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30代からの婚活デビュー  作者: あまやま 想
第13章 田吉にも柚木にも悩みの1つぐらいある
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田吉にも柚木にも悩みの1つぐらいある①

 日曜日の朝、田吉のおっさんから急に電話で呼び出された。何事か…と思ったら、今日は息子の運動会なので、一緒に見に行かないか…とのこと。


 そんなの、昨晩にお持ち帰りした中江奈美と一緒に行ったらいいのにと言ったら、前妻がいる前でそんなことができる訳ないだろう…と言われた。確かにそうだと思い、特に予定もなかったので、おっさんに付き合うことにする。


 それにしても、田吉と柚木に出会ってから、あらゆることが劇的に変化した。昨晩は柚木と帰る途中、スタバに寄ったな…。そして、柚木から衝撃的なことを聞いた。


『私ね、二五の時に卵巣腫瘍ができて、左の卵巣を摘出しているの。その上、右の卵巣も機能不全だから、子どもを産みたくても産めないのよ…。だから、他の誰よりも絵に全てを捧げてきた。そして、誰よりも子どもができないことを憎んでいる。もし、そうでなかったら、きっと離婚すること無く、今頃は家庭に納まって、楽しく幸せに子育てしていただろうね…』


 確か、以前、絵を描くのに子どもが邪魔だからと、とんでもない発言をしていたはずだが…。実はそうではなかったらしい。それにしても、どうしてそんなにぶっ飛んだ話ばかり出て来るのだろうか。そうなると、以前に夫と別れた理由と言うのも…。


『前、結婚したときも、前夫にはきっと子どもができないよ…と伝えたら、それでもいいよ…と言ってくれたのに…。だから、結婚したんだよ。それなのに…。やっぱり、結婚したら子どもが欲しくなるんだろうね…。残っている卵巣から卵子を取り出して、人工授精もしたけど、やっぱり機能不全だからうまくいか無くて…。そんなことを繰り返しているうちに、つらくなってね…。別れてしまったの…』


 それにしても、何で初めから正直に話してくれなかったのか…。まあ、前回はまだ初対面だったから、そこまで踏み込んだことが言えなかったのか…。前回は肝心なことをはぐらかしていたせいか、なんかつかみ所のない話だった。しかし、今回は全て本当の話と言うこともあり、心に深く響いてくる。


 なるほど。夫を失い、子どもができない寂しさを絵の世界で埋めてきたのか…。それこそ、こどもができないことを逆手にとったえぐいこともやって、女性ながらに准教授の座をつかみ取ったとのこと。


 田井島の太平の眠りが一発で覚めるような話ばかりであった。花上の死をきっかけに大海原に飛び出したら、田吉と柚木からとんでもない世界を見せつけられて、全く息つく暇もない。

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