17:それでじゅうぶん
「いいのか? また馬鹿にされて、嫌な目に遭うかもしれんぞ」
わたしの太ももの上にちょこんとお座りしているクロが、わたしを見上げた。
「白銀くんたちは馬鹿にしたりしないよ。大丈夫。信じるって決めたから」
わたしはクロにそう言ってから、ぐるりとみんなを見回した。
「いま、何もない空間に話しかけたように見えましたよね? 実は、ここには、うちの神社に仕えている神使のクロがいるんです。黒い毛に、綺麗な金色の目をした小さな狐で、額には赤い紋様があります」
わたしは右手でクロの頭を撫でた。
「神様の使いだから、クロはものすごく強い霊力を持ってるんです。クロが霊力を分け与えてくれたから、わたしはトンネルにいた悪霊を祓うことができました。信じてくれますか?」
「信じるよ」
四人の中で、一番最初にそう言ったのは、白銀くんだった。
「むしろ、納得した。たまに、立切さんの肩の上に、白い影が見えるときがあったから」
「見えてたの!?」
クロの強い霊力が、白銀くんには白い影として見えていたんだ。
クロの気配を感じ取ることができた人なんて、家族以外には誰もいなかったのに。
やっぱり、白銀くんはすごい!
「ぼくには見えないけど、でも、信じるよ。立切さんがそう言うんだから、信じるに決まってるでしょう?」
「ボクも~。命懸けで守ってもらっておいて、いまさら信じないとかナシだもんね~」
「オレも。あげはちゃんが言うなら、空にピンクの象が飛んでるって言っても信じるぜ」
他のみんなも、口々にそう言ってくれて。
「ちなみに、わたしも信じるよ」
運転席で、和臣さんがグッと親指を上げた。
スマホをいじりながらも、わたしたちの会話はちゃんと聞いてたみたい。
「……信じてくれて、ありがとうございます」
胸が、じんわり温かくなって、なんだか泣きそうになっちゃった。
「当たり前だろ。友達なんだからさ」
玲央先輩は、さらっとそう言った。
「……友達、ですか?」
驚いて、わたしは目をパチクリさせた。
「え、違った? 二週間以上、毎日一緒に昼飯食ってきたじゃん。ラインもしてるし、これってもう友達じゃねーの?」
「ぼくはとっくに友達だと思ってたよ」
「ボクも~」
春宮くんと司先輩が微笑んだ。
「おれは友達じゃなくて、頼りになるクラスメイトだと思ってたけど……でも、立切さんがいいなら、友達になりたい」
白銀くんは、じっとわたしを見つめた。
「も、もちろんっ、大歓迎だよ!」
わたしは上ずった声で言って、何度もうなずいた。
「じゃあ、皆さん。これからは友達として、よろしくお願いします!」
「うん」
「こちらこそ、よろしくね~」
みんなが笑ってくれた。
――憧れだったSEASONと友達になれるなんて、夢みたい。
ああ、ダメだ、ニヤニヤがとまらないよ!
「良かったな」
ずっとボッチだったわたしを知ってるからか、クロもなんだか嬉しそう。
「そうだ、あげはちゃん。心霊スポット巡りが終わったら何かお礼させてね~っていう話をしたの、覚えてる? お礼、何がいいか決まった~?」
緩んだ頬を押さえていると、司先輩が問いかけてきた。
「いえ、お礼はもうもらいました」
わたしは頬を押さえていた手を下ろし、とびきりの笑顔で答えた。
「皆さんと友達になれた、それでじゅうぶんです!」




