05:大変身
金曜日の放課後。
わたしはSEASONのみんなと一緒に、秋城先輩の家にお邪魔していた。
いま他のみんなはリビングにいて、わたしと秋城先輩だけが二階に続く階段を上っている。
「ここがボクの部屋だよ~。どうぞ、入って~」
そう言って、秋城先輩は階段のすぐ近くにある部屋の扉を開けた。
「うわあ、すごい! ここ、本当に秋城先輩のお部屋ですか!?」
部屋の中を見るなり、わたしは叫んでしまった。
だって、壁の棚には色んな化粧品がズラリ。
机の上には、ライトが並んだ大きな『女優ミラー』があるんだもん!
「あはは、やっぱり驚いた〜。ボクのお母さんはサロンを経営しててね〜。たくさんのお客さんにメイクっていう名前の魔法をかけてきたんだ〜。ちょっとしたメイクで人が大変身するのが面白くてさ〜。気づいたら自分でも色々揃えちゃったんだよね~」
秋城先輩は笑いながら椅子を引いた。
「さあ、座って座って〜。いまからとびきりの魔法をかけてあげる。準備はいい~?」
「はいっ。お願いします!」
ドキドキ、ちょっぴりワクワクしながら、女優ミラーの前に座る。
それと同時に、わたしの左肩の上にいたクロが、ぴょんと机に飛び乗った。
それから、しばらくして。
「うん。こんなものかな? 確認してみて~」
満足そうに言って、秋城先輩はメイク道具の蓋を閉じた。
「わあ……誰これ」
わたしは、まじまじと鏡を見つめた。
ごく普通だったはずのわたしの顔が、イケメンになってる!
秋城先輩のメイク技術、すごすぎるよ!!
これならきっと、みんな、わたしがあげはだって気づかないよね!?
「どう?」
わたしが大変身する様子を見守っていたクロに小声で聞いてみると、クロは頷いた。
「よく化けた」
「わたしは狐じゃありませんっ!」
「何の話? どうしたの?」
はっ、しまった! つい叫んじゃったよ!
「あ、あはは! 独り言です! 秋城先輩のメイクがすごすぎて、『まるで狐につままれたみたい』って言おうとしたんです!」
首を傾げる秋城先輩に、わたしは慌てて取り繕った。
「こんなに素敵なメイクをしてくださって、ありがとうございました!」
わたしは立ち上がり、深々と頭を下げた。
「ふふ。立切さんは礼儀正しくて良い子だね~。ねえ、これからは玲央みたいに、あげはちゃんって呼んでいい~? あげはちゃんも、ボクのこと『司先輩』って呼んでいいからさ~」
「わかりました。じゃあ、これからは司先輩と呼ばせていただきますね」
「うん。よろしく〜」
少しだけ照れながら微笑むと、司先輩も微笑み返してくれた。




