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死んではじめるビブライア  作者: 細川波人
一章 ハルネア
23/27

4 エリゼ転生


「ありがとう……。助けてくれてありがとう」


 貴族としての強がりを取り払ったその人本来の声だった。

 洞窟の中を明るく雑談をしながら歩き回り、恐怖という感情とウッツという共通の敵から逃げて、確かにその人の性格や魅力を知った。


 自分の立場のために強気な口調でキャラを被る一方で、本心は臆病で何もできない人間だと劣等感を抱き、それでも弱くて余裕がなくとも、自分よりも他人の身を先に考える優しさがある。


 あの心を写したように揺れながらも反らされることのない赤い瞳。涙を貯めた彼女の言葉を俺は覚えている。


 どこだ。どこに行ったんだよ。


 あの姿を覚えているのに。あの心を覚えているのに。何故かその人はどこにもいない。記憶の断片の中でしか生きられないかのように同じ言葉を伝えて、同じ悲痛な表情を浮かべるだけ。何度も何度も。


 エリゼ、エリゼ、エリゼ!


 暗闇に溶けていく彼女の頬に手を伸ばす。魂が魂に触れようと体が千切れるほどに暴れまわる。けれど、届かずついにはエリゼの影は消える。当然だ。だって……。


 自分の伸ばしていた手にはよく見た裂傷が残っていて血が滲んでいる。そこから意識が体を上って金髪と自分の赤い目へ。


 俺が消してしまったんだから。


 

 目を開くと白い天井が広がっていた。その真っ白な空白に向かって手を伸ばしている。包帯の巻かれた華奢な手だ。


 この天井……確かあのあと……。


「う……」


 頭が重たい。目も腫れぼったい。心臓が激しい運動をしたあとのように脈打っている。


 あのあと……エリゼに転生したと気付いてから、受け入れられなくて子供のように泣き叫んで、ストレスを処理しきれなくなった頭が正気を守るためにスイッチを落とした。……ってところか。


 伸ばしていた手をこちらに向けると、有畑奏真だった頃よりも細く繊細な指先があった。馴染みはないが見覚えのある指先だ。


「エリゼ転生。夢じゃない……か」


 薄い掛け布団、寝心地のよいベッド。そこへと差し込むのは平穏を語りかける白い日差し。そんな心地よいまでの空間で、俺はエリゼの体を操って絶望的な心情で目を覆った。


 六十三回目。転生ポイント51。選んだ転生先は人間。


 ここまでは間違っていなかった。人間に転生してエリゼを守ろうという考えは間違っていなかった。


「ただそれはなしなんだよ」


 ビブライアの理不尽さに歯を控えめに噛み締めながら、俺とは思えない声を出す。その声がまた俺に責任を押しつけてくるが、冷静さはどうにか保てていた。


 どこからまとめるべきか。言いたいことなんて山ほどある。何でエリゼに転生させられたのか。何で転生ポイント51でマイナスの境遇補正がかかっているのに貴族に転生できたのか。どれも答えの出ない類いの不満で、今口にしたところで変わらない。

 いつまでたっても理不尽なビブライアに、文句を言う時間は過ぎていた。最初の気絶までの記憶のない間に言いたいことを言い尽くしてくれたのかもしない。


「――罪悪感とか絶望は抱いているだけじゃ意味がない。責任を取るつもりならここからどうするかだ」


 転生部屋よりもベッド一個分広い部屋。あちらとは違って窓もあって健康的に日差しが部屋を照らしている。

 部屋に置いてあるものは机に鞄に衣装箪笥……。部屋と思い浮かべて想像できるものばかり。意味のわからない構造の本を置いているあの部屋とは違い人間の生活感が垣間見えて落ち着く部屋だ。

 手のひらの傷が痛まないように気を付けながら、ベッドの近くの窓にかかるカーテンを指先で捲る。強くなった日光に目が細められた。


「本当に転生したんだな……」


 快晴の青空の下にあったのは街路樹の立ち並ぶ路地を挟んで建つ灰色の建物たちだった。どれも似たデザインの建物ではあったものの無機質な様子はなく、茶色い支柱とベランダにかけられたちょっとした植物などで人間の味を出している。紛れもない。これまで味わうことのできなかった人間の世界だ。


