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Frange ruinam   作者: S
破壊編
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第六十六話 水晶に映ずる

「私に出来る事は無いかな?」


決戦前、御稜威山の頂上で、私はスパティアに相談をしていた。


「何故我に言うんだ……」


スパティアは呆れたようにため息をついた。


「だって二人に言うと絶対止められそうだし。スパティアなら、私が望む答えを言ってくれそうだから」


「君は我を高く見積もりすぎだよ」


スパティアは苦笑しながら言った。


「それで、何かある?」


「……そうだね。君と一緒にいた人間の少女がいるだろう?」


「モラのこと?」


私がそう返すと、スパティアは小さく頷いた。


「あの少女が耳に付けていた装飾品は、どんな代物なんだ?」


「製造神から譲り受けた物で、受けた災いを幸福に転換できる効果があるらしい」


「……製造神か」 


「知ってるの?」


「大昔に存在した神だ。……その神は珍しい魔具を作っていた」


「珍しい魔具?」


「契約者や眷族などの為に作られた魔具だった。効果は、悪い面を打ち消し、良い面だけを残すというものだ」


スパティアは淡々と答えた。


「もしかして、それがあのイヤリングってこと?」


「それは分からないが……効果は似ているかもしれないな」


「……なるほど」


もし本当なら、あのイヤリングは私の眷族としての服従効果も無力化できるかもしれない。


「ただし、確証は持てない。頭の片隅にでも置いておけ」


「……分かった」


私はそう言うと、ゆっくりと城へと戻った。



「後に殺す奴に教えると思うか?」


正直、服従効果を打ち消すことが出来るかどうかは完全な賭けだった。だが、上手くいったようだ。


耳につけた水晶のイヤリングが淡く光を放った直後、イヤリングがひび割れ、粉々に砕け散った。


ペルデレがわずかに目を細めた。


私はゆっくりと息を吐き、右手を軽く掲げた。その瞬間、上空に無数の光の矢が形成された。私は腕を振ると、光の矢が雨のようにペルデレへと降り注いだ。


ペルデレは矢の間を縫うように動き、直撃を避ける。

だが、光の矢は消えることなく軌道を変え、ペルデレを追い続けた。――この矢は追尾型だ。一つの矢がペルデレの肩を掠めた瞬間、その部位が大きく破裂した。


「……此れは俺の力か」


ペルデレが僅かに顔を歪めた。


私は構わず光を再び凝縮させ、光の槍を形成し、振り抜いた。槍はペルデレの肩を捉えかけたが、ペルデレがわずかに体をずらしただけで回避される。ペルデレは槍を掴み、容易く粉々に砕いた。


いくら満身創痍であっても、攻撃をほとんど受けないのでは意味がない。消耗戦では、明らかにこちらが不利だった。 


どれだけ攻撃を続けても、ペルデレの体に満足な傷はつかない。時折、右半身に掠る程度。それすらも、すぐにゆっくりと塞がっていった。


私は額に汗を浮かべ、膝が震え始めていた。魔力が増えたとはいえ、元々が少ない。こんなところで魔力切れになったら――。


それでも、倒れたモラとネブラの姿が視界の端に映るたび、私は足を止めることができなかった。私はもう一度、光を最大限に集め、これまでで最も巨大な光の矢を形成した。全身の力を込め、一直線にペルデレの胸を狙って放つ。


しかし――ペルデレは右手を軽く掲げ、掌でそれを真正面から受け止めた。光の矢は彼の掌の前で爆ぜ、跡形もなく散った。


……どうしたら、こいつを殺せるんだ?


ペルデレはゆっくりと右腕を下ろし、無言でこちらを見つめている。


私は拳を強く握りしめ、血が滲むほど唇を噛んだ。


「……殺す」


その言葉は、静まり返った空に響いた。


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