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ゴースト・ガード!~超人気配信グループを男装女子がお守りします~  作者: 天咲リンネ


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13/26

13:いざ、蛇目山トンネルへ

 一週間後の土曜日。

 キリヤに変身したわたしはSEASONのみんなと車に乗り、蛇目山じゃのめやまへ向かった。

 心霊スポット巡りの1回目はコノエ公園、2回目は海。

 これまでは何事もなく平和に終わった。

 でも、3回目となる今日の舞台は、白銀くんが心配していた蛇目山トンネルだ。

 蛇目山トンネルは事故が多発している、ガチの心霊スポット。

 見た目はただのトンネルなのに、まるで巨大な怪物が口を開けて、わたしたちを飲み込もうと待ち構えているようだった。


「…………」

 わたしは、ごくん、と唾を飲み込んだ。

 入り口の前に立っているだけなのに、全身に鳥肌が立っている。

 この中にいる『モノ』に対して、身体が勝手に恐怖を感じているんだ。

 それはみんな同じらしく、春宮くんや司先輩はさっきからずっと黙っているし、白銀くんの顔色は青い。

 わたしの左肩にいるクロは耳をピンと立て、険しい顔でトンネルを睨みつけていた。


「へー、ここが蛇目山トンネルかあ。雰囲気あるじゃん」

 霊感ゼロの玲央先輩だけが楽しそうだ。


「どうだろう、立切さん。見た感じ、危なそう?」

「はい」

 ビデオカメラを持った和臣さんに聞かれて、わたしは即答した。


「和臣さんは入口で待機していてください。何かあったらすぐ警察や救急を呼べるように」

「……そんなにヤバいの? 配信やめたほうがいいのかな……」

「えー、ここまで来てそれはナシでしょう」

 迷いを見せた和臣さんに、玲央先輩が不満そうな声を上げた。


「みんな今日の配信を楽しみにしてるんです。告知した後の反響、和臣さんも見たでしょう? いまさら中止とか無理ですって――」

「それでも、止めたほうがいいです!」

 珍しく、白銀くんが大声を上げた。


「多少炎上してもいいじゃないですか! おれは動画の再生数よりも、みんなの安全のほうが大事です! ここは、ここだけは、行かないほうがいいです!!」

 玲央先輩に詰め寄って、白銀くんは必死に訴えた。


「深冬もなんか感じてるわけ?」

「はい。それが何かはわからないけど……ここには、良くないモノがいます。絶対」

「玲央。あげはちゃんも深冬も危ないって言ってるんだし、止めるべきじゃない~?」

「ちゃんと謝れば視聴者のみんなもわかってくれますよ、きっと」

「うーん……」

 司先輩たちにも言われて、玲央先輩は困ったように頭を掻いた。


「でもさあ、せっかくここまで来たんだし。オレは行きたいんだけど。入口だけでも見てみない?」

「……どうする?」

 わたしたちはみんなで集まって相談し、やがて一つの結論を出した。


「わかりました、みんなで行きましょう。ただし、わたしの指示には従ってもらいます。わたしが危険だと判断したら、配信は止めて引き返してください。約束ですからね」

 玲央先輩の目をまっすぐに見つめて言うと、玲央先輩はうなずいた。


「わかった。じゃ、決まりな。司、今日の撮影役はオレがやるわ」

 玲央先輩は自分のスマホをいじり始めた。

 みんなで話し合って「行く」と決めたものの、白銀くんは不安そうにうつむいている。


「白銀くん。心配しなくても大丈夫だよ。何が出ようとわたしが対処する。通学路にいた悪霊だって、問題なく祓ってみせたでしょ?」

 除霊を頼まれた次の日に、わたしは白銀くんの目の前で悪霊を祓った。

 でも、あの悪霊は弱かった。

 このトンネルにいる悪霊とは、比べ物にならないくらいに。


「……本当に、大丈夫そう?」

「うん。任せて」

 わたしは自信たっぷりにうなずいた。

 本当は自信なんて全然ないけど、不安がってる白銀くんに、そんなこと言えるわけがない。


「……わかった。立切さんを信じる」


 ――信じる。

 その一言が、わたしの心に火をつけた。


「ありがとう。頑張るね!」

 それから少しして、玲央先輩がスマホ片手に配信を始めた。


「はーい、みんな、お待たせー! 心霊スポット巡りも今日でラスト! ってわけで、今日は激ヤバってウワサの蛇目山トンネルに突撃しちゃうよー! 最後までちゃんと見てねー!」

 玲央先輩が笑顔で手を振ると、物凄い速さでコメントが流れ始めた。


『ここマジでヤバいよ! 気をつけて!』

『幽霊出たらどうすんの!?』

『あんまり怖いとこ行かないで~泣』


 玲央先輩はニヤッと笑って、スマホのカメラをわたしに向けた。


「みんな心配してくれてありがとー! でも、大丈夫。危なそうだったら引き返すし、オレたちには最強の助っ人がいるから! な、キリヤ!」

「はい。おれが必ずみんなを守ります!」

『キリヤ』として笑顔を作り、拳を握ってみせると、コメントの流れが加速した。


『キリヤくんカッコいい~!』

『マジでイケメン』

『キリヤがいるなら安心かも!』


「他のメンバーの様子も確認してみようか! まずは司~!」

 玲央先輩はハイテンションを維持したまま、今度は司先輩にカメラを向けた。


「……うん、みんな、こんばんは~。ボク、全然平気だよ~? ちょっと寒いだけだから……ね? 大丈夫、大丈夫……」

 司先輩の笑顔は微妙に引きつっているし、声も上ずってる。


『司くんガンバ―!』

『怖がる司くん可愛いー! がんばってー!』


 コメント欄は大盛り上がりだ。


「光成、深冬、どうよ?」

 玲央先輩が二人にカメラを向けた。


「……ちょっと怖いけど、頑張ります!」

 本当は怖くて堪らないはずなのに、春宮くんは気丈に微笑んだ。


「おれも。気は乗らないけど、頑張る」

 春宮くんの姿に励まされたのか、白銀くんもうなずいた。


『きゃ~光成くんカワイ~!』

『二人ともがんばれ~!!』……コメントの流れが速すぎて、もう読み取れない。


「じゃあ、張り切って行ってみよー! 蛇目山トンネル、突入ー!」

 玲央先輩がスマホを構え、先頭に立って歩き出す。

 司先輩は唇を引き結び、春宮くんは不安そうにお腹の前で手を組んでいる。

 白銀くんは恐怖に耐えるように、両手を握りしめていた。


「クロ……いるよね、ここ」

 わたしはみんなと一緒に歩きながら、クロに小声で確認した。


「いる。強烈な怨念が渦巻いている。くれぐれも油断するなよ、あげは」

「うん」

 わたしたちはゆっくりとトンネル内に入っていった。

 電灯が灯っているけど、なんだかやけに暗く感じる。

 わたしたちの足音や話し声が壁に反響して、奇妙に歪んで聞こえるのも不気味だった。

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