「エリゼの言ってたエーレライト鉱石で一儲けした近隣の街ハルネアってところか」


 人が笑顔でこの家の前を通り過ぎていく。茶色い袋を持って片手で子供の手を引く母親。昼間の散歩でも楽しんでいる老人。仕事着を来て鞄の中から何かを探している男性。


「……ここから一時間でオオカミに襲われたり狩人に銃殺されたりしないことだけは安心か」


 こちらの視線に気付いて手を振っていた子供に手を振り返してからカーテンを静かに閉じた。


 転生ポイント51。誰に転生したかについての問題はあったものの、環境としては確かに改善されている。街中で、人の雰囲気も穏やかで、簡単には倒壊しなそうな普通の家があって、衛生的な治療を受けられる環境も整っている。


 悪くはない。転生先の境遇は悪くはないんだ。ただ、転生者の心への配慮は悉く足りてはいないし、むしろ最悪な転生先ではあるんだけど。


「転生ポイントに準じたんだ。不満はないだろう」とビブライアがあの無機質な文面を見せつけてきているようにも思えたが、その皮肉を俺は目を瞑ってから無視をする。


「はぁ。問題だらけだよ」


 まだ味わっていない転生ポイント51でのマイナスの境遇に、向こうの空間で読んだデス本に書いてあったネクロマンサーの二度目の襲撃。


「そして、エリゼの人格の喪失……か。これが一番の問題か」


 それを成したシステムの本人はこれをマイナスとは思っていないのだろうが、今一番俺の心を傷付けているのはこのエリゼを失ったという感覚だ。

 胸に手を当てて自分の中にエリゼがいないかと呼びかけようとする。しかし、思いの外分厚くて柔らかい感触があって、焦ったように胸から手を離した。


「はぁ。あの娘の体を好き放題できる! とかは本当に幻想だったか。本当にエリゼ転生なんてデメリットしかないって」


 体の扱いで変な方向に思考が向いたが、それでもふざけきれないだけの現実があって、不意打ちの心臓の高鳴りが遠ざかっていく。

 手を握って痛みで自分を保とうかとも思ったが、それもエリゼの体を傷付けることになるのだと気がついて、代わりに柔らかく手を握った。


「転生について都合よくしか解釈してなかったツケか……。そもそも転生した先の人格について考えてなかったけど、どんな可能性があるんだ?」


 パッといくつかの異世界ものの作品を思い浮かべる。すると大抵最初に浮かぶのは最悪の可能性。


「……完璧な上塗り。魂が戻されることなく一生移り変わったままになるやつか」


 これが転生ものの鉄板だろう。転生してその人の代わりに人生を謳歌する。身分や力を付けて変わった人格が世界を楽しむパターン。


「よく見かける話だし何の疑問も持ったことなかったけど、本体の人格はどうなってるのかって話にはなるよね。俺もこうやって守りたい人を塗り潰して初めて気がついた訳だけど」


 あまりにも遅すぎる後悔だとは思う。人間ではないが既に六十を越える魂を犠牲にして気が付いた。他の転生主人公たちとは違う。何度も何度も転生をしてきた中で気付けなかったのは、馬鹿を通り越して愚かでしかない。

 

「……消えてなくなったのか。それとも体のどこかで眠っているだけなのか」


 前者は考えない。可能性はあるし受け止めるべきではあるが、受け止めたくはないので、エリゼを取り戻せる方だけを考える。


「ここまでの転生でそれ関連の情報はゼロ。経験もなし。でも、ネクロマンサーがいるとなると、魂に干渉したりとかは技術的に可能なのかもしれない。どっちにしても……」


 いつの間にか歩き回っていた足を止めて振り返る。室内と外とを隔てる何の変哲もない扉と向き合った。


「今は生きていくしかないか。このエリゼの体で」


 罪悪感も不安も全てを忘れて前を向く。そして、触れられるドアノブを回してから奥へと押し込んだ。



 部屋を出て真っ先に見えたのは窓だった。何の変哲も飾り気もない窓。そこから視線を横にずらしていくと広がっているのはこちらも普通の廊下。絵画が壁に飾られることもなければ、立派な花瓶に花が活けられていることも、護衛や使用人が仕事をしているなんてこともない。


