貴方は最終兵器(5)
『七罪』、この世界に蔓延る悪魔共の中でも特に強力な力を持つと言われる七体の悪魔達の総称である。
奴等はそれぞれ、人間の犯す七つの大罪の名を冠しており、それがその総称の由来となっている。
そして、その罪の名を持つ悪魔共を倒す事こそが、俺の兵器としての完成の鍵となるのだ。
……というのが、センカから後に聞いた話である。
「聖剣『デモンブレイカー』……!!」
俺は右手に聖剣を呼び出し、目の前の男を睨みながら構えた。
そして、その男が聖剣と俺の顔を交互に見て、何か納得した様に首を小さく縦に振った。
「うんうん……成る程、君がルシアが言っていた例の兵器か。初めまして、僕は七罪の『暴食』のヨーゼフ、以後お見知りおきを」
そう言って、ヨーゼフと名乗った男がお辞儀をしてみせた。
「……奴はああ言ってるが、そうなのか?」
俺が隣のセンカに耳打ちすると、彼女は頷いた。
「……ええ、間違い無いわ。七罪の中でも奴は顔と名前が割れてる一体よ。私も資料で見た事がある」
そして、ヨーゼフが顔を上げると、こう続けた。
「『悪魔狩り』が出たと聞いてちょっと『掃除』をしに来てたんだけど、まさかここで君と遭遇するとはね……ここは一旦、退くしかないか」
「……どういう事だ?」
「ルシアにまだ君とは戦うなって言われてるんだ。だから残念ながら、今日の所は帰らせて貰うよ」
「……それで素直に逃がすと思ってるのか?」
俺はそれだけ言うと、地面を蹴ってヨーゼフに向かって突っ込んでいき、そのまま聖剣を振り下ろした。
獣の嘶きの如く、唸り声を上げながら牙を奔らせる刀身がヨーゼフの頭上に振り下ろされる。
しかし、
「!!」
聖剣は、見えない『何か』に阻まれて、ヨーゼフの頭上で止められた。刀身に奔る牙が見えない何かにぶつかり、空中で火花を散らせている。
「へぇ、凄い剣だね。直接喰らったらやばそうだ。それに……」
すると、俺は真横から何かが来るのを『察知』し、後ろに飛び退いた。
俺の目の前に見えない何かが食らいつき、地面ごと先程まで俺が立っていた空間を削り取っていた。
「君、『視えてる』ね。流石は僕らを殺す為に造られただけある」
「ちっ……!!」
「ホントは戦ってみたいんだけど、これ以上はルシアに怒られそうだから止めとくよ……君も足手纏いを連れてじゃ、戦いづらいだろ?」
「むっ……!!」
それを聞いたセンカが、カチンときた様に眉を顰めた。
センカには申し訳無いが、奴の言う事には一理ある。確かに守りながら戦うには分が悪い相手の様だ。
先程一撃を入れた時、それだけの力を奴から感じていた。
「それじゃあ、バイバイ」
そうしてヨーゼフは、背中から翼を生やすと何処かへと飛んでいってしまった。
「貴方、空は!!?」
「……流石に飛べん」
「そう……ちっ」
センカは隣で舌打ちをした。俺は聖剣をしまうと、馬車の方に視線を向けた。
奴の攻撃で馬車は半壊。御者は両手だけ残し消えており、良く見たら馬も半身削り取られた様な痕を残して横たわっていた。
「なぁセンカ……その本部とやらは、あとどれくらいあるんだ?」
「……大分あるわ」
「……そうか、長いハイキングになりそうだな」
そう言って俺は、深い溜息をついた。




