第七十四話 砕氷
光がペルデレに直撃した。莫大な光が爆発し、辺り一面を純白の閃光が飲み込んだ。衝撃波が地面を抉り、土煙と光の粒子が渦を巻く。爆心地でペルデレの体が大きくのけぞり、胸と腹を貫通する傷を負い、大量の血を流していた。
「ぐっ……」
ペルデレの口から、苦痛の声が漏れた。
……当たった。
ようやく、当たった。
この傷は回復しない。私の光も密度を高めると、シルフと同様に再生を封じることが出来る。これでペルデレは意識の維持の為、魔力をさらに消耗することになる。このままなら魔力切れも狙える。
そのまま動こうとした、その瞬間、私の膝が、ガクンと折れた。
「……えっ?」
体から力が抜ける。そして、口から大量の血が滴り落ちた。
――おかしい。
魔力切れだけではこんな事にはならないはずだ。私は不意に、前に破壊神と戦った時のことを思い出した。あの時のモラは魔力切れを起こしていたというのに、魔力を使っていた。そして口から大量の血を吐いて倒れた。
足りない魔力は、生命エネルギーを無理やり引きずり出しているのか――?
視界がぐらりと傾いた。
「おえっ……」
息ができない。指一本動かすのもままならない。視界が暗くなっていく。ペルデレが、ゆっくりと立ち上がった。傷は深い。それでも動いていた。ペルデレは口の端から血を拭い、笑みを浮かべた。
「……終わりだ」
一歩、また一歩。ペルデレが近づいてくる。足音が、鼓動のように頭の中に響く。拳を握りしめ、こちらに向かって振り上げられた。
――死ぬ。
そう理解した。体はもう、指先すら動かない。意識が遠のく。視界が完全に暗くなりかけた、その瞬間、目の前に真っ青な氷が現れた。そして、私は何者かに蹴り飛ばされ、地面を転がった。
ペルデレの拳が氷を容易く砕き、私がいた地面を叩き割った。
「誰……?」
声にならない声で、呟いた。
その姿は、ムリエルだった。
「元気かい?少女」
「……何故此処に。駄目、早く逃げて!」
私は咄嗟にそう言った。
人間が勝てるはずがない。
また私のせいで、被害を増やすのだ。
「……やはり、私達どこかで会ったことがあるのか?」
ムリエルは真剣な眼差しで問いかけた。
「……早くして」
「君は私の恩人に似ているな。だからこそ、死なせる訳にはいかないよ」
「何故、此処が分かったの?」
「その恩人の連れである悪魔と少女に出会ったんだよ。二人は君を探していた。それで私は協力して、君を探しに来た訳だ」
ムリエルはそう言った。
悪魔と少女。――ネブラとモラ。
生きているのか。
「……良かった」
小さく呟き、涙を堪える。
「こんな話をしている場合じゃないね。とりあえず、ここから離れよう」
「……後ろ!」
ムリエルに向けて振り下ろされる拳。ペルデレがすぐ背後まで迫っていた。
その瞬間、煙が舞った。視界が遮られ、衝撃音が響く。そして――煙が晴れた時、そこに立っていたのは、ネブラとモラだった。