 ビジネスホテルの廊下や雑居ビルの狭い廊下の方が想像に近いだろうか。一般的な廊下よりは少し幅あるが貴族の屋敷らしさはない。幅も四人並んでは歩けるけど五人目で怪しくなるぐらいの幅。実用性だけを追求した無駄のない通路だ。


 右に左にと頭を動かす。左の突き当たりにはドアが一つ。右の突き当たりには壁があってやや開けている様子。


「二階の部屋はあの奥のとエリゼの部屋とその隣に一つか。で、向こうの開けてるところが階段かな」


 窓を通り過ぎて朝の心地よい空気感を体に浴びながら右の方へ。たどり着いてみるとやはり階段で、短い階段がコの字で下へと向かっていた。


 一人言だったり足音を立てたりしても、ここまで他に人の反応はなし。エリゼとして最初に目が覚めたとき、近くに姉であるテレーゼがいたが、こうして動き始めても現れないところを見るに、一階にいるのか留守にしているかなのだろう。

 曲線美の美しい手摺にそれとなく指先を乗せる。


 ……まずは身近で顔も名前もわかるテレーゼと接触して情報と世界観を掴んでいくか。今は妹のエリゼという立場。信頼度の高い情報が手に入るはずだ。


 手摺を強く掴みながら階段をふらつく体で下りていく。俺と別れたあとにエリゼたちにどんな逃避行があったのかは知らないが、この肉体の疲労からして決して楽ではなかったようだ。


 折れ曲がった階段を下り終えて一階の廊下を慎重に歩いていくと、どこからか紅茶の香りが漂ってきた。


 留守じゃなかったか。


 心地よくて少し懐かしく感じる香りを追って、廊下に面した開けっぱなしの扉の向こうにお邪魔した。

 左側にエリゼの部屋と似た女の子らしい雰囲気の薄紅色に占領されたキッチン。その逆側にはちょっとしたリビング。そして、そこのテーブルに腰をかけて本だの新聞だのを積み上げて、紅茶の香りを漂わせながらそれを読み漁る女性が一人。


 さらりとした細く長い金髪に高貴さを醸し出す赤い眼差し。間違いないテレーゼ・オーレンシュケンだ。


 寝起きの絶望的シチュエーションからの再会。気を失う前にどんなやり取りをしたか記憶がないため、つい言葉に迷って喉が固くなる。


「テ……」


 名前を呼びかけようとして口が止まる。この転生が始まった直後のやり取りを思い出したのだ。

 最初は名前の呼び方でテレーゼの不審をかった。呼び捨て、ちゃん付け、敬称。その全ては失敗だった。けれど、今ならわかる。エリゼなら……妹なら……。


 ――確かこうだったか。


「テレーゼお姉様」


 声に反応してテレーゼの赤く鋭い目がこちらに上がってくる。それにいすまいを正してしまうのは、エリゼの体に残っている習慣なのか、気の小さい俺のメンタルなのかはわからない。


「何だ」


「えーと、おはよう!」


「もう早くはないがな」


「……うん」


 思いの外厳しい返しが来てつい口を噤む。初対面の相手の意識が強いのだが、テレーゼの方からの距離は近くて厳しい。この人間関係に対する差は人間転生での課題なようだ。

 部屋の入り口に立ったままというのも息苦しく、ひとまずはキッチンの方へと逃げるように進んでいった。 


「今朝はひどく錯乱していたようだったが、もういいのか」


「あー、うん。ちょっとね」


 正直には語れないため言葉を濁す。それに満足してくれた様子は見受けられないが、テレーゼは手元の新聞に視線を落とした。


「昨日のゾンビがよほど身に染みたか?」


「ゾ、ゾンビ?」


「あれだけゾンビが助けてくれたと、しつこく私に話していただろう」


「ああ、そっちか」


 俺の正体を見抜かれたのかと焦らさせられたが、どうやらそうではなかったようだ。ついでにエリゼがネクロマンサーの操るゾンビに襲われて大変だったなという話でもない。エリゼから見たゾンビの俺への話だったらしい。

