第五十七話 決戦
10日間、私達はただひたすらに鍛錬を積んだ。
そして――決戦の日が訪れた。
「行くぞ」
ネブラの声は低く、静かだった。
モラは地面を見つめたまま、動かなかった。そして、肩が小さく震えていた。
「どうした?」
「スパティアですら敵わなかった相手に……私達は勝てるのかな。もし、負けたら……」
声が掠れる。
「モラ」
ネブラが静かに呼びかけた。
モラは一度深く息を吸い、顔を上げた。
「……ごめん。行こう」
二人は黙って歩き出した。しばらく進んだところで、ネブラが足を止めた。
「言っておくが、我は負けるつもりはないぞ」
「……ネブラ。うん、私も同じこと思ってたよ!」
「……」
ネブラは小さく息をつき、わずかに呆れたように目を細めた。やがて、風の止んだ跡地――駝荊毀壊城跡に辿り着いた。
「ここだよね……」
「ああ」
二人が石畳の中央に足を踏み入れた瞬間、祠の前からゆっくりと姿を現した。茶色の髪をした男――破壊神ペルデレだった。
「……待ってやったというのに、随分と僅少な面々ではないか」
嘲るような笑みを浮かべた。
モラは一歩前に出て、はっきりと言った。
「こっちには、とっても頼りになる人がいるんだよ」
その言葉に、ペルデレの目が細まる。
「いいだろう。さあ――いざ、闘おうではないか」
御稜威山の頂、祠の前で、私はスパティアと共に、静かに佇んでいた。
「……前に話したことは、覚えてる?」
スパティアは上半身だけの姿で宙に浮かびながら話していた。
「魂の集合体を先に送り込む。それから空間を開いて、ここから攻撃を加える――でしょ?」
「あぁ。その間に助っ人が来るのが理想。そして我がそこで参戦する」
「……それで、本当にできるの?空間を利用した封印術が」
私はスパティアにそう問いかけた。
「本来なら不可能。だけど……魔力だけならば、可能だ。半分でも奪えれば上々かな」
「……その状態で、本当に戦えるの?」
「問題ない」
スパティアは右手を掲げ、空間を裂いた。裂け目の向こうに、駝荊毀壊城跡の光景が浮かび上がる。
「ネブラ達が着いた。始まるよ」
私は拳を固く握りしめた。遠くで、私達の運命を賭けた戦いが、今、幕を開けようとしていた。




