第七十八話 境界
「もしかして、生存確認もあるけど……アモーレさんを蘇生できる手立てを探しているの?」
モラは私にそう問いかけた。
「……それも含まれるかな」
私は小さく答えた。
しばらく歩くと、私達はあの場所へと戻っていた。周囲はすでに荒野と化している。
「もう、いなくない?」
「……いや。いると思う」
「分かるのか?」
「何となくね」
私はそう言った。
私達は瓦礫を退け始めた。一つの瓦礫を退けた時――そこに、肩から上だけが残ったペルデレの姿があった。
「ひっ……」
モラは腰を抜かし、その場に尻もちをついた。
「……止めを刺しに来たか」
ペルデレは小さく呟いた。
「お前は、世界を再構築できるのだろう?」
「そうだが……何だ?」
「……魔界と人間界の境界の存在を消し去り、世界を再構築することは出来るのか?」
「レナ、何言ってるの!?」
「……おい」
二人は驚いた様子で声を上げた。
「俺が所有権を持つ存在でしか、それは出来ない。それに、莫大な魔力を必要とする」
「所有権をお前に譲ればいい。それに魔力は……お前の生命エネルギーを使えば可能だろう」
私はそう言った。
「何故、その様な事をしなければならない」
「そう。なら――此処で殺す。どちらが自分にとって有利になるか、よく考えるんだな」
「……いいだろう。此処で待ってやる」
ペルデレはそう言うと、静かに瞳を閉じた。
「ちょっとレナ、それどういうこと?」
モラが詰め寄る。
「……境界そのものを消すことで、魔界と人間界を繋ぐ架け橋を断つ。人間は魔に、多くのものを奪われてきた。私は……人間達と共存することは出来ない」
「でも、アモーレさんは――」
「スパティアと会うことは、なくなる。でも……人類は死にすぎた。これ以上の犠牲を減らすには、この方法しかないと思う」
「……でも」
モラは言葉を詰まらせた。
「勝手に決めて、ごめん。でもこれが今、私達にできる良い選択だと思う」
「……しかし、境界の所有権を持っていないだろう?」
「それは考えがある。ハデスが持っているらしいからね」
「……交渉するの?」
「取引かな」
私はそう言って、歩き出した。
「……その“考え”とやらを、聞かせてもらおうか」
ネブラの声を背に、私達は城へと戻った。
翌朝、私達は作戦を実行する為、移譲神ダーレがいるという窮鳥崖へと向かった。
「いつまで落ち込んでるの?言ったでしょ、そんな顔しないでって」
モラは明るい声で、私にそう言った。
「……それで、冥界に送ってほしいってこと?」
ダーレは怪訝そうにそう言った。
「うん。お願いします!」
モラは力強く頷いた。
「魂だけを冥界へ送れるんでしょ?」
「……まぁ、出来るけどさ。帰ってこれないかもしれないよ?あと、それ……破壊神だよね」
そう言いながら、私達の傍に浮かんでいるペルデレを指差した。
「色々あってな。頼む」
ネブラが短く答えると、ダーレは小さく溜息をついた。
次の瞬間――視界が歪み、三人の意識がふっと遠のいた。