 エリゼがゾンビだった俺を気にかけていた。俺が死んで、目的だったテレーゼと合流したあとでもそうだったらしい。ただのゾンビだって割り切ってしまえば楽なのに。


「エリゼらしい……」


「頭でも打ったか?」


「いいや、ごめん」


 エリゼが絶対にしない類いの独り言にテレーゼの指摘。エリゼの人柄に浸っていたかったが、今はそんな場面じゃない。不信感を抱かせないように、何も知らない中でエリゼの日常を再現しなくては。

 ひとまず、浮き足立ちそうだったので、椅子に座って物理的に足を床に押し付ける。正面に座るテレーゼが、怪訝そうに元から斜めに傾いた眉の角度を厳しくした。


「……紅茶でも飲むか?」


「うん。ちょっと寝起きで水分足りてなかったかも」


「わかった。少し待て」


 洞窟で会ったときよりもほんの少しだけ声音を穏やかにし、テレーゼは席を立ってからティーセット一式を盆に乗せて持ってくる。流石は異世界。当然のようにティーポット。それとあれはなんだろうか。丸い入れ物もセットだ。


「砂糖は?」


 あー、砂糖か。


「砂糖ね。うん。少しだけ」


「いいだろう」


 糖分の取りすぎは頭をぼんやりとさせるが、少しは取っておかないと体が回りそうにない。それに転生生活が始まってから人間の食文化から離れてきた。少しは味気が欲しい。


 ドサッ。


「ドサッ?」


 装飾のないシンプルなティーカップ。その中には白いお山が一つできていた。


 ……目が霞んでいるのかな? 砂糖の山がティーカップの中にある気がする。あー、やっぱり、気のせいか。ほら、紅茶をかけたら消えたし問題ない問題ない。


「わざわざお前のために私が入れた紅茶だ。ありがたく飲め」


「……いただきます」


 まずはティーカップに手を当てて温まる。この人為的な温もりは他の動物では味わえなかった感覚で心にくる。そして、このリラックス効果のある紅茶の香りが、今の周囲の安全を伝えてくれる。そして、紅茶の味は……。


「ただ甘い」


 花の蜜よりもはるかに甘いどころか、最早甘さ以外が消え、ドロリとしたベタつきは飲み物から食べ物へと変体を遂げようとしている。これは人間らしい食文化じゃない。ケダモノの食事だ。


 ……人間に戻ってから初めて口にする食事なら、感動するって思ってたけど。うん。これはないな。口直ししよう。


「喉が乾いたから飲み物取ってくる」


「そうか。おかわりだな。任せろ」


 任せるか!


 なんとかエリゼらしさを保つように苦笑い。陰鬱な気持ちは薄れるけれど、胃のムカつきが代わりに現れる。

 キッチンに行ってから新しいカップを探してテーブルまで持ってくる。そこからティーポットだけ借りて紅茶を入れた。こっちは甘くない。


「ふぅ。さて」


 順序がハチャメチャになったけれど、異世界転生始めようか。まずは情報収集。怪しまれないような言葉選びで必要な点だけを知る。手始めは昨日の俺が死んだあとのエリゼのストーリーからだ。

