19:悩み相談
昼休み。
わたしはいつも通り、SEASONのみんなと屋上でお弁当を食べていた。
「――なあ、あげはちゃん。聞いてる?」
玲央先輩に名前を呼ばれて、ハッと顔を上げると、みんながわたしを見ていた。
「えっ? えーと、すみません、聞いてませんでした。なんの話をしていたんでしたっけ?」
「キリヤにゲスト出演してもらって、ゲーム実況したいっていう話だったんだけど」
「ああ……そういえば」
右から左へ聞き流してたけど、思い出してみれば、先輩たちは『レジェハン』の話をしていたような気がする。
『レジェハン』っていうのは、先週発売されたばかりの世界的大人気ゲーム『レジェンドハンター・デルタ3』のこと。
クラスのゲーム好き男子の話題はいま『レジェハン』のことばかりで、わたしの小学生の弟も超ハマってる。
「すみません。誘ってもらえたのは嬉しいんですが、わたしはゲーム下手なので。皆さんの足を引っ張ってしまうと思いますし、止めておきます」
「そっか、わかった。それは別にいいんだけどさ……」
玲央先輩はなにか言いたそうな顔をしているけど、わたしは視線に耐えられなくて、うつむいた。
わたしの頭の中では、今朝の岩清水さんの声がループしている。
わたしがSEASONのみんなと友達になったことを、岩清水さんは妬んでいた。
それなのに、のんきに配信に混じることなんてできるわけがない。
岩清水さんの他にも、わたしのことを妬んでる人はたくさんいるのかなって思うと、胸が苦しくなる。
……わたし、本当に、このままみんなと仲良くしてていいのかな……。
「立切さん、体調悪いの? 全然食べてないし」
春宮くんはお弁当箱に蓋をしながら、心配そうな顔をした。
気がつけば、まだ食べ終わっていないのはわたしだけだ。
「ううん、元気だよ。ちょっとぼんやりしてただけ」
慌てておにぎりを一口頬張ったけど、味がしない。
それでも、みんなに心配かけたくないから、頑張って胃に詰め込んだ。
「ごちそうさまでした」
どうにかお弁当を食べ終えると、それを待っていたかのように司先輩がズバリ聞いてきた。
「ねえ、あげはちゃん。悩みごとでもあるの?」
「いえ、特になにも」
「嘘だね~。いつもなら、ボクらのくだらない話で笑ってくれるのに、今日は一度も笑ってないよ~? ず~っと浮かない顔で黙り込んでるから、心配だよ~」
「なんか悩みがあるなら話してよ。あげはちゃんはオレたちを助けてくれたんだ。オレたちだって、あげはちゃんを助けたい」
「解決できるかどうかわからないけど……友達として、できる限りのことはする」
玲央先輩も、白銀くんも、大真面目な顔でそう言ってくれた。
「……みんな……」
胸の奥がジンとしびれた。
岩清水さんのことを話せば、みんなはきっと怒ってくれるだろう。
でも、岩清水さんの名前は出したくない。まるで悪口を言っているみたいだもん。
「……その。わたしとSEASONのみんながこうやって、屋上で一緒にご飯食べたり、仲良くしてることをよく思ってない人がいるみたいで……」
「何それ。その人に何か言われたり、嫌がらせされたりしたの?」
具体的な名前をぼかして言うと、春宮くんが眉根を寄せた。
「ううん、そんなことはないんだけど……うちの神社で、わたしとSEASONの縁が切れますようにってお願いするところを見ちゃったの……」
「なんだ、そんなことか」
「そんなこと?」
わたしは朝からずっと悩んでいたのに、玲央先輩にささいなことみたいに言われて驚いた。
「神様にお願い? くだらねー、勝手にさせとけよ。オレたちの縁は神頼みで切れるような、うっすい縁じゃねーだろ?」
「そうだよ~。神様も、そんな身勝手なお願い叶えるほど暇じゃないと思うよ~?」
「少なくとも、おれは誰に何を願われようと、立切さんとの縁を切るつもりはないよ」
白銀くんはわたしの目を見て、きっぱりと言い切った。
「深冬。そこは『おれ』じゃなくて、『おれたち』でしょう」
春宮くんは白銀くんの腕をぽんと叩いて、微笑んだ。
「それとね。悩んでる立切さんには悪いけど、ぼくはいま、ちょっと嬉しいかも」
「嬉しい?」
「だって、そんなお願いをされるくらい、ぼくらが仲良しだって思われたってことでしょう?」
キョトンしていると、春宮くんはニコッと笑った。




