20:大ピンチ!?
「まあ、まとめると『気にすんな』ってことだよ、あげはちゃん」
玲央先輩が、手をひらひら振った。
「でも、もし何か言われたり、されるようなことがあれば、すぐオレらに言って」
「そうそう。一人で抱え込むのはナシだよ? 何かトラブルが起きたら、すぐに相談してね~」
「……っ、はい。ありがとうございます……!」
みんなの優しさに涙がこぼれそうになって、わたしは慌てて下を向いた。
岩清水さんのことは、気にならないって言ったらうそになる。
岩清水さん以外にも、わたしとSEASONが仲良くしていることを不愉快に感じてる人がいるかもしれない。
でも、負けない。――負けたくない。
だって、SEASONのみんなはわたしの大事な友達だもん。
誰に何を言われたって、縁を切るなんて、絶対に嫌だ!!
「さて。あげはちゃんの元気も戻ったところで、本題に入ろうか」
「本題?」
玲央先輩の言葉を聞いたわたしは、涙を拭って顔を上げた。
「実はね。三週間後の日曜日に、近くのショッピングモールでライブをやることになったんだ~」
司先輩が近づいてきて、スマホでイベントの告知画像を見せてくれた。
「三週間後ですね? 絶対見に行きます!」
自分のスマホを取り上げて、カレンダーに予定を書き込もうとしたとき。
「待って、あげはちゃん。ラストの一曲、キリヤとしてボクらと一緒にステージに立たない~?」
司先輩が衝撃的なことを言った。
「ええっ!? わたしが……ステージに!?」
思わず叫んでしまったけど、驚いてるのはわたしだけ。
どうやらわたしを誘ってみようっていうのは、みんなで決めたことみたい。
「うん。キリヤが予想以上に人気だからさ。お父さんにゲスト出演してもらえないか頼んでほしいって言われたんだ~」
「え、でも、わたし、音痴なんですけどっ」
真っ青になったわたしを見て、司先輩は苦笑した。
「うん、知ってる~」
「あれは……なんというか、凄かったな」
「はい。本当に」
みんな、遠い目をしたり、深刻な顔でうなずいている。
「……すみません」
わたしは恥ずかしくなって、身を縮めた。
昨日の日曜日、わたしたちは心霊スポット巡りの打ち上げとして、みんなでカラオケに行ったんだ。
「あげはちゃんも歌って」と言われるまま歌った結果、玲央先輩は凍りついた。
司先輩と春宮くんは耳を塞いでたし、絶対音感がある白銀くんなんて、気絶しちゃったもんね。
「だからさ、歌は歌わなくていいよ~。ボクたちと踊るだけ~。あげはちゃんは運動神経もいいし、ちょっと頑張ってくれたら一曲くらい、余裕で踊れると思うんだよね~」
「いえ、でも……」
「もちろん、無理強いするつもりはないよ~。ダメもとのお願いだし、嫌なら断ってくれて構わないから~。そのときは、観客席でみんなと応援してくれたら嬉しいな~」
……観客席でみんなと……。
わたしは想像してみた。
ステージから少し離れた観客席から、大勢のファンの一人として応援する自分と。
ステージの上でスポットライトを浴びて、SEASONと一緒に踊る自分を。
――さあ、どっちがいい?
――そんなの、決まってる。
「…………」
みんなに見つめられて、心臓が、騒ぎ出す。
わたし、本当に大勢の人の前で踊れるかな?
不安だし、怖い。
みんなの足を引っ張っちゃったらどうしようって、身体が震える。
でも、その一方で、ワクワクドキドキしている自分がいるのも本当だ。
岩清水さんは、神様に「縁を切って」とお願いした。
けれど、目の前のみんなは、わたしを「もっと近く」へ呼んでくれている。
もっと近くへ――観客席じゃなく、同じステージの上へ!
「……わたし、精一杯頑張ります。だから、わたしをみんなと同じステージに立たせてください!」
たちまち、みんなが笑った。
「よし! 次のライブはキリヤの飛び入り参加で大盛り上がり間違いなしだな!」
「みんなの反応が楽しみだね~。ひょっとしたら、キリヤっていう単語がトレンド入りしちゃうかも~」
「まさか、さすがにそれはないでしょう」
そうして、みんなと笑い合っていたとき。
「……嘘でしょ。まさか、あのキリヤが……地味で根暗なあんただなんて!」
岩清水さんの叫び声が聞こえて、わたしたちは振り向いた。
屋上へやってきた岩清水さんは怒ったような顔で、スマホを握り締めている。
――えっ、聞かれてたの!?
昼休みの屋上は立ち入り禁止じゃない。
みんながSEASONに遠慮してるだけ。
そんなことわかってたはずなのに、いままで誰も来なかったから、誰かが盗み聞きしてる可能性をすっかり忘れていた。
しかも、岩清水さんはスマホを持っている。
もしかしたら、撮られていたかもしれない――そう思って、わたしは心底震え上がった。
わたしがキリヤだって、SNSで拡散でもされたら、一巻の終わりだ。




