第七十三話 運命
「……いいだろう。さあ――いざ、闘おうではないか」
私が踏み込むより早く、ペルデレの姿が消えた。直後、振り返ると同時に、拳が視界を薙いだ。咄嗟に身を捻り、頬を掠める。
地面を蹴り、距離を取った。右手を掲げると、無数の光の矢が空中に形成された。腕を振り下ろすと、光が一斉に降り注ぐ。
ペルデレは矢の間を縫うように走り抜けた。
一瞬で間合いを詰められる。
私は咄嗟にシールドを展開したが、それは容易く砕かれた。後方へ吹き飛び、地面を削りながら着地した。
すぐに立ち上がる。光を凝縮し、踏み込みと同時に突き出す。一直線に放たれた光が胸を狙った。
ペルデレは身体をずらしただけで、それを避けた。光は虚空へと消える。私は続けて、光の銃を形成し、光弾を連射した。
四方から同時に迫る弾を、ペルデレは最小限の動きで避け続ける。一発が肩を掠める。だが、それだけでは致命傷にはならない。
「左脚が再生した絡繰は何?」
私はペルデレに問いかけた。
少しでも打開策を見出さなければ、このままでは死ぬ。
「……意想外な力とだけ教えておいてやる」
次の瞬間、ペルデレの姿が視界から消えた。反射的に横へ跳ぶ。直後、元いた場所の地面が抉れ、遅れて衝撃が叩きつけられた。
着地と同時に、さらに距離を取る。だが、横からペルデレの拳が迫った。私は咄嗟にシールドを展開し、無理やり受け止めた。シールドが砕け、衝撃が腕から肩へと突き抜ける。体が宙へと浮いた。
――まずい。
空中で体勢を崩したまま、追撃が来る。その瞬間、私は強引に魔力を放出し、拳の軌道を逸らした。紙一重で直撃を避ける。
私はそのまま地面に転がった。
呼吸が乱れ、視界が揺れる。
顔を上げると、ペルデレはすでに目の前にいた。
「……終わりか?」
――勝てない。
頭の何処かでは分かっていた。
攻撃は当たらない。魔力も桁違いだ。
「……っ」
それでも、やらなければならない。
――私は、Frange ruinam 運命なのだから。
ゆっくりと立ち上がる。
そして――右手を掲げた。
「……終わらせよう、破壊神ペルデレ」
呟きと同時に、周囲の空気が変わる。莫大な光が手に収束し始めた。空間が軋み、足元の地面に亀裂が走る。残る魔力のすべてを、ここに注ぎ込む。
ペルデレが、わずかに目を細めた。
私は一歩、踏み出す。
――この一撃で、終わらせる為に。




