第六十八話 灰色の荒野
意識が戻り、ゆっくりと目を開ける。視界に映ったのは、荒れ果てた灰色の荒野だった。
「……は?」
人の姿はどこにもなく、静寂だけが広がっていた。
「また……再生したのか。……二人は何処に!」
私は慌てて立ち上がり、周囲を見渡した。しかし、ネブラもモラも、何処にもいない。――死んでしまったのか?
「そんな……」
息が荒くなる。胸が締めつけられ、視界がにじんだ。
「私ばっかり……どうして、みんな……」
私は膝をつき、涙を流した。
「やらないと……私が、破壊神を殺さないと」
私は乱暴に涙を拭い、立ち上がった。
幸い、意識を失ってから時間はあまり経っていないようだ。周囲に横たわる死体は、まだ腐敗していなかった。――一体、何人死んだというのだ?
しばらく荒野を歩いていると、左腕と左脚を失ったペルデレが一人、静かに佇んでいた。
「……っ」
ペルデレはこちらに気づくと、低く言った。
「存命だったのか。死に損ないの眷属よ」
「お前……」
「人間というものは羸弱だな。現在、此の国の総ての人間が滅んだ」
「えっ……?」
私は思わず声を漏らした。
「お前は魔力がもう殆ど無かったはずだろ。何をしたんだ?」
「闘いを制するために有り丈の魔力を放出しただけにすぎない。……此のような狡猾な真似はしたくなかったがな」
ペルデレは淡々と答えた。
「良いのか?今のお前なら、簡単に殺せる」
「何処がだ?」
ペルデレがそう言った瞬間、私の足から力が抜けた。
その場に崩れ落ちる。――魔力切れだ。肉体再生に残り少ない魔力を全て使い切ってしまった。
魔力はもう全て私のものとして定着してしまった。次に攻撃をくらった時、再生する事はない。
ペルデレは無言でこちらを見下ろした後、ゆっくりと歩き出した。
「神域は消滅した。異邦へと向かうとしよう」
「クソッ……」
私はただ、その背中を見送ることしかできなかった。




