田井島、30にして婚活に立つ④
二ゲーム目が終わった後、それぞれのグループごとに軽食パーティーの会場へと向かう。その時、田吉からバーンと背中を叩かれた。全く、背中に紅葉まんじゅうができるではないか…。
「痛いじゃないですか?」
「何、一人で寂しくしているの? せっかく、参加料払って参加しているんだから、楽しまないと損だよ…」
「まあ、お手柔らかにお願いします」
「もう、かしこまっちゃって…。このおっさんみたいに、はじけたらいいのよ」
厚化粧一号がそう言うと、厚化粧二号がうんうんと頷いた。まあ、何と言うか…つかみ所が無くて、よく分からない。
「こう言う子、いるのよね…。でも、今からお酒が入るから、大丈夫よ。酒が入れば、少しははじけるんじゃない?」
厚化粧二号が言った。貴方達は本当に白衣の天使なんですか? まあ、看護士も仕事から離れたら、誰もがこんな感じだとは思いたくないが…。
ふと、階段下を見ると、ピンピールをはいた小柄の女性がこけそうになっていた。あっ、危ない…。そう思った瞬間、近くにいた男性が手を捕まえ、窮地を救っていた。
「おっ、あちらさんは今夜、素敵なドラマがありそうだな…。あの男性、うまいことやりおったな!」
なんだ、おっさんも見てたのかよ…。それにしても、その発想、ちょっと安直過ぎないか? ああ、トレンディードラマ全盛期の世代ってこんな発想しかできないのかね…。
「何があったの?」
「ちょっと、教えなさいよ!」
厚化粧一号、二号が続けて話す。えっと…、どっちが一号で、どっちが二号だったっけ? どっちも同じように厚めに化粧しているから、同じように見えて仕方ない。
「今、前にいる小柄の女性がバランスを崩して、こけそうになった。そしたら、近くにいた男性が手を捕まえて助けてあげていたんだよ。素敵だろう?」
「それは素敵ね。私も、わざと転んでみようかしら…」
「あけみ、誰も助けてくれないから、止めときなさい」
「もう、おうかは一言多いのよ。いっそのこと、突き落としてやろうか?」
「まあまあ…。もしもの時は二人とも俺が助けるから、つまらんケンカは止めなさい」
「さすが〜。大人の男は言うことが違うね」
このおっさん、マジかよ。どう考えても、二人まとめて突き落としたい衝動に駆られると思うけど…。しかも、ニコニコ笑顔で。まあ、この場限りの付き合いと思えば、このような根拠のないリップサービスも平気でできるようだ。
いや、田井島にはそんな割り切った面倒なことはできない。何でプライベートで心にもないことをしないといけない?




