第八十二話 改竄
そんな事を思い出していると、モラやネブラに続いて、ハデスが消えた。そして空間には、私とペルデレだけが残った。
「……どうやって人間界に行くのか、聞き忘れた」
私が小さく呟くと、ペルデレはゆっくりと口を開いた。
「記憶や状態を維持している者を、改竄者と換言する事が可能だ。改竄者は、一遍だけ己の情報を書き換える事が出来る」
「……例えば?」
「自身の存在する居場所などの外部的環境だな。だが、改竄できる点は一つだけだ」
どうやら、心で念じる事がそれに当たるらしい。
(私の存在場所は、人間界だ)
「……戻る時間は?他の人達は生まれた時からみたいだけど……私はいつから戻るの?」
私はペルデレにそう問いかけた。
「消去した存在の規模によるが、基本的に現在の時間軸だ。俺の場合でも最長で1年前程度だったな」
「……そう」
その瞬間、心臓が焼けるように激しく痛んだ。
「うっ……」
私はその場に膝をついた。
何かを無理やり捩じ込まれるような感覚が走った。
視線を上げると、ペルデレが笑みを浮かべていた。
「……お前、何をした?」
「眷族には魔力を与える事ができる。俺の今の生命エネルギーを全て消費して、送り込んだ」
ペルデレは口から血を吐いていた。
「何故そんな事を……」
「……それは己で知るが良い」
その瞬間、ペルデレの姿が消えた。
そして、私の視界は一瞬でブラックアウトした。




