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ゴースト・ガード!~超人気配信グループを男装女子がお守りします~  作者: 天咲リンネ


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22/26

22:ツンデレ少女

 次の日の放課後。

 わたしは春宮くんと白銀くんと一緒に、駅前にあるレンタルスタジオに向かった。


「ここ知ってるわ。有名な配信者がよく使うスタジオでしょ? 動画に出てたの、見たことある」

 わたしの隣で、岩清水さんが言った。


「うん。結構有名なスタジオだけど……なんで岩清水さんがついてきてるの?」

「玲央様に許可もらってるも~ん」

 白銀くんの冷たい眼差しも、マイペースな岩清水さんにはどこ吹く風だ。


「玲央先輩、なんで許可出したんだ……」

「まあまあ。賑やかでいいじゃない」

 春宮くんが苦笑しながらフォローを入れた。

 スタジオの廊下で春宮くんたちと別れ、わたしと岩清水さんは女子更衣室で着替えた。


「ダッサ! あんた、それ、学校のジャージじゃない!」

 わたしを見て叫んだ岩清水さんは、オシャレなストリート系ブランドの服を着こなしている。

 ピンクで英語のロゴが入った、派手なやつ。

 しかも、ツインテールのリボンまで、服の色に合わせてピンクに変えるという徹底ぶり。


「ダメかな? 動きやすいと思ったんだけど……」

「もー、あんた、相手が誰だかわかってるの!? チャンネル登録者数150万人越えのSEASONよSEASON! 超人気配信者と一緒に練習するんだから、ちょっとはオシャレにも気を遣いなさいよ! 仕方ないわね、これ、あたしの予備だけど貸してあげる! あたしとほとんど身長同じだし、着れるでしょ!」

 大きなカバンから黄色の服を引っ張り出して、岩清水さんはわたしの手に押しつけた。


「いいの? 練習したら汗で汚れるよ?」

「あんたまさか、洗濯もせずに返すつもりなの?」

 岩清水さんは「信じられない」という顔をしている。


「いや、もちろん、ちゃんと洗濯して返すつもりだけどさ! でも、大事な服にわたしの汗が染み込んだりしたら嫌なんじゃないの? 岩清水さんって、わたしのこと嫌いなんでしょ? なんでここまでしてくれるの?」

「SEASONのために決まってるでしょ。仮にも一緒にステージに立つ女が、ダサい名前入りジャージで練習するなんて許せるものですか。SEASONの格まで落ちるっての!」

 岩清水さんの言葉は、わたしの心臓に突き刺さった。


「たしかにそうかも……わたしのせいでSEASONまで安く見られるのは嫌だし……。ごめん、岩清水さん。わたしが間違ってた。この服、借りるね」

 わたしはジャージを脱いで、黄色い服に袖を通した。

 服からは、自分の家とは違う洗剤の香りがする。


「ねえ、岩清水さん。もしよかったら、この後、ショッピングに付き合ってくれない?」

「はあ? なんであたしが――」

「だって、岩清水さん、センスいいから」

「!」

「岩清水さんって可愛いし、オシャレだし。アドバイスほしいんだ。お願い」

「……し、仕方ないわねえ。そういうことなら、まあ……付き合ってあげるわよ」

 岩清水さんは顔を赤らめて、コホンと咳払いした。


「ちょっと、向こう向いて。そのままじゃ、踊るときに髪が邪魔でしょ? ポニーテールにしてあげる」

「ありがとう。岩清水さんって気が利くし、優しいんだね」

「な、ななな、何よおっ。褒めたって何も出ないわよ!? 飴食べる!?」

 岩清水さんはカバンからイチゴの飴を取り出し、ずいっと差し出してきた。

 その顔は、ものの見事に真っ赤だ。


 ――岩清水さんって、意外と可愛いかも。


「ありがとう」

 わたしは笑って、差し出された飴を受け取った。




「お待たせしました!」

『Aスタジオ』と書かれたドアを開けて中に入ると、壁一面の巨大な鏡に、眩しいライトがわたしたちを出迎えた。

 岩清水さんから借りたのは、鮮やかなイエローのオーバーサイズTシャツに、黒のラインが入ったショートパンツ。

 セミロングの髪もポニーテールにして、自分でも驚くくらい「ダンサーっぽい」格好だ。

 鏡の前でおしゃべりしていた白銀くんと春宮くんが、同時にこちらを振り返る。


 二人とも、オシャレなブランド服を着てる。

 これは、一人だけジャージだったら、完全に浮いてたな。

 岩清水さんには感謝しなきゃ。


「わあ、立切さん、可愛い!」

 春宮くんがパッと顔を輝かせて近寄ってきた。


「明るい黄色、立切さんの雰囲気にすごく合ってるよ。深冬もそう思うでしょ?」

「うん。いいと思う」

 白銀くんはうなずいた。

 

「それ、実はあたしの服なんだけどね。ダッサいジャージを着ようとしてたから、予備の服を貸してあげたのよ」

「そうなんだ? 岩清水さん、優しいんだね」

「おれも、ちょっとだけ見直した」

「な、なな、なによお。二人までそんな……飴食べる!?」

 岩清水さんは顔を赤くしながら、ポケットからさっと飴を取り出した。


「え、飴? ありがとう」

「いや、おれ、イチゴ味は苦手――」

 断ろうとした白銀くんのわき腹を、春宮くんがすかさず肘で突いた。


「……ありがとう」

 素直に飴を受け取った白銀くんを見て、つい笑いそうになっていると、春宮くんが言った。


「じゃあ先輩たちが来るまでストレッチと、アイソレーションやろうか」

「アイソレーション?」

「ダンスの基礎練習のことだよ。首だけ、肩だけ、胸だけ、みたいに、体の一部だけを動かすんだ。こんな感じで」

 春宮くんは身体を止めた状態で、首をカクッとスライドさせてみせた。


「おお、すごい! わたし、初心者だから迷惑かけるかもしれないけど、色々教えてね!」

「うん、もちろん。でも……」

 春宮くんの表情が急に曇った。


「でも?」

「……ダンスのことになると、玲央先輩は『鬼』になるから。ぼくたちと一緒のステージに立ちたいなら、本気で頑張ってね」

「本当に、一切妥協してくれないからな……おれも最初は泣きそうになった」

「白銀くんが泣きそうになるレベル……!?」

 さすがに怖くなった――けど。


「何よ。やめるの? あんたの覚悟ってしょせんその程度なわけ? だとしたらガッカリなんだけど」

 岩清水さんの失望したような顔が、わたしのやる気に火をつけた。


「ううん、やる! どんなに厳しくても食らいついて、絶対みんなとステージに立ってみせる!!」

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