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ゴースト・ガード!~超人気配信グループを男装女子がお守りします~  作者: 天咲リンネ


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14/26

14:VS巨大悪霊

 歩き始めて数分後――。


「うわっ、何これ!?」

 突然、司先輩が叫んだ。

 振り向くと、トンネルの壁に、黒い手形のようなものがたくさん張りついている。

 生まれつき『変なモノ』が見えるわたしは耐性があるけれど、慣れていない人にはじゅうぶんに衝撃的な光景だ。


「ひっ……」

 春宮くんは小さく悲鳴を上げて後ずさった。

 白銀くんは春宮くんの近くで、言葉もなく立ち尽くしている。


「なになに? なんかあるっぽいけど、みんなは見える?」

 玲央先輩は呑気に壁に近づき、スマホのカメラを向けた。


 ――あっ、まずい!!


「春宮くん、動かないでっ!」

 春宮くんの背後に複数の黒い影が揺らめくのを見て、わたしは走り出した。

 走りながら霊力を足に込めてジャンプし、黒い影を思いっきり蹴り飛ばす!

 春宮くんに取り憑こうとしていた黒い影は、悲鳴を上げて消えた。

 さらに右手からやってきた黒い影を殴り飛ばし、左手からやってきた黒い影は回し蹴りで消滅させた。


「わあ、格好良い~!」

「キリヤ、すげえ! 武闘家みたい!」

 司先輩と玲央先輩が褒めてくれたけど、いまは応じてる場合じゃない!


「皆さん、いますぐ引き返してください! ヤバいのがきます!!」

 トンネルの奥のほうから禍々しい気配がする。

 握った拳や背中に、じっとりと汗がにじんだ。


 ――この気配、わたしの手には負えないかも……。


「え、ヤバいの? それは是非撮りた――」

「先輩っ! 約束したでしょう!」

 スマホのカメラをトンネルの奥に向けた玲央先輩の腕を、白銀くんが容赦なく引っ張った。


「うう。残念だけど仕方ないか。視聴者のみんな、ごめん! 撤収します!」

「頼むね、キリヤ!」

 わたしを残して、みんなが走り出した。

 遠ざかっていくみんなの足音を聞きながら、わたしは改めてトンネルの奥をにらんだ。

 ヤバい気配が、どんどん強くなっていってる!


「あげは、くるぞ!」

 クロが体勢を低くして叫ぶ。

 そして、トンネルの奥から、怪物のうなり声のような音が響き渡った。


 ――ゴオオオオオオォ……!!

 音と連動するように、トンネル内の全ての電灯がブツンと切れた。


「な、なに!? 停電!?」

「怖い〜!」

 春宮くんと司先輩の悲鳴がトンネル内にこだまする。


「えっ、配信切れた!? なんで!? いきなり圏外になったんだけど!」

 玲央先輩の悲鳴の内容は、二人とは全く違った。


「いや、いまそんなことどうでもいいか! とにかく、みんな、落ち着け! スマホのライトつけろ!」

 玲央先輩がスマホのライトを点灯させたらしく、わたしの背後が急に明るくなった。

 直後、トンネルの奥から、暗闇よりも黒い塊が現れた。

 それは、無数の人の顔や手が、ぐちゃぐちゃに混ざり合ったような、おぞましい姿をしていた。

 トンネルの天井に届くその大きさは、五メートルくらいだろうか。

 巨大な悪霊は、逃げ道をふさぐようにして、ゆっくりと蠢きながら広がっていく。

 顔という顔が恨み言をつぶやき、何十本もの黒い『腕』が天井や地面を這うように伸びていく――


「うわあああああっ!!」

 司先輩の大きな悲鳴が聞こえて、わたしは思わず振り返った。

 司先輩は腰を抜かしたらしく、右手にスマホを握ったまま、地面に座り込んでいる。


 春宮くんは邪気にあてられたのか、恐怖で意識を失ってしまったのか、ぐったりと白銀くんに寄りかかっている。

 白銀くんは真っ青な顔で震えながら、それでも春宮くんを庇うように抱きしめていた。


「なんで光成は気絶してるんだ? 司も深冬も、いったい何を見てる? そこに何かいるのか?」

 玲央先輩はライトのついたスマホを持って困惑している。


「皆さん、落ち着いてください!! 白銀くんたちのそばにいれば大丈夫ですから、動かないで!!」

 白銀くんと春宮くんが破魔鈴を持ってきていることは、車の中で確認済みだ。

 だから、もしもわたしの視界の外で悪霊が襲ってきたとしても、しばらくは大丈夫のはず!


「あげはちゃん!!」

「えっ!?」

 玲央先輩がいきなり本名を叫んだから、わたしはびっくりした。


「配信切れたし、もう演技しなくていいよ!! 司に聞いたんだけど、なんかそこに『いる』んだろ!? オレが照らすから、やっちゃって!!」

 玲央先輩はスマホのライトをトンネルの奥に向けた。

 おかげで、巨大悪霊の姿がよく見える!


「はいっ! 行くよ、クロ!!」

 わたしはクロを肩に乗せたまま走り出した。

 無数の黒い『手』が、わたしを捕まえるべく、四方八方から伸びてくる。

 わたしは上体をそらしたり、横に飛んだりして避けながら、前に進んだ。


 巨大悪霊に近づくたび、生ゴミのような酷い悪臭が強くなる。

 冷たい空気が、わたしの肌をぞわぞわと這い回る。


 ――怖いし、気持ち悪い。吐き気がする。

 でも、守るって、約束したもの!!

 霊力と、みんなを守るという強い思いが、わたしの拳に集まっていく。


 狙うのはただ一点。

 巨大悪霊の『核』だ。


「せいっ!!」

 わたしは『核』に拳を叩きつけた。

 巨大悪霊の動きが止まる。

 でも、それはたった数秒のこと。

 すぐにまた、巨大悪霊はぐねぐねと不気味に動き始めた。


 ――渾身の一撃だったのに、全然効いてない!?


 次の瞬間。

 丸太くらいの大きさの黒い『腕』が、目にも留まらぬ速さで横薙ぎに振るわれた。


「っ!?」

 とっさに両腕でガードしたものの、身体が吹き飛ばされた。

 ――ドンッ!!

 背中から壁にぶつかって、鈍い痛みとしびれが全身に走る。


「く……う……」

「あげはちゃん、大丈夫!?」

 よろめきながら立ち上がると、玲央先輩が駆け寄ろうとしてきた。


「こっちに来ないで!!」

 わたしの叫び声が、玲央先輩の足音を止めた。


「大丈夫ですから!! そのままトンネルを照らしててください!!」

「……わかった!」

 返答に少し間があったのは、わたしを心配してるからだろう。

 わたしはみんなの護衛役としてここにいるのに……心配かけちゃって、情けないよ。

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