田吉にも柚木にも悩みの1つぐらいある②
田吉のおっさんと昼食を取りながら、昨晩のことをお互いに振り返っていた。田井島は柚木の衝撃的な発言のことを伝える。当然のことながら、田吉はそのことを既に知っており、顔色一つ変えずに田井島の話を聞いている。この日は珍しくおっさんは大人しかった。
「そうか、結鶴ちゃん、そのことを話したんだな…。お前に…」
「何て言うか…。もう、言葉にできないぐらいの強い衝撃がありましたよ。あっ、ところで、田吉さんがお持ち帰りしたあの子はどうなりましたか?」
柚木の話をしても、気が重くなるばかりだ。田井島は話題を変えるために、昨晩のお持ち帰りの話を出してみる。
「奈美ちゃんとは、あの後、二人でバーへ行ったんだ。それから二人で飲んだ。そこまでは良かったんだけどな…。その後、逃げられてしまったよ。やっぱり、バツイチで九歳の息子がいると言うのが、二五歳の小娘には重過ぎたみたい…」
なんだ…。お持ち帰りできなかったのか…。昨晩の別れ際だけ見ると、いかにもお持ち帰り成功と思ってしまうが…。その途中で何があったかなんて、そこにいた二人にしか分からないことだ。
案外、他人の幸せの瞬間を勝手に切り取っているだけかもしれない。周りはこんなに幸せなのに、なんで自分はこんなに不幸なんだと思い込んでいるだけかもしれない。
そうやって、勝手に自分を不幸な存在に仕立て上げては、見苦しい不幸アピールをしている。不幸の虚像から抜け出すには、自らの視野を広げ、独善的な思考に陥らないように気をつけるしかない。
「田吉さん、これから息子と会うと言うのに、私が付いて行っても大丈夫なんですか?」
ようやく、昼食を食べ終わり、田吉のおっさんに声をかける。田井島はさっきから田吉の様子がおかしい事に気付いていた。どうしたんだろうか…。
あの田吉が合コンでお持ち帰り失敗するぐらいで、こんなにへこむ訳がない。何か別の理由があるはずだ。さりげ無く、探りを入れてみる。もしかして、子どもの事で何かあったか?
「いいから…誘ったんだ。ダメだったら、田井島をわざわざ誘わないから…。一人で行くのが心細いんだよ」
「もしかして、子どものことで何かもめていませんか?」




