選考
今日は軍界にとって特別な日だ。
中央広場には初々しい"小さな軍人"達が群れをなし初行式の開始を待ちわびていた。
1年に一度、軍界は国の少年少女達に向けて布告を出す。人員募集というやつだ。要項はこのようなものであった。
▪15~20までの健康な男女(眼鏡の者可)
▪北語と南語のどちらかを日常会話並に話せる者
▪体力又は頭脳がある者(課題あり)
募集定員は100名だが応募数は1000名と倍率は非常に高い。若者達にとって"軍界"はそれ程魅力ある場所なのだ。
「毎年毎年、よくもまぁこれだけ送られてくるもんだ」
ヴィルは自室で何十枚にも重ねられた応募用紙を一枚一枚眺めては"可"又は"不可"の判子を押していく。
今年はヴィルが選別係だった。向かいの机ではヒュートが懐に忍ばせておいたチョコビスケットをバリバリと口に入れつつヴィルと同じ作業をしていた。
ビスケットの粉をポロポロとこぼしヒュートは口元を緩めた。
「全くだ。軍界に入ったら仕事の多さと訓練の過酷さに驚いて逃げ出すんじゃねぇか。最初から知ってたらまず志願はしねぇだろうさ」
「前年の"逃亡者"は何人でしたっけ?」
片手でビスケットを口に頬張る事を止めずヒュートは片手の指を2本挙げた。
ヴィルは聞く。
「2人?」
ヒュートは答える。
「20」
毎年志願を募る理由はこれだ。志願も多いが逃げ出す者も多い。よって軍界はいつも人手不足なのだ。
頭の痛くなる同じ作業にヴィルの我慢が切れた。
「う~ヒュートさん、ごめん!もらう!」
ヒュートの机にある最後のビスケットをパクリと奪い取った。
「あっ!?ヴィルてめぇ、俺の最後の一枚をっ!」
食べ物の恨みは怖い……
ヒュートは目の前で美味しそうにビスケットを頬張るヴィルに掴みかかっていった。いきなり胸倉を掴まれ口の中のビスケットが吹き出した。
「ぶフッ!ちょっ…怒らないで下さいよ!いつも仕事中に菓子食ってるの父に黙っててあげてるでしょ。菓子一枚くらいいいじゃないですか~」
「それとこれとは話は別だっ!何が一枚だ!俺にとっては最後の一枚だったんだよ!」
じゃれ合う2人は気付いていなかった。
後ろで冷ややかに眺めているセヴィルの存在を…
数秒後に聞こえたのは男2人の悲鳴であった。
「……?何?今の悲鳴…」
「知らねぇよ。つーか、選考まだ終わらねぇのか?いい加減待ちくたびれたぜ」
若者達は冷たい風にさらされ身を震わせながら選考結果を今か今かと待ち続けるのであった。




