12:白銀くんとの会話
「白銀くんと春宮くんは幼稚園で知り合ったんだよね」
「うん。集団生活に馴染めず、部屋の隅にいたおれに声をかけてきたのが光成。光成は変な奴だった。おれが他人に興味なくて、しゃべるのも嫌いだって知ってからは、ただ黙ってそばにいた。光成は人気者で、いつも引っ張りだこだったのに、何故か気づけばおれの近くにいるんだ。それも、べったりってわけじゃなくて。つかず離れずって感じの、微妙な距離を保ってた。きっと、おれに気を遣ったんだろうな」
当時のことを思い出したのか、白銀くんは目を細めた。
「最初は『なんだコイツ』って思ってたけど。そのうち、だんだん話すようになって。といっても、本当に、気が向けば話すって感じで、ほとんど黙ってたけど。沈黙が気にならない他人は光成が初めてだったな」
白銀くんがSEASONに入ったのは、リーダーの玲央先輩に誘われたから。
そして、玲央先輩が白銀くんを誘ったのは、一足先にSEASONに加入した春宮くんが「深冬は歌がうまいから、きっと人気が出ますよ」と玲央先輩に言ったから。
「白銀くんの世界を広げてくれたのは春宮くんなんだね」
話を聞き終えて、わたしは言った。
「うん。光成には感謝してる。光成がいなかったら、おれはいまでも他人を拒絶したまま――泣きも笑いもしない、自分だけの殻に閉じこもった、つまらない人形のままだったと思う。まさか配信者になるとは思わなかったけど」
「でも、SEASONとして活動してて、楽しいんでしょう?」
自分が楽しいかどうか。それが一番大事だ。
「うん。大変なときや、辛いときもあるけど。止めようとは思ってない」
「そっか、良かった。楽しいなら、それが一番だよ。わたしも応援……」
異変に気づいて、わたしは言葉を止めた。
うっすらとだけど……白銀くんの左肩に、黒い靄のようなものがかかっている。
「ちょっと失礼」
わたしは右手の中指と人差し指を立て、白銀くんに向かって斜めに振り下ろした。
わたしが飛ばした霊力の刃に切り裂かれ、黒い靄が消滅する。
「どうしたの? 何かいた?」
「誰かの念……だと思う。教室だと春宮くんばかり目立ってるけど、本当は白銀くんも春宮くんに負けず劣らずの人気者だから、他人の念を集めやすいんだろうね。身体に差し障るようなレベルのものじゃなかったから、心配しなくても大丈夫だよ」
「……念に憑かれてたなんて、全然気づかなかった。立切さんって、本当にすごいんだね」
感心したように言ってから、白銀くんは「あのさ」と遠慮がちに切り出した。
「個人的な頼みごとをしてもいい?」
「いいよ。何?」
「通学路の途中で、変な気配がするんだ。多分、何かいるんだと思う。もしおれの予想通りに悪霊だったら、祓ってもらうことってできる?」
「もちろん。任せといて!」
遠慮なんていらないよ、という意思を込めて、わたしはビシッと親指を立ててみせた。
「ありがとう」
安心したらしく、白銀くんが笑った。
その笑顔を見て、彼のことを守りたいと強く思う。
――自信たっぷりに「任せて」なんて言っちゃったけど。
祓うときは念のため、クロについてきてもらおうっと。
そんなことを考えていると、白銀くんがズボンからスマホを取り出した。
「連絡用に、ライン交換してもらってもいい?」
「うん!」
わたしは弾んだ声で言って、白銀くんとライン交換した。




