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ゴースト・ガード!~超人気配信グループを男装女子がお守りします~  作者: 天咲リンネ


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24/26

24:初ライブは大波乱!

 日曜日の午後二時。

 ショッピングモールの吹き抜けは、一階から三階まで、人でびっしりと埋め尽くされていた。

 この日のために、SEASONのみんなは完璧に仕上げてきた。

 ライブ開始と同時に放たれたその圧倒的なオーラに、会場全体が熱狂に包まれている。

 四曲目が終わると、玲央先輩がマイクを握った。


「みんな、今日は集まってくれてありがとう!」

 芯のある魅力的な声が、ショッピングモール全体に響き渡る。

 ステージ上の玲央先輩は、ゲームに出てくる騎士のような恰好をしていた。


「次はいよいよラストだけど、最後まで盛り上がる準備はいいか~!?」

 キャー!! と、観客席のみんなが大声を上げ、派手なうちわやライトを振る。


「じゃあ、ここで、みんなにスペシャルゲストを紹介します! オレたちの配信を見てる人なら知ってるかも? そうそう、心霊スポット巡り企画に同行してもらったあいつだよ、あいつ!」

 玲央先輩がステージ袖のわたしをチラリと見て、笑う。

 誰かわかった人がたくさんいるらしく、「え、嘘!?」「ほんとに!?」と観客席からは大きなどよめきが上がった。


「知ってる人はオレたちと一緒に名前を呼んで! じゃあ行くぜ、せーの!!」

「「「「キリヤ―!!!」」」

 SEASONと大勢の観客たちが、一斉にキリヤの名前を呼ぶ。

 わあぁぁぁぁ! と、地鳴りのような歓声と拍手が上がる。


「…………!!」

 こんなに大勢の人がわたしを待っていると思うと、不安と緊張で身体が震えた。

 怖い。上手く踊れなかったらどうしよう。


 でも、みんなが待ってるんだ!!

 この三週間、あんなに必死で頑張ったんだから、きっとできる!!

 わたしは深呼吸してから胸元のマイクのスイッチを入れ、とびきりの笑顔を作ってステージに飛び出した。


「こんにちは~!! キリヤで~す!!」

 両手を振りながらステージに出た瞬間、歓声が爆発した。


「きゃーーー!!」

「キリヤーー!!」

 観客席の中のファンたちが、感激した様子でわたしに手を振ってる。


 ひえええええ!!

 本当にキリヤって、人気なんだ!!

 わたしは内心冷や汗を流しながら、玲央先輩や他のみんなと笑顔でトークを続けた。


 ――あっ。

 観客席の最前列にルネちゃんがいた。

 わたしと目が合うと、ルネちゃんは『玲央様最高!』と書いてあるうちわを、くるっとひっくり返した。

 派手なうちわには蛍光ピンクで『キリヤ頑張れ!』と書いてあって、わたしは思わず笑ってしまった。


 ――うん、わたし、やるよ、ルネちゃん!

 全力で頑張るから、ちゃんと見ててね!!


「じゃあラスト一曲! 行くぜ、『君はスターライト』!!」

 玲央先輩が右手を上げた瞬間、観客たちはピタッと口を閉じた。

 聞き慣れたイントロが流れ始める。


 軽く足を開いて顔を伏せ、踊り始めるタイミングを待っていたそのとき、嫌な気配がした。


「!!」

 まだ顔を上げるタイミングじゃなかったけど、わたしは反射的に顔を上げた。

 吹き抜けになっている二階から、ねっとりとした眼差しでこっちを見ている女性客たちは、SEASONのファンなのだろう。

 でも、ただのファンじゃない。


「自分のものにしたい」とか、「わたしだけを見てほしい」とか……そういう、厄介な感情を持ったファンだ。

 スマホやパソコンの画面越しじゃない、本物リアルのSEASONを見て、興奮してしまったのか。

 彼女たちから生まれた強い感情が、黒い淀みとなって噴き上がった。


 黒い霧のような淀みは会場にいる、何百人ものファンたちの感情と共鳴し――巨大な黒い『念』となって襲い掛かってくる!!


