蘇った街(2)
突然姿を消したセンカを探し、廃墟の街中を駆け回る。しかし、その何処にもセンカの姿は無かった。
「くそっ!! これってやっぱ悪魔の……!!」
俺が眠ろうとした瞬間、周囲で何か良くない物の気配を感じていた。恐らくそれがセンカを連れ去ったのだろう。
しかし、それについて一つ疑問に思う点があった。
(どうして俺は連れ去られ無かったんだ? 何でセンカだけ……?)
「あれぇ? 何でアンタまだ居るの?」
突然、何処からか声が聞こえた。
「誰だ!!」
俺は身構えながら声を上げた。そして、右手に聖剣を呼び出した。
「ちょっと……何でアンタは『飲まれなかった』のよ?」
すると、今度は俺の頭上から声が聞こえた。俺は声の方に視線を向ける。
そこには、声の主であろう女の姿があり、俺の頭上でふよふよと浮いていた。
一見、人間の女の様に見える容姿だが、その血の色の様な皮膚や真っ黒な強膜の双眸、そして何よりその邪悪な気配、明らかに人間のそれでは無かった。
俺は確信した、コイツが元凶の悪魔であると。
「おい化け物、センカは何処へやった? お前なんだろ?」
「アンタのあの連れの女? それならもう、ここよ?」
女の悪魔はそう言って、自身の腹を擦って見せた。
「!! そうか……じゃあ掻っ捌いて確かめてやる!!」
俺は言い放つと、聖剣を女の悪魔目掛け振りかぶった。そして、その刀身は『伸びた』。
聖剣『デモンブレイカー』は、俺の力によって作り出された剣で、その刀身はある程度自在に伸ばす事が出来るのだ。
今あの女悪魔がいる場所までの距離なら、余裕でカバー出来る。
「えっ!? ちょっ――」
思わぬ射程の長さを見せた聖剣が迫り、女悪魔の表情には驚愕が見て取れる。しかし、慌てながらも辛うじて聖剣から身を躱してみせた。
「あっぶな……アンタの方が余っ程化け物じゃない!!」
女悪魔は忌々し気に吐き捨てる。すると、女悪魔の姿が突然消えた。
「待て!!」
「あの女はもう戻らないよ!! 分かったら、とっととココから消えな!!」
女悪魔はそれだけ言うと、その気配も消えてしまった。どうやら取り逃がしてしまった様だ。
「……くそっ!!」
センカを助けないと。しかし、どうして良いのか俺には分からなかった。
(一度引き返して地の砦に戻って……いや、俺の話を取り合ってくれるとは思えない、況してや嫌われてるセンカの救援なんて……)
そんな事を考えている、その時だった。
(!!? な、何だ……!!?)
突然、激しい頭痛に苛まれ、俺は頭を抱えながら膝をついてしまった。
俺の頭の中に、何かが流れ込んでくる。まるで熱湯でも注ぎ込まれた様に頭の中が熱く、痛い。
「ぐっ……ぐああああああっ!!!!」
痛みに悶える俺は、誰も居ない廃墟の真ん中で、咆哮した。
暫し呆けていた私は我に返ると、いつの間にか来ていた街の中の散策を始めた。
(この街は……ひょっとして……)
私は適当な通行人に声を掛けて、この街はどこかを質問してみた。
「ここ? ここはラウザの街だけど?」
「そう……ありがとう」
私は答えてくれた通行人に礼を告げると、その通行人は雑踏の中へ去って行った。
(やっぱりここは、ラウザの街……でも、どういう事?)
日中、現地に到着した時には廃墟だったというのに、それが今は嘗ての綺麗な街並が、何事も無かったかの様に存在していた。
というか、夜になって寝ていた筈なのに、いつの間にか真っ昼間の様に明るくなっている。日の高さから察するに、恐らく正午かそれに近い時間帯の様だ。
その事から考えられるのは、
(寝てる間に、悪魔の能力か何かで連れて来られたって事……?)
分からない事が尽きないが、ここに居ないハジメが心配だ。というか、丸腰の私一人という状況が何より不味い。まずはハジメと合流するのが先決だろう。
そして、そうしてハジメを捜しに行こうとした、その時だった。
「あ!! 待って下さーい!!」
後ろから、誰かに声を掛けられた。聞き覚えのある声だ。
私は声の方へ振り向く。すると、
「マリ!!?」
「やっぱり!! センカさんだった!!」
行方不明になっていた構成員の少女、マリの姿がそこにあった。




