悪魔と狩る者達(5)
テウレニア領、ラウザの街。
この街は過去に悪魔達により滅ぼされた街の一つで、今は無人のゴーストタウンとなっていた。
しかしこの夜、この街に異変が起きていた。
それは、街が『戻っていた』のだ。
悪魔によって滅ぼされる前の状態の、嘗てのラウザの街がそこにあった。
勿論、この街が復興したという話は聞いていない。いつの間にか、悪魔に滅ぼされた筈の街が戻っていたのだった。
それを発見した構成員は、何かあると思って街の中を調査しに行くと通信を残し、街に入ったという。
そしてそれ以降、その構成員から通信が来る事は無かった。
夜が明けると、俺はセンカから昨夜異変が起きた街についての話を聞かされた。そして、こう答えた。
「通信って……何だ?」
「は?」
それを聞いたセンカは、素っ頓狂な声を口から漏らした。
「こいつ、記憶が無いんだろ? ひょっとして、無線とか知らないんじゃないか?」
クロムは俺の事情を察してくれた様で、センカにそう伝えてくれた。
「えっ? 記憶喪失って、そういう物の使い方とかも忘れるの?」
「知らんけど」
「はぁ……仕方ないわね、はいこれ」
センカはそう言って、何か黒色をした四角い物を俺に手渡してきて、俺はそれを受け取った。
「クロム」
「はいはい」
クロムも同じ様な物を取り出すと、その四角い物体の表面にある出っ張りを何度か押した。すると、
「うおっ!!?」
俺の手の中の物体からけたたましい音が鳴った。
俺はどうして良いか分からず、センカに視線を向けて固まった。
「そこの赤いボタンを押して」
センカがそう言うと、俺はその指示通り赤い出っ張りを押して見せた。
「あーもしもし、クロムだ」
「!!? 四角いのからクロムの声が聞こえた!!」
「……初めて火を見た猿って、こんな感じだったんだろうな」
「ちょっと面白いかも……」
センカとクロムが苦笑をしてみせる。そして、未だ困惑している俺にセンカは続けて説明してくれた。
「それは私達組織の人間の間で使われてる通信端末よ、これで遠くの人間でもすぐに話し合う事が出来るわ。さっき言ってた通信というのは、そういう端末を使って連絡を取り合う事なの」
「へぇ……便利だなぁ……」
俺はセンカから通信についての説明を受け、素直にその利便性について感心していた。
「そして昨夜、さっき話した滅びた筈の街に入ったという構成員からその通信が来ない。こっちから掛けても繋がらない……これはきっと、何かあったに違いないわ」
「悪魔絡みの事件かもって事か……今からその街に向かうのか?」
俺が尋ねると、センカは頷き、こう続けた。
「既にニコに頼んで転送の準備はして貰ってるわ、付いてきてハジメ」
センカは室内を出ると、俺もそれに続いた。しかし、部屋を出る前に振り返り、クロムの方に向いた。
「ありがとうクロム、世話になった。行ってくる」
「おう、気を付けろよお前等」
俺は礼を告げた後、センカの後に続いて転送装置の間に到着した。
既にニコを含めた三人の術士達がおり、転送の準備を進めている様だった
「あ、センカさん!! ハジメ君!! お待ちしてましたよ!!」
「ありがとうねニコ、それじゃあお願いね」
「わかりました。それでは二人共、装置の上に」
ニコがそう言うと、俺とセンカは部屋中央の台座の上に乗ってみせた。
「ラウザの街に一番近い装置の場所に跳ぶ様に設定しました。それではセンカさん、ハジメ君、お気を付けて」
そして装置が起動し、俺達は光に包まれて跳んだ。
目指すは、ラウザの街へ。




