貴方は最終兵器(2)
「これは……悪魔!!?」
私がエントランスに辿り着くと、そこには一体の巨大な悪魔がいた。
民家一棟分位はあるであろう巨躯、人間等容易く捻じ切れそうな程の巨大な四肢、涎の滴っている歪な牙の生えそろった口、血走った眼光、私が今まで見たどの悪魔よりも強いと、一瞬で直感した。
その巨体で屋敷の扉を壁毎突き破ってきた様で、屋敷の入り口は崩落して瓦礫に埋まっていた。
「ニンゲン……ニオイ……!!」
悪魔がそう呟くと、私の方に視線を向けてきた。
「くっ……!!」
私は腰の刀を抜刀し、身構えた。
この刀は、我々悪魔対策本部の構成員に支給される『対悪魔兵装』であり、今回の任務の際に私も支給されていた。
刀の名は『祓刀』。悪魔の身体に害のある合金で造られたこの刀は、斬った悪魔に苦痛を齎し死に至らしめる。道中の悪魔は全て、この刀で屠ってきた。
「はあっ!!!!」
そして、私はこの悪魔にも同様に斬滅しようと、悪魔に向かって飛び込んで刀を振るった。しかし、
「なっ……!!?」
悪魔の身体に、刃は通らなかった。まるで硬い鉄の塊にぶつけた様な感覚で、刃は全く入っていかない。
「ガアッ!!!」
「きゃあっ!!?」
悪魔が虫でも払う様に振り回した右腕で、私は吹っ飛ばされた。その衝撃で、祓刀も折られてしまった。
「がはっ……!!!」
背中を壁に打ち付けられ、その衝撃が私の身体を駆け巡る。あまりの痛みに、意識が一瞬飛びそうになった。
「ニンゲン……ニオウ……タベル……」
悪魔が近付いてくる。しかし、身体が動かない。
(やばいやばいやばいやばい!!!!)
このままでは死ぬ。私の脳内に警鐘の如く死のイメージが幾度も打ち付けられる。
そして、悪魔が目の前に辿り着き、その手を私に伸ばしてきた。その時だった。
「ゴアッ!!?」
悪魔が突然、左の方へ吹っ飛んでいった。
勢い良くその巨躯は壁に叩きつけられ、崩落する瓦礫の中へと埋まってしまった。
「……おい、どういう状況だ? これ」
声の方に視線を向ける。そこには、先程の悪魔を『殴り飛ばした』少年が立っていた。
「大丈夫か? アンタ、喋れそうか?」
年齢は十八位であろうか、簡素な白い服に裸足の少年が、私に問うてきた。私は頷きながら、こう言った。
「ありがとう……貴方、ひょっとしてあの部屋のカプセルの中から……?」
「カプセル……? あの鉄の箱の事か? ああ、ついさっき目が覚めて、この屋敷の中を見て回ってた。済まないが、状況を説明して欲しいんだが……」
私は確信した。私の目の前のこの少年こそ、最終兵器クリミナル・ワン、人類の最後の希望なのだと。




