ライオンの紋章
山小屋で越す夜は寒い。
ひゅうひゅうと板の隙間から入ってくる風がシャイナの身体を嫌々冷やしていく。毛布を被っているのに足の指先は凍えるように冷たかった。
「~…寒っ。どうして今日はこんなに冷えるの。もう嫌」
起きて動いていた方が温まると思いガバッと勢いよく身体を起こした。マッチを擦り蝋燭に火を灯す。
小さな光なのに小屋全体が明るくなった。
「……スゥースゥー、スゥースゥー」
「…………」
ベッドの下に目をやると大きな身体を丸めたセヴィルが気持ちよさそうに寝息を立て眠っていた。
上着しか掛けていないのに全く寒さを感じていないようだった。
シャイナは使わなくなった毛布を掛けてあげようとセヴィルの上着を取った。
パサリ……「?」
何かが落ちた。
「手帳?」
胸ポケット程の大きさの手帳だ。表には大きな翼の生えた吠えるライオンがオリーブの葉に囲まれている紋章が彫られている。
人里離れて暮らすシャイナでもそれが何を表すのかは知っていた。
「軍界の紋章……。軍人さん?」
シャイナは眠るセヴィルを眺めた。
確かによく見ればその身体はただ単に鍛えている様な筋肉のつき方ではなかった。生死の狭間で生き抜く為に作られた身体だ。
手帳を開いてみる。
最初のページにはセヴィルが軍服をきて綺麗な姿勢で写っている写真が載せられていた。その写真の下には【セヴィル・スグナ 諜報部隊隊長】と記載されている。
「諜報部隊……隊長、かなりのお偉い方みたいね。なんでそんな人がこんな山奥に……」
突然の来訪者への疑問は増えるばかりだ。
閉じた手帳を上着ポケットに戻し再びセヴィルに掛けた。その上から毛布を乗せると蝋燭を持ち静かに小屋から出て行った。