 ――うわあっ、最悪っ!! どうしよう!?

 ゲストとして出演している以上、ステージを放り出すわけにはいかない。

 となれば――難しいけど、踊りながら、なんとか祓うしかないっ!!


『♪君がくれた「おはよう」で 一日が光り出す』

 司先輩が一歩前に出て、澄んだ綺麗な声でソロパートを歌い始める。

 観客たちはウットリした顔でスマホを向けたり、うちわを振ったりしてる。


 ――このライブを、念なんかに邪魔させるわけにはいかない!


『♪なんでだろう 胸の奥が あたたかいよ』

 次に歌い始めた春宮くんの声に合わせて、わたしは右腕を鋭く突き出した。


 ――ガツンッ!

 普通の人には見えていない黒い塊を、リズムに乗せてぶん殴る。


『♪目が合えば つい照れ笑いしてしまうけど』

 歌っている白銀くんの横に移動して、交互にキックを繰り出す。

 白銀くんの足を掴もうとする執着の念を、空中で鮮やかに蹴り砕いた。


 続いて、右、左!

 念が、念がまとわりついてくるせいで、身体が重いぃ!!

 それでも必死で身体を動かした。

 右足で念を蹴り、左肘で突いてターンを決める。


『♪今日はもう うつむいたりしないから』

 玲央先輩の歌声に合わせ、必死で念を祓っているわたしを、白銀くんがどこか不安そうな目で見た。

 人一倍霊感が強い彼は、嫌な気配を感じ取ってるみたい。


 ――大丈夫! わたしが絶対なんとかする!!

 わたしは片目をつむって、白銀くんにそのメッセージを伝えた。


『♪君はスターライト ぼくを照らす光』

 曲がサビに入り、わたしたちは踊りながら華麗にフォーメーションを変える。


『♪世界で一番 眩しい笑顔を見せて』

 1番のサビが終わって会場の熱狂が頂点に達したとき、巨大な悪意の渦がステージを飲み込もうと膨れ上がった。


 ――これは、踊りながら祓うのは無理だ……!!

 全身全霊を込めた拳の一撃じゃないと、どうにもならないレベルの念だ。


 ――でも、ダンスを止めるわけにはいかない……!!


 絶体絶命のピンチに困り果てたそのとき。

 観客席の真ん中あたりから、巨大な黒い狐が突然ヌッと現れた。


 ――えっ、クロ!?

 わたしには内緒で、こっそりついてきてたんだ!?


 予想外の登場に驚いたけど、わたしは歓喜した。

 クロが来てくれたなら、もう安心だ!

 いつもは霊力の節約のためにミニサイズになってるけど、本当のクロはとても大きくて、強いもの!!


「……フン、世話が焼ける」

 クロの身体の周りに、ぼうっと、白い炎が灯った。

 白い炎はステージに迫っていた念の塊を包み込んで噴き上がり、瞬く間に浄化した。

 念のせいで黒く霞んでいた視界が、一気にクリアになる。

 重かった身体が、羽が生えたように軽くなった。


 ――ありがとう、クロ!!

 これでやっと、わたしもダンスに集中することができた。

 SEASONのみんなと呼吸を合わせて身体を動かし、飛び、跳ねる。


『♪この手をつないで 歩いていこう』

 わたしは最後の一音に合わせて両手を広げ、SEASONのみんなと一緒に会心の決めポーズをとった。


『♪いま、最高の瞬間を 君と刻もう』


 一瞬の静寂の後。

 ショッピングモール全体が揺れるほどの、今日一番の拍手が降り注いだ。

 観客席ではルネちゃんが目を潤ませて、うちわを激しく振っている。

 息を弾ませながら隣を見ると、白銀くんが「お疲れ様」というように、優しい目で微笑んでくれた。


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