 甘い紅茶と甘くない紅茶を目の前に二つ並べる。その向こうで相変わらず新聞を片手に紅茶を飲んでいるテレーゼに声をかけた。 


「そういえば、テレーゼお姉様。あのネクロマンサー。素性はわかった?」


「さあな。魔法協会と騎士団には一報は入れたが、記録されていないネクロマンサーだった。近い内にスーレ鉱山とこの街に調査のため人員が派遣される。それ次第だろうな」


「つまり素性もわからず生きていて逃亡中って感じか」


 転生ポイント51。平均の境遇からマイナス449。二桁になったことで命の危険からは逃れられたかとは思ったが、生憎そんな簡単にはいかなかったらしい。


 テレーゼがまた新聞を広げて字の列に目を落とす。紅茶の暴挙はあったけれど、知的でお堅い印象は変わらない。


 ――ダラグリア魔法帝国との戦争状況。――無刑罪人『人狩り』が潜伏中。――愛犬のぺぺを探してください。


 テレーゼの読む新聞の裏の見える字だけを読んでみた。内容的にはまあ想像通り。戦争や犯罪者。犬探し。この辺りは日本とかとあまり変わらない話題だ。


 というか、俺って文字読めたんだ。他の生き物のときって自動翻訳付いてなかったけど、人間は例外なのか。


「エリゼ。そろそろ一息はついただろう。仕事に入れ」


「は? し、仕事?」


 貴族で、領主の娘で、この年齢で仕事?


 完璧に予想外の展開だ。貴族の娘なのだから漠然と優雅な日課を送っていると想像していた。しかし、現実はそうだ。仕事があるし、学業がある。当然の話。


 でもピンチじゃないか? これで貴族のご機嫌伺いだったり、商談だったりしたら、どうしようもない。異世界、中世的な世界観、人間関係。傾向も対策も存在しない。どうする?


 何をさせられるのかとビクビクとしていると、テレーゼが新聞から時計へと視線を動かして、俺の目を誘導する。針は十一を指している。


「早く食事を作れ。いったい私を何時間待たせるつもりなんだ」


「もしかして仕事って?」


「朝食がまだだろう」


「そっちだったかー」


 エリゼの役割が完璧に把握できた訳ではないが、どうやらこの場所で家事の類いを担当しているようだ。それはそれで貴族の生活とは少し想像と違っているが、その日常的な仕事内容に助けられた。


 肩の力が抜けてふっと息を吐く。フローゼがなんだその反応はと言いたげに片目を細める。


 そして、フローゼは朝食を作る人がいないからと、わざわざエリゼが起きるまで待っていた、なんて展開だ。これが貴族出身のお嬢様だそうだ。


「自分で作って済ませてたらよかったのに」


 テレーゼの怒りを買うだろうと思いながらも一言。これはのちのちエリゼが戻ったときのためへの粋な反発だ。


 その結果怒られるだろうと身構えていると、意味ありげにテレーゼは溜めを作り、新聞へと顔を向けたまま目だけを鋭く上げた。


「――それは私が白煙の魔女だから火の扱いもうまいだろうと言う話か?」


「違うけど、確かにそうとも言えそう……かな?」


「残念だな。私は白煙の魔女だぞ」


 二回言わなくても知ってる。エリゼが自慢気に話していた。ただ、わざわざ言葉を繰り返すんだ。重要な意味があるかもしれない。


 何かまずいことを言ったのかと警戒心が出て気持ち一歩退く。それに対してテレーゼはついに立ち上がって、その腕を組み……。


「敵を焼くのに火加減は必要ない。わかるか? 私は常に最高火力で焼き尽くす。火加減などできると思うなよ」


 ツンとした澄まし顔にどこか誇らしげに光を浴びた。


 ……わかった気がする。


 このテレーゼの評価について迷うところはいくつもあった。洞窟にエリゼを助けにきたかと思えば口は悪くエリゼを傷付ける。さっきは体を心配してくれたかと思えば激甘紅茶だし、こうして息をつく暇を与えたのも結局は自分の食事のため。


 結論……。


 このお姉様は性格が致命的なほどに終わっていらっしゃる。


 物騒すぎる話でドヤ顔を決めてくれたテレーゼに対して抱く感情は、妹としての姉への尊敬ではなく、今抱いているこの感情が正しいものだと直感的に感じ取った。


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