にいる三匹って、そういう?
「『いい加減にしなさい。 このバカ猿」』
「『ウッキーッ!? オイこら雉ッ! うなじを突くなッ! お腹が痛くなるだろうッ?!」』
「『犬様。 申し訳ありませんが少しそのバカ猿を下がらせてくださいな」』
「『ウキーッ! またバカって言ったな?! よーしわかった! お前がそういうならオイラにだって考えが―――あ、はいすみませんでした・・・」』
雉に突っ掛かる猿を背後から首筋を噛み咥えズルズルと犬が下がらせた。
すると今度は雉が正樹に向かって深々と頭を下げる。
「『申し訳ありません。 あの猿の言った事は気にしないでください」』
「う、うん・・。 それじゃあ、そろそろ教えてくれないか? 僕が探している人のいる場所を知ってる事」
ここまで言葉を話す動物3匹に圧倒されて会話が前に進まなかったが、正樹はすでにここからかけ離れたい衝動に駆られていた。
恋人に安否を少しでも早く確認したいからだ。
目の前で守る事すらできずに敵に攻撃を受けて姿が見えなくなった。
それで心配しない彼氏などいないだろう。
「『はい、勿論でございます。 それではこちらにどうぞ。 すでに準備はできております」』
「準備?」
「『はい。 貴方様が探されている御方は今、こことは別の時空、裏鬼門にいらっしゃいます」』
◆ ◇ ◆ ◇
「きもん? ピースちゃん、きもんって何?」
紅く染まった夜の空にぽっかりと穴が空いた場所を、まるで睨むような視線を向けながら、穴の事をそう呼んだピースにアンナは問う。
「あれは、鬼門。 私の母国を言葉に表すと鬼の門と書く文字通りの門の事です」
「鬼ってあれの事だよな。 俺が今ぶっ倒した」
穴が開いた空を警戒しながら今も倒れ込んでいる巨大な生物を剣で差すグレンにピースは小さく頷く。
「本来、鬼という生物にあのような実態は存在しないんです」
「実態が存在しない? じゃあ、あれはなんだ? 頭に角みたいなのが生えて巨人くらいの巨体がある生物に実態がないとか笑い話にもならないぞ?」
「はい。 でも鬼事態、本当はあれほど大きいものではないんです。 せいぜい人間と同等か、稀に2メートル近くなる程度。 あんな国を簡単に破壊出来る大きさではないんです」
「まてまて。 えっと、ピースちゃん? っていったか? じゃあ鬼ってのはなんなんだ? あの空に穴が空いた空間と何が関係してるんだ?」
実態が存在しない。
本来の姿ではない。
グレンはピースが話す鬼と、鬼門と呼ばれる穴の話がうまくまとめる事が出来ずに直球に聞く。
「鬼とは人の感情で生み出された自然エネルギーの一種。 悪の概念の思念体です。 そして鬼門とは、世界を繋ぐ異界の出入り口。 あの世とこの世を結ぶ神門の1つです」
◇ ◆ ◇ ◆
「『っていうが鬼門と呼ばれるものだ。 理解したか? ニンゲン」』
犬の背中で胡坐をかきながらドヤ顔で説明している猿。
正樹はあれから3匹のいう裏鬼門と呼ばれる場所に向かう為、鬼門と裏鬼門、そして鬼と呼ばれる存在の事を聞きながら歩いていた。
「つまり、鬼門はあの世とこの世を行き来する出入り口で、鬼っていうのは悪の概念、人の妬みとか憎しみとかで作り出された感情の集合体・・でいいのかな?」
「『そうそう! よぉーく理解したじゃねぇか! 流石はオイラが見込んだだけはあるな!」』
バシバシと背中を叩きながら機嫌よく笑う猿だが、その姿は居酒屋とかで部下に嫌な絡み方をする酔っ払いそのものだ。
「『サルはこの内容だけを100年かけても覚えきれなかったですものね」』
「『バッ?! そ、そそそそそんな事ねぇよ? 面白い事いうなーキジはぁ。 ウキキ!」』
「つまり猿は・・」
「『はい。 正真正銘のバカです」』
「『ウッキャッ?!?!」』
雉の発言に露骨に傷ついた表情を見せる猿は、犬のモフモフそうな毛皮に顔をうずめてシクシクと泣いた。
「『さて、それでは続きはサルに変わって私が御説明しましょう。 貴方様が探している御方が何処にいるのか。 そして、今向かっている鬼門とは別の出入り口。 裏鬼門の事を」』




