表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Frange ruinam   作者: S
毀壊編
76/84

第七十六話 反魂墓地

意識が戻り、目を開けると、そこは御稜威山の山頂だった。目の前にはパナケイアが佇んでいる。


「……気がついたか」


「……何で此処に?」


「結末を見届けようと思ってな。其方と破壊神を探していたのだ。そこで瀕死の其方を見つけたという訳だ」


「そう助かった。……周りにネブラとモラはいなかった?」


「見ていないな」


「でも、いたんだよ。少し変だったけど」


「何処がだ?」


「言葉があまり上手く喋れていなくて……気のせいかもしれないけど、体が少し透けて見えていたし」


「……あの女か」


「あの女?」


「隣国にいる死霊使いだ。我の予想が当たっているのなら……そこに二人はあるぞ。反魂墓地にいる事が多いな」


パナケイアはそれだけ言うと、姿を消した。


死霊使い……死者や幽霊を操る能力を持つ者。反魂墓地は聞いたことがある。人間の間で語られる都市伝説の一つだ。その墓地では、死体が息を吹き返すと言われている。


「……待ってて、二人共」


私は隣国に向かった。そこで、ムリエルに反魂墓地の場所を聞き、辿り着いた。


「……ありがとう」


私はそう言い、ムリエルに頭を下げた。

日が落ち、辺りは静まり返っていた。


「……夜の墓地は不気味だな」


「そうかしら?アタシはここ、夜が一番輝ける場所だと思うわ」


声のした方へ振り向くと、一人の黒髪の女が立っていた。


「あなたが死霊使い?」


「そうよ。アンタはペルデレの眷族よね?聞いたわよ。破壊神を討ち取ったって。凄いじゃない」


「それで……」


私が口を開こうとしたその時、死霊使いは掌に淡い光を浮かべた。


「アンタが探しているのは、コレでしょ?」


「それって、もしかして……」


「――魂」


嫌な予感が走った。二つの魂。死霊使い、言語能力の低下、半透明化。――もしかして二人は既に死んでいて、幽霊状態の二人をこの死霊使いが操っていたのではないか?


「ネブラとモラ……」


「人間と悪魔の幽霊が彷徨っていてね。二人共、何かを呟いていたのよ。何て言っていたかしら。確か……『待って』とかかしら」


「……!」


「幽霊は基本的に言葉を発することはできないんだけど、よほどの未練があったみたいね。そこで、近頃耳にした話を思い出したのよ。ペルデレに喧嘩を売った愚人がいるってね」


「……愚人って」


「それがこの二人だとしたら、アタシの選択で戦況が変わるかもしれない。そう思って、二人を仮死状態にしたのよ」


「仮死状態?」


「えぇ。アタシは蘇生はできない。だけど、一時的に息を吹き返させることはできるわ。アタシの力を与えて、だけどね」


「それで言葉が途切れ途切れだったの?」


「えぇ。アタシから距離が遠いほど、力が弱まるからね」


「……もう一度蘇らせてくれない?」


「良いけど……別れの言葉かしら」


「えっ?」


「力を使い果たしたら幽霊に逆戻りするわ。そして今は、アタシの能力で魂として手に収まっている。力の許容量は決まっていてね。理由としては、魂が耐えられないのよ。蘇生の負荷に」


「つまり、もう……」


「えぇ。もう一度やれば、程なく消滅するわ」


「……」


私は言葉を発することができなかった。

――もう二人は。


「それで?早く決めてちょうだい。アタシは魂として保持しているだけで、かなり魔力を使うのよ。魂を操る能力って訳でもないからね」


「……」


もう一度会いたい。けど、そうすれば二人は消滅する。でも、このまま死霊使いが持っていれば、何か打開策があるかもしれない。それを探せば――


「……今決めて。あんたが決められないなら、この魂は離すわ」


「……!何で?」


「言ったでしょ。持っているだけで重りになるのよ」


どうすればいい。二人を失いたくない。けど――


「……あんたらは、人間達から極悪人と言われるのかしら」


死霊使いは笑ってそう言った。


「えっ?」


「そうじゃない?よく考えてみなさい。国一つが滅んでいるのよ。大体6000万人が死んだわ。あんたらのせいで」


「……何言ってんの?殺したのは――」


「破壊神ペルデレ。……本当にそうかしら?こんな大きな戦を起こさなければ、死ぬことはなかったんじゃないかしら」


「……」


「復讐ね。……良いんじゃない?命の価値は人によって違うものだし。まあアタシの事じゃないし、どうでもいいんだけど」


「……?」


何故、この言葉は私に響かないのだろうか?二人に会えないと考えると胸が締め付けられる。それなのに、人間が多く死んだことには何も感じない。


つい先日、人を殺した。そのことには罪悪感を抱いている。自分の手で殺したからだろう。魔は人間に興味を抱かない。――これが、そうなのだろうか。


「……蘇らせて」


「分かったわ」


死霊使いが手を開いた瞬間、辺りが光に包まれた。

再び視界が開けた時、ネブラとモラが立ち尽くしていた。


死霊使いはこちらを見て微笑むと、そのまま立ち去った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