表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Frange ruinam   作者: S
破壊編
60/84

第六十話 幻霧

御稜威山の頂で、スパティアは血だらけで倒れていた。顔面が抉れ、肉体再生が追いついていない。


「……スパティア!」


私は慌てて駆け寄った。このままではまずい――その時、祠の奥からパナケイアが静かに姿を現した。


「……手間をかけさせるな」


パナケイアが一言呟いた瞬間、スパティアの抉れた顔面がみるみる再生し、元通りになった。


「……済まない。油断していた」


スパティアは苦々しげに顔を押さえながら体を起こした。


パナケイアは淡々とした声で続けた。


「回復を迅速に進めよう。天啓に費やすべき時間を、無駄にする訳にはいかない」


そう言いながら、再びスパティアの肉体再生を加速させた。


「……二人とも、大丈夫かな」


私は遠くの空――駝荊毀壊城跡の方角を見つめ、そっと呟いた。



「……どうする? スパティアも助っ人も来ないよ」


モラは不安げにネブラを見上げた。


「時間を稼ぐしかないだろう」


ネブラは低く答え、ハルバードを顕現させた。


「シムラクルム」


その瞬間、周囲に濃密な霧が爆発的に立ち込めた。視界が真っ白に染まり、互いの姿すらほとんど見えなくなるほどの濃霧だ。


「……何?」


モラは息を呑んだ。


ネブラは霧の中で静かにハルバードを構え、ペルデレの気配に向かって一閃した。


「……遅いな」


ペルデレの嘲るような声が響いた直後、ハルバードの一撃は空を切り裂いた。代わりにペルデレの拳がネブラの胴体を抉っていたはずだった――しかし、その拳はネブラの体をすり抜け、ただ霧を散らしただけだった。


「……!」


本物のネブラが、ペルデレの背後から一気に間合いを詰める。幻影を囮にした高速接近。ハルバードの刃が弧を描き、ペルデレの右肩を深く斬り裂いた。

鮮血が飛び散る。


霧の中で複数のネブラの幻影が同時に動き出す。すべてが本物のように攻撃を仕掛ける。その瞬間、ペルデレがゆっくりと目を閉じた。


ペルデレは、ただ気配と魔力の流れだけで幻影を見分け、目を閉じたまま軽やかに体を翻し、すべての攻撃を紙一重でかわしていく。そして、ペルデレは本物のネブラの位置を正確に捉え――拳を突き出した。


その瞬間、半透明の羽を背中に生やした緑髪の少女が、ペルデレの目の前に忽然と現れた。


「待たせたね。ここからは僕、シルフ様の出番だよ」


少女はにこりと笑いながら、両手を広げた。ペルデレの拳は、少女の掌の寸前でぴたりと止まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