ハードモードも1発クリアしたんだが
相変わらず震えながらも俺は口を開く
「み、美緒…?」
目の前にいる妹"らしき"者に問いかける
美緒は何を考えているか分からない虚ろな瞳で俺を見つめたまま黙っている。
美緒と喧嘩をしたり笑いあったりした日々が走馬灯のように脳裏を駆け巡る。
思考が止まる、俺はどうすればいい?
一瞬の間に色々な感情がせめぎ合う
『…ト…ット…』
そんな時、確かに美緒の声である何かが俺の中に響く。
今がテレパシーの能力を使う時…?
そう思った瞬間、背後に立っている彼女が動く気配がしたがそれさえも気にならなくなる程に俺は心を落ち着かせて神経を研ぎ澄ます
『…マリオネット』
確かに俺の中にその言葉が響く。
あやつり人形…?
美緒の目から腕に視線を落とし俺はハッとする
確かに美緒の腕からは細い線が一本伸びていた
誰が何の為に操っているかなんてどうでもよく、俺はどうすれば美緒を元に戻せるかを必死に回らない頭を使って考え一つの結論に至った。
…包丁だ
さっき美緒が外した包丁を思い出し振り返る
(ダメだ…遠い…!)
包丁から俺の体は2m程離れており、とても手を伸ばしても届かない距離だった
門の前に立つ彼女もどうする事も出来ないかの様に困った顔をしている。
(どうすればいいんだよ…)
全員がまるであやつり人形の線を張られているかの様に1歩も身動きが取れない状況下で俺は一か八かの賭けに出る事にした。
俺は改めて包丁に視線を戻し、気を集め、念じる_
(頼む動いてくれ…動いて…美緒の線を…!)
すると包丁はフッと空中に浮き、美緒の線めがけて一直線に飛んで行く
人間の本能的なのか操られてなのか避けようとする美緒に
『動くな』
先程、背後の彼女に言われた事を同じ様にテレパシーを使って怒鳴る。
一瞬美緒の動きが止まり、包丁の刃が線を切る
右腕・左腕・右脚・左腕_そして最後の首元の線を切った瞬間、美緒は緊張の糸を解いたかの様に力が抜けてへたり込んだ。
「にぃちゃ…お兄ちゃん…!」
数秒の沈黙が流れた後
涙を目に溜めた妹が俺に抱きついてくる
背後の彼女が門を開け、俺に駆け寄ってくる
何が起こったのか未だに理解出来ない俺はとりあえず美緒の頭を撫でながら彼女の顔を見上げる
彼女は何故か空と睨み合いをしていた
何かあるのか?と思い俺も視線を移動する
_が、見えない。
俺にはいつもと変わらない青空にしか見えなかった
「…とりあえず、家で話しませんか?」
高校はもう遅刻決定の時間になっているはずなので俺は諦め、声をかける
すると彼女からは思いもよらぬ一言が帰ってきた。
「そうですね。ですがその前に、
貴方のハート…射止めさせてもらいます」




