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ゴースト・ガード!~超人気配信グループを男装女子がお守りします~  作者: 天咲リンネ


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16/26

16:過去のトラウマ

 家に帰る前に、わたしたちはみんなでコンビニに行った。

 今日で心霊スポット巡り終了ということで、和臣さんが高級アイスを買ってくれたんだ。

 和臣さんは抹茶、春宮くんはバニラ、玲央先輩とわたしはチョコ、司先輩はイチゴ、白銀くんはチョコクッキー。みんなそれぞれ好みが違って面白い。


「うわ。見たことがない数のDMが来てる」

 駐車場に停めた車の中で、玲央先輩がつぶやいた。

 わたしの前の座席に座っている玲央先輩は、アイスを食べながらSNSをチェックしているみたい。


「おれもです」

「ぼくも」

「ボクにも来てるよ~。いきなり配信が切れちゃったから、視聴者もパニックになったみたいだね~。SEASONがトレンド入りしてるよ~。こんな形でのトレンド入りは嫌だなぁ~」

 玲央先輩の隣で、司先輩は苦笑いしてる。

 わたしはチョコアイスを食べながら、運転席にいる和臣さんを見た。

 和臣さんは真剣な顔でスマホをいじっている。

 SNSで無事だと告知した後も、問い合わせや、心配するファンへの対応に追われているんだろうな。マネージャーって、大変そう。


「ところで、あの後、何があったの? 気絶してたから全然覚えてなくて」

 わたしの左隣に座っている春宮くんが質問してきた。


「なんかねえ、黒くて大きいボールみたいなのが襲い掛かってきたんだよ~」

 わたしが答えるよりも先に、司先輩が言った。

 そっか、司先輩には『黒くて大きいボール』みたいに見えたんだ。


「ボールなんて生易しいものじゃないですよ。人間の顔や手をめちゃくちゃにくっつけたような……恐ろしい怪物でした。多分、トンネルで事故死した人たちの怨念の集合体だと思います」

 思い出してゾッとしたらしく、わたしの右隣にいる白銀くんは自分の腕を撫でた。

 ああ、やっぱり、白銀くんが一番よく見えてたんだな。

 怨念の集合体っていう推測も、バッチリ当たってるし。

 クロの話によると、あれは「怨念の集合体に低級霊や浮遊霊がくっついて変異した悪霊」だったらしいから。


「なにそれ、怖っ! 気絶しといて良かったかも……」

 春宮くんは震え上がっている。


「やっぱり深冬は霊感強いんだね~。ボク、普通の人間で良かった~。そんな怖いやつ、ハッキリ見たくないし~」

「オレは見たかったなー。戦うあげはちゃんはかっこよかったけどさ、肝心の相手が見えないって、悲しいぜ? あー、深冬が羨ましい」

「……おれは見えない先輩が心底羨ましいですよ。心霊スポット巡りはこれきりにしてくださいね。立切さんがいなかったら、本当に危なかったんですから」

「はーい。あげはちゃんとも、ガチの心霊ネタはやめるって約束しました」

 白銀くんにジト目でにらまれて、玲央先輩は降参するように手を上げた。


「……『ガチの』じゃないやつは、やる気なんですか?」

「わかんない。視聴者の反応次第だな!」

「……もういいです。この話はまた後にしましょう」

 白銀くんは深いため息をついてから、わたしを見た。


「立切さん。おれたちを守ってくれて、本当にありがとう」

「あげはちゃんはボクらのヒーローだね~。いや、ボクらのゴースト・ガードって言ったほうがいいかな〜」

 司先輩はいたずらっぽく笑った。

 どうやら、司先輩はわたしと玲央先輩の会話を聞いてたみたい。


「ゴースト・ガード?」

「なんですかそれ?」

「ゴースト・ガードっていうのは――」

 司先輩が白銀くんたちに説明している間に、わたしは空になったアイスのカップとスプーンをビニール袋に入れた。

 しばらくして全員がアイスを食べ終えると、玲央先輩が急に振り返った。


「なあ、あげはちゃん。戦いの最中、なんか変なこと言ってたよな? 『クロ』ってなんのこと?」

「あ、それボクも気になった~」

 振り返った司先輩に続いて、白銀くんや春宮くんもわたしを見た。


「えーと……」

 どうしよう。

 話してもいいのかな?


 ――あげはの嘘つき。黒い狐なんていないじゃん。


 昔のことを思い出して、ズキン、と胸が痛くなった。

 小学生の頃、わたしはクロのことを友達に話したことがある。

 でも、信じてくれなかった上に「あげはは嘘つきだ」って言いふらされたんだよね。


 ――あの子さあ、神社の娘だからって、調子に乗ってるよね。

 ――この前は、校庭に女の子の幽霊がいるとか言ってたよ。幽霊なんているわけないのに、バカみたい。

 ――みんなの気を引きたいだけなんだよ。目立ちたがり屋。嘘つき!


「…………」

 奥歯を噛んでうつむいていると、白銀くんが静かに言った。


「言いたくないなら、言わなくていいけど……」

「『でも、教えてくれたら嬉しいな~』って、深冬の顔に書いてあるよ~」

「そんなことないですよ。いや、少しはありますけど……」

「ねえ、立切さん。誰にも言わないって約束するから、教えてくれない?」

「オレも知りたいなー」

 春宮くんも、玲央先輩も――みんなが、わたしを見てる。

 昔のクラスメイトたちの目は、冷たくて怖かった。

 でも、いまわたしに向けられている目は、怖くない。

 それはきっと、みんなが純粋な興味を持って、わたしのことを知ろうとしてくれているから。


「……わかりました。話します」

 勇気を出して、わたしは背筋を伸ばした。

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