第七十七話 雨に打たれて
次回最終章です。
「ネブラ、モラ……」
「レナ!」
モラがそう言った瞬間、私に抱きついてきた。顔には涙が浮かんでいる。
「本当に良かった……生きてて!」
「……実はな」
「聞いたよ。死霊使いの女に」
「そうか」
ネブラは短く答えた。
「……二人共、聞いてほしいことがあって」
「もう長くは生きられない。そうでしょ?」
モラが静かに言った。
「……何で」
「その死霊使いに聞いたの。力の許容量とか。それにしても、死ぬって実感ないね。……そういえば、ここどこ?」
モラは周りを見渡しながらそう言った。
「隣国だよ。私達が元いた国は滅んだから」
「……えっ、どういうこと?」
「あの国にいた人間は、全員死んだんだよ」
「……そんな」
モラの目に涙が滲む。
「……大丈夫だよ、モラ。スパティアの仇は取ったし」
「何が大丈夫なの?だって、こんなの……私達のせいで死んだようなもんじゃん!」
「……そんなことないよ」
(モラも、あの死霊使いと同じようなことを言うんだな)
「……うっ」
モラは涙を拭った。
「……そんなに悲しまないでよ。どうせ、これから死ぬんだし」
「……何でレナは怖くないの?今の状況が」
「だって関係ないでしょ?私達は、死んだ人達と喋った事も関わった事もないんだよ」
「……レナは、もっと優しい人だと思ってた。人に寄り添えて、どんな時も支えてくれて……私の勘違いだったみたい。もう顔も見たくない!」
モラはそれだけ言うと、走って立ち去った。
「おい」
隣からネブラが声をかけてきた。
「何故、あんな言い方をした?」
「何が?ネブラはこっち側でしょ」
そう言うと、ネブラは眉をひそめた。
「……追いかけたらどうだ」
「別にいいかな」
「何故だ。お前、何があった?」
「……じゃあ、さよならネブラ」
私はそう言い、その場を立ち去った。しばらくすると、雨が降り出した。私はそのまま顔を濡らした。
「ごめん、二人共……私は、怖かったんだ」
私はきっと、考え方がズレている。だから、二人から離れるために、わざと嫌われるようなことを言った。二人に嫌われることが怖くて。
「……何が怖いの?」
声がして振り向くと、そこにモラが立っていた。
「何で……」
「レナが泣いてるのが見えたから」
私は涙を拭った。
「……嫌われたくなくて。それがどうしても怖くて……私はどうかしてるんだよ。モラの言う通りで、優しくなんかないんだよ!」
「それ、ちゃんと言ってよ……!」
「えっ?」
「言わなきゃ分からないよ。……それに、私は相手を否定したくない」
「違う。私がさっき言ったこと、少しは本音なの。私は……私は――」
「私は違いを拒まないよ。もちろん、譲れないこともあるけどね。亡くなった人達のことは、やっぱり考えちゃうし」
「モラ……また探させちゃったね」
「そうだよ。でも前よりは簡単だったけどね。ネブラが教えてくれたから」
モラが後ろを見ると、そこにはネブラが立っていた。
「お前ら、城に戻るぞ」
「はーい。レナ、行くよ!」
差し出された手を、私は取った。
「……」
夜、私は眠れずに目を覚ました。隣では、モラがぐっすりと眠っている。
「……お母さん……お父さん……」
モラは毎晩、寝言でそう呟いていた。
「……」
翌日、私は城を出ようとしていた。
「どこ行くの?レナ」
「……二人共、ついてきてほしい」
「何をするつもりだ?」
ネブラが私に問いかけた。
「破壊神を見つけに行く」
「……私達、もう倒したでしょ?」
モラが不思議そうに言う。
「さあ、どうだろうね」
私は小さく答えた。
「まあ、行くとしよう。生きていると困るからな」
ネブラはそう言った。
「えー……もう破壊神の名前聞くのも嫌なんだけど」
私達は、破壊神ペルデレを倒した場所へと向かった。




